(イメージ)《写真提供 帝国データバンク》

コロナ禍の「自転車ブーム」が追い風となり、2020年度の自転車販売市場は2100億円を超え、過去最高を更新した。帝国データバンクが8月27日、市場調査を発表した。今後の市場は、電動アシスト自転車など高額商品が好調だが、品薄や調達価格高騰が課題となる。

◆2020年度の自転車販売市場は2100億円超となり、過去最高

自転車の販売が好調だ。帝国データバンクの調査では、通期予想を含めた2020年度の自転車販売市場(事業者売上高ベース)は2100億円を超え、過去最高を更新した。

2020年度の自転車販売は、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言を受け、最繁忙期となる学校の卒入学シーズンの来店客が減少、年度はじめから売り上げ大幅減の店舗が多かった。

しかしコロナ禍が拡大・長期化する中で、感染リスクの低いパーソナルな移動手段として自転車が見直され、電動アシスト自転車を中心に通勤・通学用としてサイクル人気が高まった。その後も長期にわたる外出自粛から気軽なレクリエーションとしても注目されたことで、大人用から子供向けまで幅広いセグメントで新車販売が伸びた。数年間乗っていなかった自転車のメンテナンス需要も活況となった。ウーバーイーツのような配送サービスの自転車需要もあった。

◆高価な電動アシスト自転車、5年前から販売5割増

自転車は高価格が進んでいる。経済産業省の調査によると、2020年の完成自転車の出荷数量は前年と同水準の約162万6000台。いっぽう出荷金額ベースでは前年からおよそ40億円増加、1台当たり単価は5年前の3万4000円台に比べて1万円以上高い4万7000円台となっている。

こうしたトレンドの背景には、従来の一般的なシティサイクルと比べ、利便性や趣味性がより高い自転車のニーズが拡大している点が挙げられる。近年の自転車販売の主軸となっているのがスポーツタイプの自転車と電動アシスト自転車で、いずれも一般車に比べて販売台数ではまだ差が開くものの、近年は販売台数が大幅に増加している。特に電動アシスト自転車は5年前から販売台数が5割伸びた。

電動アシスト自転車はこれまで、量販モデルでも10万円を超える商品が多く、積極的な購買には結びついてこなかった。しかし、都市部を中心に自家用車の代わりとして購入されるなど需要が変化しているほか、車種も通勤・通学用や子供同乗用など多岐に広がった。購買層は、従来メインだった高齢者層から、子育て世代や若者に広がっている。

とりわけ2020年は、10万円の特別定額給付金効果も重なって、コロナ禍で利便性の高い移動手段として電動アシスト自転車が再注目された。20年中に大きく販売が伸びたスポーツサイクルも、営業休止したスポーツジムの代替といった健康増進需要に加え、趣味性の強い高級価格帯のロードバイクやマウンテンバイクが人気だった。

◆市場は引き続き好調、品薄や輸入価格の高騰などが不安

帝国データバンクによると2021年度の自転車販売市場は、20年度を上回る2200億円台も想定される。コロナ禍による外出制限や在宅勤務の普及・拡大による運動不足の解消といったニーズは今後も強く残るとみられ、子供用から大人向けまで、修理需要も含めて販売店には追い風が吹く。また、アウトドアブームの拡大でクロスバイクなどの需要増も見込めるほか、日本市場でも存在感が出始めた、販売単価が50万円を超える電動スポーツサイクル(e-bike)の普及も、販売店の経営を下支えしていくとみられる。

いっぽうで、世界的なサイクル需給のひっ迫により有名ブランドでは入荷の遅れが発生している。多くがアジアで生産される部品についても、現地のコロナ感染の拡大で供給が追い付かない状況が目立ちはじめている。特に完成車は生産量が安定せず、輸入品を中心に2万〜3万円台の量販価格帯でも価格が高騰傾向となっており、低価格を武器にしてきた自転車店では利益確保がしにくい。「町の自転車店」をはじめ中小店舗でも、大手小売業者の進出に加えホームセンターなど異業種との競争が激化しているケースもあり、市場が好調ないっぽうで経営の厳しい事業者も増えている。

2020年度の自転車販売市場は2100億円超となり、過去最高《資料提供 帝国データバンク》 1台あたりの価格は上昇。電動自転車の販売台数は5年前から50割増《資料提供 帝国データバンク》