#30 佐藤琢磨(INDYCAR 第14戦)《photo: Getty Images》

インディカー・シリーズ第14戦の決勝レースが現地18日、ポコノ・レースウェイにて実施された。1周目に多重クラッシュが発生し、佐藤琢磨らがその渦中にあったが、大きな負傷をした選手はいなかった模様。レースはウィル・パワーが制している。

全17戦の戦いも残すは4戦のインディカー、ここから第16戦までは3週連続開催だ。第14戦の開催地は米ペンシルベニア州のオーバルコース「ポコノ」。特徴的な三角オーバルで、タイトル争いの正念場ともなる3連戦が幕を開ける。

予選は雨のために実施できず、この場合の規定によって決勝スターティンググリッドは実質ほぼドライバーズポイントランキング順(厳密にはエントラントポイントというものの順番)で決められた。ポール発進はシリーズリーダーのジョセフ・ニューガーデン(#2 Team Penske/シボレー)、シリーズ7位の佐藤琢磨(#30 Rahal Letterman Lanigan Racing/ホンダ)は7番手からのスタートに。

レースはいきなりの多重クラッシュで始まった。1周目のターン2近傍で琢磨とアレクサンダー・ロッシ(#27 Andretti Autosport/ホンダ)、ライアン・ハンターレイ(#28 Andretti Autosport/ホンダ)が絡む格好となり、さらにはフェリックス・ローゼンクヴィスト(#10 Chip Ganassi Racing/ホンダ)やジェームズ・ヒンチクリフ(#5 Arrow Schmidt Peterson Motorsports/ホンダ)もこれに巻き込まれて、大きな多重クラッシュに…。

スペシャルカラー版だった琢磨のマシンは大破、裏返しになって止まりヒヤリとさせたが、救出班のクルーに助けられながら脱出したようで、自力歩行するとこれを見た現地の人々からは安堵の拍手が贈られていた(映像上の確認)。大きくマシンが飛んだローゼンクヴィストの状況も心配されるところだったが、どうやらこの多重クラッシュで大きな負傷をした選手はいなかった模様、不幸中の幸いだった。

レースは赤旗中断となったのちに再開。しかし200周レースの半ば過ぎに雨雲の接近によってイエローフラッグ提示から再度の赤旗中断に。やがて荒天となり、そのまま128周でのレース終了となった。

波乱続きの一戦を制したのはウィル・パワー(#12 Team Penske/シボレー)で、今季初勝利。パワーは最初の赤旗中断からレースが再開される際のコーションラップ(隊列走行)中に、デブリを踏んでタイヤに異常が起きていたためか緊急ピットインしてポジションを大きく下げたものの、そこから上位の争いに復帰し、最終的には勝利をおさめた。これで13年続けて年間1勝以上を記録することにも成功している。

2位はスコット・ディクソン(#9 Chip Ganassi Racing/ホンダ)、3位にはシモン・パジェノー(#22 Team Penske/シボレー)と、タイトル争いに現実的な可能性を残す4人のうちの2人が表彰台圏内でレースを終えた。シリーズ首位のニューガーデンは今回5位。シリーズランキング2番手のロッシは1周目の多重クラッシュのあと、マシンを修復して大きく遅れながらもレースに復帰して最終結果18位。

シリーズタイトル争い上位4強の得点は、ニューガーデン535点、ロッシ500点、パジェノー495点、ディクソン483点という状況に変化した(序列は前戦終了時と変わらず)。今回優勝のパワーは407点でポイントランク5位、琢磨は今回21位扱いでランクをひとつ下げて8位(331点)。

佐藤琢磨のコメント(レース直後、ホンダ発表)
「まず心配なのはフェリックス(ローゼンクヴィスト)のことです。彼になんのケガもないことを祈ります。チャンピオン争いをしている人たち(具体的には特にロッシ)にとって、非常に残念なことが起きたと考えています」

「ライアン・ハンターレイとターン1出口でポジションを争う状況となりました。アレクサンダー・ロッシは(2番手の位置からの)スタート加速が思うようにいかなかったようで、ライアンが左、自分が右から彼をパスしに行きました。抜ききったと思ったのですが、彼のマシンより完全に前に出てはいませんでした。みんなが接近して走っている状況下で、高速で走るマシンを路面の継ぎ目が不安定にさせてもいました。残念なことに、それらが要因となって我々は(ターン2近傍で)接触してしまったようです」

「次の週末はゲートウェイのショートオーバルでのレースです。気持ちを切りかえて、いいレースを戦いたいと思います。昨年は思うような戦いができなかったゲートウェイですが、今年もアイオワで自分たちはいい走りができており、同じショートオーバルであるゲートウェイで今年はいい走りができるよう頑張りたいです」

第15戦は現地24日決勝の日程、「ワールドワイド・テクノロジー・レースウェイ・アット・ゲートウェイ」での開催だ。

なお、第13〜14戦のインターバルにはF1の名門マクラーレンが来季のインディカー・シリーズに既存陣営のアロウ・シュミット・ピーターソン・モータースポーツと提携して、シボレーエンジン搭載車2台でフル参戦することが発表されている。ドライバーは未発表。マクラーレンは今年のインディ500にフェルナンド・アロンソとともに挑戦していた(予選落ち)。

そろそろ来季に向けてのストーブリーグも各方面で活発化する時期となってきている。ちなみにマクラーレンは、来季のF1に関してはカルロス・サインツJr.とランド・ノリスの現コンビの継続起用を発表済みだ。

#30 佐藤琢磨(写真は予選日のプラクティス走行)《写真提供 INDYCAR》 #30 佐藤琢磨(写真は予選日のプラクティス走行)《写真提供 INDYCAR》 左から2位ディクソン、優勝パワー、3位パジェノー。《写真提供 INDYCAR》 優勝を飾った#12 パワー。《写真提供 INDYCAR》 決勝2位の#9 ディクソン。《写真提供 INDYCAR》 決勝3位の#22 パジェノー。《写真提供 INDYCAR》 ポイントリーダーの#2 ニューガーデン(写真先頭)は決勝5位に。《写真提供 INDYCAR》 #30 佐藤琢磨にとっては残念な一戦になってしまった。《写真提供 INDYCAR》 INDYCAR 第14戦《photo: Getty Images》 INDYCAR 第14戦《photo: Getty Images》 INDYCAR 第14戦《photo: Getty Images》 向かった左、#30 佐藤琢磨(INDYCAR 第14戦)《photo: Getty Images》 車からでできた佐藤琢磨《photo: Getty Images》 佐藤琢磨のマシン《photo: Getty Images》