スズキ GSX-R125《写真撮影 真弓悟史》

スズキが1984年に送り出した『GSX-R』(400cc)は、その後、様々な排気量へと派生し、スポーツバイクを象徴する車名のひとつになった。連綿と続く、そのシリーズの末弟である『GSX-R125』(45万3200円)に今回試乗。軽さとコンパクトさを突き詰めた、ミニスーパースポーツのフィーリングをお届けする。

◆軽快でコンパクトな走りを実現
GSX-R125の初代モデルは、2018年1月にラインナップされた。兄弟モデルの『GSX-S125』と同様、2022年モデル登場時に新たな排ガス規制への対応を済ませ、今に至っている。

車体をまたぎ、シートに腰を降ろす。ハンドルの高さは思ったより低く、幅も狭め。したがって、上体は肩をすぼめるようにタイトで、頭の位置も自然に下がり気味になる。シート周辺は極端にスリムで、ブーツのかかとがべったりと接地してなお、膝には余裕がある。そのため、緊張感はないものの、しっかりとスーパースポーツ的な前傾姿勢である。

それにしても軽い。股の間でひょいひょいと車体を揺らすことができ、自由自在に振り回せる感じだ。同じクラスのフルカウルモデルといえば、ヤマハ『YZF-R125』やKTM『RC125』があるが、それらより格段にコンパクトに感じられる。

実際、YZF-R125の車重とホイールベースは141kg/1325mm、RC125のそれは147kg(燃料なし)/1343mmだ。対するGSX-R125は、137kg/1300mmであるから、数値と体感的なフィーリングは一致。尖ったスポーツ性で知られるKTMが意外なほど重いが、これは上位モデルの『RC390』と車体の大部分を共有しているからだ。

また、既述の足つき性に関しても、YZF-R125のシート高が815mm、RC125が824mmを公称する一方、GSX-R125は785mmと低さで圧倒。排気量の大小を問わず、スーパースポーツのカテゴリーはどんどん尻上がりの姿勢になっていくが、80年代のレーサーレプリカは「前傾がきつい」と言いながらも、今にして思えば足つきは随分とよかった。GSX-R125のライディングポジションはその当時を思わせ、上体が伏せ気味になるとはいえ、現代の感覚からすればフレンドリーだ。

◆バイクらしい回しきる楽しさ
80年代的といえば、エンジンの出力特性もそうだ。124ccの水冷4ストロークDOHC単気筒は、7000rpmを超えてから、ようやく活き活きと躍動し始め、そこからレブリミッターが近づく11500rpmあたりをキープするのが楽しい。最近はあまり文字にも口にもすることがなくなった、いわゆるパワーバンドが明確に存在。発進の時も半クラの時間をやや長めに保つ、もしくは高めの回転でつなぐ必要があり、世代によっては懐かしくも心躍るフィーリングだ。

言い換えると、4000〜6000rpmあたりのシャープさは皆無で、スロットルを開けたところで「ドゥゥゥ〜」とダルそうに増速していく。小排気量スポーツはこんなもんだと割り切れば、ある種のメリハリがあり、徹頭徹尾フラットな特性よりもかわいげがあるように思えてくる。

ハンドリングには、特筆すべき美点もなければ、指摘しておくような弱点もない。調整機構を持たない前後サスペンションには及第点を与えられ、フロントフォークが正立タイプだからといって物足りなさはない。むしろ、その見た目は車体のスリムさとマッチし、リーズナブルなコストにも貢献している。

もしもなにか試すとすれば、リアサスペンションをソフトにし、純正装着のタイヤ(ダンロップD102)をリプレイスできれば、接地感の向上を望めそうだが、それぐらいでよい。あまり小難しいことは考えず、目の前の道が開けたらスロットル開度大きめでダッシュ。そうすれば、胸のすく、しかし常識的なスピードの中で爽快感を得ることができる。

メインのターゲットが若者であることはわかっているが、エンジンをビンビン唸らせていた時代を知る、“元若手”にとってもいいモデルだ。

■5つ星評価
パワーソース ★★★★
ハンドリング ★★★
扱いやすさ ★★★★
快適性 ★★★
オススメ度 ★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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