スズキ スペーシア カスタム XSターボ《写真撮影 中村孝仁》

スズキ『スペーシア』は従来から標準モデルとカスタムモデルが存在する。新しくなって、ターボはカスタムに1グレードだけの設定となった。ターボの需要が少ないのだろうか。高性能版はチョイスがこの「XSターボ」に限られる。

ちなみにカスタムは下級グレードでも標準スペーシアよりも30万円ほど高く、同じ駆動方式の場合スペーシアの最上位モデルよりも下位グレードのカスタムの方が高い。ただし価格差にはそれなりの訳があるから、チョイスには価格と装備の関係をよく吟味する必要がある。

◆軽の枠を飛び越えた走りの質
ターボ仕様は価格も207万3500円(2WD)となって、軽自動車としては高価だが正直言って走りの不満点がない分、ノンターボより個人的にはお勧めできる。走りではどのような差が付くかというと、発進加速、パーシャルからの加速の両方が圧倒的と言えるほどの差が付く。

まあ、パワーはともかくとして最大トルクが58Nmから98Nmへと向上して、しかもその発生回転がノンターボの5000rpmから3000rpmへと引き下げられている。つまり、より速く最大トルクに到達し、それ以下の回転域でもトルクの厚みがあるからはるかに乗り易いし、エンジン回転を上げなくても済むから静粛性という点でもこれまたはるかに高得点を与えられるというわけだ。

試乗会で初めて乗った時にターボのチューニングを変えたのかと思った。その理由は、軽自動車のターボ車は概してある特定の回転域から急激に加速力が高まる、いわゆるドッカンターボ風の加速をするモデルが多く、スズキのターボ車もその例に洩れなかったのだが、今回は実にスムーズな加速感を持ち、いわゆるトルクの山がない言い過ぎだが、NAエンジンのような加速感を持つからだ。

よく言えばNA風だが悪く言うとドラマ性に欠けると評することもできる。もちろん新しい加速感を歓迎するのだが、ドッカンターボを好むユーザーもいて、メーカーにとってそのあたりは悩ましいところかもしれない。

エンジニア曰く、トランスミッションの制御を変えて今回のような加速感を実現しているとのことであった。ターボラグを感じないこの加速感を持ち、トルクの厚みが極端な話、3割近くアップしたターボの走りは、軽の枠を飛び越えてリッターカーに近い走りの質を感じることができる。

◆走り、装備で選ぶなら断然ターボ
運動性能的にもターボ車の方が軽快というか、しっかり感のある走りをする。サスペンションのチューニングは同じだということだが、タイヤは標準スペーシアの14インチに対し、ターボは15インチを装着していることが大きいと思う。試乗モデルのタイヤは標準がダンロップのエナセーブに対し、ターボはヨコハマ・ブルーアースであった。

常用スピードに達するのがはるかに速いうえに、標準モデルのようなCVT制御を行っておらず、戻したアクセルを再び踏み込んでも瞬時の加速が得られるから、走っていてストレスがない。

少なくとも走りの観点から見たら、断然ターボがお勧めということになる。当たり前だが装備も一番充実している。特にいきなり寒くなった時期に試乗をしたので、ステアリングヒーターの存在がとても有り難かった。これが装備されるのはXSグレードのカスタムのみだ。

そういえば先代から大きく変わったのがデジタル化されたメーターディスプレイである。情報量も多くなり、大型で見やすいスピードメーターも視認性に富む。

◆思い当たるようなネガ要素はない
正直言って、ターボモデルには思い当たるようなネガ要素はない。強いて言えば値段である。スペーシア全体に言える要改善点としては、車線変更をする際などにウィンカーを軽くタッチして3回ウィンクしてくれるシステムを取り入れて欲しいということ。

メーカー曰く3回だとその間に車線変更ができず、どうやら国交省が定める基準を満たしていないそうだが、ならばトヨタのように5回点滅させれば済む話で、できればそうしたユーザーフレンドリーなシステムは取り入れて頂ければ…と思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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