シニアTTでは初優勝のハリソン選手(マン島TTレース2019)《撮影 小林ゆき》

1907年から続く伝統のマン島TTレース最終日は現地6月6日金曜日に日程通り開催され、シニアTTでディーン・ハリソン選手(カワサキ)がこのクラスでは初優勝を飾った。カワサキのマシンがシニアTTで優勝したのは1975年のミック・グラント選手以来、44年ぶりである。

シニアTTは、かつては世界グランプリの最高峰レーサークラスとして、また1975年にTTレースが世界グランプリシリーズから外れたのち、最終日にサイドカー以外のクラスの上位選手による異クラス混合のレースとして開催されていた。

近年は事実上のスーパーバイクレース2として開催されているが、2週間のウィークを戦った選手たちの体力や精神力、またマシンの耐久性などを含めてこの最終レースを制するのは容易ではなく、現在もシニアTTで優勝することこそTTの王者であるという意味がある。

スーパーバイクTTの予選で好調だったのはピーター・ヒックマン選手。今大会ではスーパーバイク、スーパースポーツ2、スーパーストックの3クラスを制している。

昨年のスーパーバイク優勝のマイケル・ダンロップ選手(BMW)、常に上位に食い込む健闘を見せている地元マン島在住のコナー・カミンス選手(ホンダ)などが注目された。

シニアTTの決勝スタート時刻は、午後から天候が崩れるという予報のため、予定より早い10時スタートに設定された。このように、TTレースは天候によってしばしばスケジュール変更されることがある。開始が遅れて待ち時間が長くなるのも難しいが、前倒しになる可能性もあり、マシンの準備をするメカニック、体調や精神面を整えなければいけない選手ともに難しいレースである。

スタートは上位20位まではゼッケンナンバー順(前年度の実績に応じた固定ゼッケン制)。それ以降は予選リザルト順に出走となる。

TTレースはタイムトライアルレースのため、1台ずつ10秒ごとに出走する。現在ではすべての車両にラップタイミングが取り付けられ、リアルタイムでセクター間のタイムや順位をインターネットやアプリの情報で観客も確認できるようになっている。

また地元マンクスレディオが、グランドスタンド(スタート/ゴール地点)と1周60キロメートルに及ぶコース各所に実況中継アナウンサーを配置。ラジオで生放送をしているため、タイムトライアルとはいえ、レースの行方を生で聴くことができる。

1周目にトップに立ったのはヒックマン選手。2番手のハリソン選手も僅差で追うが、ヒックマン選手は安定して5周目までトップを守っていた。

レースに変動があったのは最終ラップ。ヒックマン選手のセクタータイムが落ち、何らかのエンジントラブルを示唆していた。そのままハリソン選手がトップに立ち、優勝した。

ハリソン選手はベテラン・サイドカードライバーのコンラッド・ハリソン選手の息子。父はサイドカーレース1で6位入賞を果たしている。

【シニアTT決勝リザルト】
順位/選手名/マシン/平均時速/ファステストラップ

1位:ディーン・ハリソン カワサキ 130.824マイル(209.32km)16分53秒704
2位:ピーター・ヒックマン BMW 129.719マイル(207.55km) 16分51秒495
3位:コナー・カミンス ホンダ 129.599マイル(207.36km) 17分04秒266

出走:40台、完走34台
シルバーレプリカ(入賞):上位11位まで
ブロンズレプリカ(入賞):12位〜28位まで

ウィナーズエンクロージャーでファンの声援に応えるハリソン選手(マン島TTレース2019)《撮影 小林ゆき》 最終ラップにマシントラブルを抱えるも2位に食い込んだヒックマン選手(マン島TTレース2019)《撮影 小林ゆき》 地元マン島でカフェを営むカミンス選手は3位に(マン島TTレース2019)《撮影 小林ゆき》 5位に入ったヒリアー選手。ブラダンチャーチのラウンドアバウトを通過中(マン島TTレース2019)《撮影 小林ゆき》 子どもにキスをするカミンス選手は身長2メートル(マン島TTレース2019)《撮影 小林ゆき》 シニアTTの勝者だけが掲げることのできるツーリスト・トロフィーは、1907年から同じものを使っている(マン島TTレース2019)《撮影 小林ゆき》