N-BOX vs タント《写真撮影 宮崎壮人》

2022年度の販売台数が20万台超と圧倒的な強さを誇るホンダ『N-BOX』。その強さの秘密を探るためにライバルモデルとの比較を行った。第二弾はダイハツ『タント』との比較をお届けする。

◆比較する車種のプロフィール、車格
ボディサイズは軽自動車規格に収まるものなので、両車ともに全長は3995mm、全幅は1475mmとなる。全高はN-BOXのFFが1790mm、4WDが1815mm、タントのFFが1755mm、4WDが1775mmとなる。つまり、FFで比べるタントはN-BOXに比べて35mm車高が低く、4WDの場合は40mm低いということになる。N-BOXの最低地上高は駆動方式に関係なく145mm、タントはFFが150mm、4WDが165mm。N-BOXの場合は145mmの地上高を確保するために4WDでは全高を25mmアップ。ホイールベースはN-BOXが2520mm、タントが2460mmで、N-BOXのほうがオーバーハング成分が少ないことがわかる。

続いて室内寸法を見ていく。室内長はN-BOXが2240mm(スロープ仕様をのぞく)、タントが2125mm。室内幅はN-BOXが1350mm、タントが1350mm。室内高はN-BOXが1400mm、タントは1370mm。室内長は圧倒的にN-BOXが長く、室内高も全高が高いN-BOXが稼げている。

◆パワーユニット比較
パワーユニットはどちらも3気筒。詳細な排気量はN-BOX、タントともに658cc。N-BOX用のS07B型のボア×ストロークは60.0×77.6mm、タント用KF型は63.0×70.0mmで、N-BOX用S07Bエンジンのほうがロングストロークディメンションだ。どちらにも自然吸気仕様、ターボ仕様があり、それぞれスペックは下記を参考にしてもらいたい。

N-BOX用S07B型自然吸気最高出力:58ps/7300rpm最大トルク:65Nm/4800rpm
N-BOX用S07B型ターボ最高出力:64ps/6000rpm最大トルク:104Nm/2600rpm
タント用KF型自然吸気最高出力:52ps/6900rpm最大トルク:60Nm/3600rpm
タント用KFターボ最高出力:64ps/6400rpm最大トルク:100Nm/3600rpm

◆足回り比較
N-BOXのほうが自然吸気、ターボともにトルク値を大きい。また自然吸気の出力もN-BOXが高く、回転数も上まで使えていることがわかる。駆動方式はどちらもFFとビスカスカップリングを用いた4WD方式を採用。ミッションはいずれもCVTで、N-BOXターボのみマニュアルモード付きとなる。N-BOXのサスペンションはフロントがストラットでFFリヤがトーションビーム、4WDはドディオン。タントはフロントがストラット、FFリヤがトーションビームで、4WDは3リンクとなる。

WLTC燃費は以下のとおり
N-BOX自然吸気:21.2km/L
N-BOXターボ:20.2km/L
タント自然吸気:21.9km/L
タントターボ:21.9km/L

◆グレード比較
N-BOXはホンダNシリーズの基本型で、ここからN-WGN、N-ONE、N-VANが展開されるモデルでもある。N-BOXはグレードバリエーションも豊富で、基本的な部分で分類しても、基本となるベンチシート仕様、助手席が大きくスライドするスーパースライドシート仕様、そして介護に使うこともできるリヤにスロープを備えたスロープ仕様の3タイプがある。スロープ仕様も型式認定を受けているので、持ち込み届出の必要はなく通常の手続きでナンバーが取得できる。標準タイプのN-BOX、スポーティな内外装や充実した装備が施されたN-BOXカスタムの2つの基本ラインがある。N-BOXのベンチシート仕様とスロープ仕様は上級のLとベーシックのGの2グレードで、Gは自然吸気のみ、Lは自然吸気とターボ。スーパースライドシートはEXのモノグレードで自然吸気とターボを設定。N-BOXカスタムのベンチシート仕様はLのみのモノグレードで自然吸気とターボを設定。スーパースライドシートはEXのモノグレードで自然吸気とターボを設定。スロープ仕様はLのみのモノグレードで自然吸気のみとなる。

