スバル インプレッサ ST《写真撮影 中村孝仁》

やっぱり純ICE(内燃機関)もいいよな…ということでスペシャルな試乗会にスバルが持ち込んだ『インプレッサ』は何と「ST」という“素”のグレードのモデルだった。

◆販売比率は45%!実は売れている“素”のインプレッサ
まずSTと呼ばれる一番ベーシックなグレードのインプレッサは、ベース車両本体価格が229万9000円。ほとんど高級軽自動車に肩を並べる価格である。勿論エンジンは冒頭に述べた通り純ICEの2リットル、フラット4(水平対向4気筒)エンジンが搭載され、しかもアイサイトを含むADAS機能は上級モデルと同じで手を抜いておらずにこの価格である。

試乗車に追加されているのは11.6インチのセンターディスプレイや本革ステアリング、シフトノブなどを含んだパッケージオプションとステアリング及びシートヒーターなど合計で45万6500円。つまり総額275万5500円でこのクルマが買える。

FWDではあるが、2リットルエンジン搭載車がこの値段で買えるとなると、正直コスパはめちゃくちゃ高い。しかもADASに手を抜いていないばかりでなく、その走りが抜群とくれば、これは食指が動いても当然なわけである。

さすがにそんな本質をユーザーも見抜いているのか、販売開始からまだ3か月の時点で、インプレッサ総販売台数の何と45%がこのベースグレードのSTなのだそうである。一般的にイニシャルでは最高級グレードから売れていくというのが常道なのだが、さすがにユーザーもこのコスパの良さをしっかりとわかっているようである。

確かにダッシュボードを叩いてみればハードプラスチックが使用されて、そうした部分はベースグレードであることが鮮明になるが、本当にその部分のみを気にしなければオプションを装備してしまうと上級グレードとその差はなくなる。

◆純ICEのクルマを買うなら「今でしょ!」
もしかするとこの先、試乗が叶わなくなるかもしれないベースグレード車両を走らせてみたのは、何と新潟県佐渡島。主として島の南側を走ってみたが、周囲およそ280kmもあり、日本では沖縄本島に次ぐ2番目に大きな島なのだそうである。道路はよく整備されていて走りやすい。

そんなわけだから軽快に流せるのだが、STというベースグレードと言えども、デュアルピニオンのラック&ピニオンステアリングやインナーフレーム構造など、『レヴォーグ』で確立した強固な骨格と上質なステアフィールは健在で、205/50R17のブリジストン・トゥランザとの組み合わせは非常にスムーズで快適な走りをもたらしてくれる。デュアルピニオンという凝った作りのパワーステアリングはアシストそのものは普通と同じなのだが、ステアリングを回した時のスムーズさと正確さは間違いなく上質である。

一切の電気的アシストを持たない純ICEは今となっては稀少種ともいえるモデルだが、そのスムーズネスもトルクの出方も申し分なしで、まあ信号の少ない島の周遊ということもあり、燃費に関しては甘めに出てしまうけれど、それでもレギュラーガソリンを使える点はありがたいし、正直この先いわゆる電動車一辺倒になりそうなことを考えると、純ICEのクルマを買うなら「今でしょ!」と言いたくなるものでもある。

まあ、この燃費が恐らくは都市部で乗った場合辛い採点になる最大のポイントのような気がするが、正直言ってこれと言ったネガ要素の見当たらない稀有なモデルである。

◆シフトノブにアナログメーター…レトロな味も捨てがたい
デザインに関しては好き嫌いがあるだろうが、個人的にはボンネットにエアスクープのないシンプルなものの方が好みなので、インプレッサのデザインは好感が持てる。それに今どき珍しい直線状にPRNDというシフトパターンを配し、比較的ストロークの長いレバー操作を用いるシフトノブや、アナログ表示のメーターディスプレイなど、レトロと言ってしまうとそれまでだろうが、この味は捨て難い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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