市場メシを食べていざ出陣!! 品川駅前港南口《撮影 中込健太郎》

市場メシ。食のプロが利用する市場にある食堂で食べる食事に、特有の憧れと魅力を感じる人も多いのではないだろうか。

新幹線駅も開業し、今や東京駅に勝るとも劣らない重要な交通連接点となった品川駅。仕事やレジャーでここから日本中に出かける機会も珍しいことではない。その港南口を出た目と鼻の先に、首都圏の食生活を支える東京都中央卸売市場食肉市場がある。ここの食堂「一休食堂」は、市場関係者だけでなく、実は一般の利用もできるのだ。筆者も品川駅を利用する機会があり、ここで腹ごしらえをすることにした。

門を入って守衛さんに「一休食堂は?」と聞くと、「この横にあるよ」と教えてくれた。案内されたとおりに進むと「一休食堂」という看板があった。午後1時ころだったが、市場関係者はもとより、周辺のオフィスで働いているビジネスマンらしき人たちで、店内はかなりにぎわっていた。

壁一面のメニュー。周囲を見渡すと、大盛のおかずのお皿と格闘する人などもいる。筆者は煮込み定食を頼む。ごはんと煮込み汁、牛皿、といってもいわゆる牛丼の頭のようなものとは少し違う、こんにゃくとごろっとした牛肉が甘く煮られた小鉢。さらに卵か海苔を選んでつけてもらえるという内容だ。筆者は卵をつけてもらうことに。

トレイで運ばれてきたものを見ると拍子抜けした、というのが正直な感想だ。味噌汁をつけるような、それほど大きくない汁椀に入った煮込み汁がメイン。牛皿と卵がついているとはいえ、周囲の人が食べている野菜炒めなどに比べると大きさ的にはかなり小ぶりだ。しかし……。食べる前に後悔するのは早計だ。

煮込み汁を口に運ぶと、とにかく肉のうまみが最大限に引き出されていて、食べごたえ十分。はじめ「え、これだけ?」と思った程度の煮込み定食なのに、満足感は、もっと盛りのいい食事をした時にも劣らない。

そして量の妙だけでなく、しっかりと炊き込まれた感じがする。作られる過程での火力までもイメージさせるような、野趣とでもいいたくなる力強さがあるのだ。まさに「これを食べてまた仕事がんばれ!」、そう背中を強くたたいて送り出してくれるようなス、ケールの大きさを感じさせる煮込み汁だ。

改めて見回すと、煮込み定食や、煮込み汁をつけて注文する人は多い。ほかのメニューも食べてみたいが、ここに来た際はやはり煮込み汁を食べてほしい、と勧めたくなる一品だった。

何よりも「食肉市場でランチを食べているのだ!」という実感を強く噛みしめることのできるのが、一休食堂の最大の魅力なのではないだろうか。腹が減っては戦はできぬ、と言われるが、ビジネスに、旅行にと、品川を出発する前に、食肉市場で腹ごしらえ。そんな旅程はいかが?

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