ボルボ EX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGE《写真撮影 島崎七生人》

まるでデジカメのバッテリーのような風体のキータグ(重さは35gほどとごく軽い)が無線またはチップでクルマとの通信を行ない、ドアロックを解除。そこまではまあ一般的だが、シートに座り、あたりを見回すと、すでにボルボ『EX30』の異次元体験は始まっていた。

◆物理スイッチがほぼない、異次元体験
縦型12.3インチのセンターディスプレイはいわばテスラ方式。ボルボといえば昔は防寒グローブをしていても操作可能なダイヤル、スイッチ類が売りだったが、さしずめ今ならスマホ対応手袋なら操作可能といったところか(今回は用意がなく試せなかったが)。いずれにしろ、ここで操作の大部分を表示とアイコンを見ながら切り替えたり選んだりして機能を呼び出して実行する。

最上段の右寄りのシフトポジションおよびスピードのデジタル表示が1番大きいが(本国仕様とは右ハンドル用に左右を入れ替えたレイアウトになっている)その他の表示は、文字サイズ等の変更が可能かどうか、そのままではパソコンのメニューバー並みの文字の小ささで、判読は少し辛かった。ナビの地図画面の表示(描写)は精細でわかりやすい。試乗中は白い背景が明るく思えたので、iPhoneのダークモードよろしく背景を黒にしたところ、夜間は落ち付き、昼間もまったく問題なかった。

一方で数少ない物理スイッチのひとつ、電動シートのスイッチは四角いスイッチひとつに集約され、直感的な操作が可能。話は飛ぶがリヤゲートを外から開けたい時は、社名バラ文字の“L”の上の小さく地味なボタンを押すと開けられる。

◆“いかにもなリサイクル素材感”はない
インテリアは登場時の『XC40』ほどの“いかにもなリサイクル素材感”ではない。とはいえ樹脂の廃材を粉砕して練り込んだ(?)インパネのパーティクルデコレーションが象徴的だが、クルマ全体のリサイクル素材の使用率はアルミ25%、鉄17%、樹脂17%などだそう。シート表皮もPET、ワインのコルク、松の油由来のリサイクル素材だそうで、人の1億倍とも言われる臭覚の我が家のシュン(柴犬・オス・2歳)なら、何か嗅ぎ分けていたかどうか(は不明)。もちろん人には一般的な新車の匂いしかしないが……。

後席のスペースは、このクルマが国産車で言えばトヨタ『ヤリスクロス』クラスであることを意識させる。空間自体は過不足ない。が、“オスワリ”か“フセ”が乗車姿勢の我が家のシュンにはあまり関係ないものの、人の場合、背もたれが少し起きた着座姿勢となるため、後席に大人が乗車する頻度が高いならひとクラス上の『XC40』がベターといったところ。

◆自宅に持ち帰りたいほど秀逸だったオーディオ
一方で走りはとても爽快。電動市販車でフル加速を云々するのは決して本筋とは思わないが、加速はスムースだし、当たり前だが、エンジン車のような加速に伴う機械的な音と振動がないのは快適。耳も敏感な犬もこの点はありがたいに違いない。回生の強弱次第で減速も強弱が付けられるが、その差は極端ではなかった。それと車重こそ1790kg(前:840kg/後:950kg)あるが、タイヤのしっかりとした接地感でFRの“曲がり”の気持ちよさもしっかり味わわせてくれる。

今回の試乗は2泊3日ほど、走行距離にして114kmに過ぎなかったが、バッテリー残量はスタート時は84%、試乗車返却時には56%となっていた。今どき不調法にも筆者は自力での充電の用意がなく要充電の前の試乗車返却となるが、スペックに差があるとはいえ、一般的な肌感覚でいえば、かつて初代日産『リーフ』の頃に較べれば遥かに安心して走らせていられるのが改めての実感。BEVである上、実に扱いやすくいコンパクトカーであるのも魅力だ。

それともうひとつ、インパネ前部に仕込んであるhaman/kadonのスピーカー(オーディオシステム)の音が秀逸だった。まさに自宅で慣れ親しんだお気に入りのオーディオ(筆者はJBLスピーカーの40年来のユーザーだ)をそのまま車内に持ち込んだような自然でクッキリとした音で、自宅に持ち帰りたいくらいよかった。スピーカーグリル単体が見た目に存在せず、Aピラートリムと共布のような仕上がりのため、フロントガラスへの映り込みもまったく気にならない。

ターンシグナルランプのノック音がRは右のほうから、Lは左のほうから聞かせているのもユニークだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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