N-BOXはユーティリティ性を最重視するスーパーハイトワゴンという部類に属する軽1ボックスである。そのためラゲッジルームについては、かなり重要視した設計が行われている。N-BOXはホンダが得意とするセンタータンクレイアウトというパッケージングを採用。燃料タンクはフロントシート下に配置となる。スロープ仕様をのぞくFFモデル後席使用時のラゲッジ長は44〜63cm、後席折りたたみ時の最大ラゲッジ長は153.5cm、開口部の地上高は47cm、開口部の高さは120.5cmで一般的な26インチの自転車を楽に搭載することができる。またセンタータンクレイアウトならではの機構として、リヤシートのクッションをチップアップし、リヤシート部に植木などの背の高い荷物を置くことが可能となっている。

タントはムーヴよりも背の高いスーパーハイトワゴンとして2003年に初代モデルが登場。現行モデルは2019年に登場。DNGAと呼ばれる最新のプラットフォームを採用する最初のモデルとなり、今後はタントがベースで各車が派生するという形を取ることになる。標準タイプのタントとスポーティなタントカスタムの2系統が存在。標準タイプのタントはターボエンジンのXターボ、自然吸気エンジンのXとLの計3機種。タントカスタムはターボモデルのカスタムRSとカスタムXVの2機種。それぞれにFFと4WDがあるので計10タイプが用意される。また、タントの名を持つモデルとしてはアウトドア系をねらったタントファンクロスが存在するが、ここでは省略する。

タントという車名はイタリア語の「たくさんの」や「多くの」という意味で、ユーティリティスペースの大きさを大切にしたモデルであることがうかがえる。リヤハッチを開放時のラゲッジフロア高は580mm、開口部でのラゲッジ高は1061mm、同ラゲッジ幅は1007mmとなっている。そしてタント最大の特徴となっているのがミラクルオープンドアといわれる左サイドドアの存在。タントの左側センターピラーはスライドドア内にビルトインされるため、左スライドドアと左フロントドアを開放すると、開放幅は1490mmにも達する。リヤシートは左右独立して前後に240mmのスライドが可能。スライドロックの解除レバーはリヤハッチ側からも操作が可能となっている。リヤシートのシートバックを前倒しすることもだが、クッションのチップアップは行えない。フロントシートは助手席が380mm、運転席が540mmのスライドが可能。運転席を一番後ろまで下げることで、左のミラクルオープンドアから運転席へのアクセスが楽に可能。また、後席左にチャイルドシートを装着した際などに、シートに座ったままでチャイルドシートに座った幼児の世話が可能となる。タントにもスロープ仕様、助手席回転&昇降シート、助手席回転シート(車いす収納装置付き)の福祉車両が用意されるが、N-BOXとは異なり持ち込み届出となる。

◆走行性能比較
走りのポテンシャルに関してはどちらも遜色がないが、N-BOXのほうがスッキリとしていてスポーティな印象を持っている。ターボモデルであれば、どちらも十分にトルクフルだが、N-BOXは自然吸気エンジンでも軽快な吹け上がりを生かしてスポーティに走れてしまう印象。N-BOXはACCやレーンキープアシストが標準で装備されるが、タントはオプションでLグレードにはオプション設定もない。いわゆる自動ブレーキなどの安全機構についてはN-BOX、タントともに全グレードで標準装備である。

◆価格比較
価格はN-BOXのFFが146万8500〜215万4900円。4WDは160万1600〜228万8000円で、4WDはFFに比べて13万3100円高い設定。タントはFFが138万6000〜187万円、4WDが151万2500〜199万1000円で、12万1000円(Lは12万6500円)高い設定。

N-BOX(上)とタント(下)のインパネ周り《写真撮影 宮崎壮人》 N-BOX(左)とタント(右)の後部座席《写真撮影 宮崎壮人》 N-BOX エクステリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX エクステリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX エクステリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX エクステリア《写真撮影 中村孝仁》 N-BOX エクステリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX インテリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX インテリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX インテリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX インテリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX インテリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX インテリア《写真撮影 中野英幸》 N-BOX エンジンルーム《写真撮影 中野英幸》 タント エクステリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント エクステリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント エクステリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント エクステリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント エクステリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント エクステリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント インテリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント インテリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント インテリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント エクステリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント インテリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント インテリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント インテリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント インテリア《写真撮影 宮崎壮人》 タント エンジンルーム《写真撮影 宮崎壮人》