初代トヨペット『クラウン』の登場は1955年。筆者はその少し後に生まれ、幼少時は親に買ってもらったミニチュアカーを愛でていたから(!)、一応、初代からリアルタイムでクラウンの進化ぶり目撃してきた1人でもある。
数えて実に18代目という今度のクラウンのセダンだが、スタイルはかなり斬新だ。フロントでいえば薄目の奥に4眼LEDランプを組み込み今風で、それに縦桟と後ろに格子(=和の表現)をあしらったグリルはかなり立派な構え。ファストバック風のリヤは、見かけ上のノッチはほとんどないに等しいが、ハッチバックではないリッド式のトランクとしているところがフォーマルを意識しているといえばいいか。
◆心配りにあふれたインテリアにうなる
インテリアは他の車型のクラウンと基本的に共通したデザインで、左右非対称のインパネは水平基調で杢目調パネルを使い、このクルマに見合った落ち着いた雰囲気。センターコンソールもセダンはクラウン・シリーズ中でもっとも幅広だそう。エレクトロシフトマチックと呼ばれる、ボタン式でもトグルスイッチ式でもダイヤル式でもない旧来のシフトレバーに近い形状のシフトレバーには安心感がある。
装備はもちろん至れり尽くせりながら、助手席肩口に備わるスイッチでドライバーが助手席を前に寄せたり倒したりできる仕組みや、降車時「後席への置き忘れに注意してください」のメッセージが消えたメーターに最後に表示されるなどの心配りも見逃せない。ステアリングヒーターや、シートヒーターとシートベンチレーションは前2席でけでなく後席左右にも装備する手厚さ。後席にはマッサージ機能(の一種)も備わる。
◆神経を逆撫でしない極上のドライバビリティ
そして何といってもクラウンらしいのがFCEVの走りっぷりだ。『ミライ』やレクサス『LC』などと共通のFRの「GA-L」プラットフォームというのは「なるほど」と納得させられるところで、ハンドリング、パワーフィールなどを語るのは無粋に思えるほどのなめらかさと、神経をいっさい逆撫でしない極上のドライバビリティが実現されている。
試乗車の車両重量はちょうど2t(前:970kg/後:1030kg)だったが、重さを味方にしたボディの安定感によるフラットライドと、ミライをより洗練させた印象の穏やかだが意に添う挙動もいいし、当然ながらモーター駆動による音、振動の小ささもならではだと実感、クラウンらしい説得力に満ちたクルマだと思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
【トヨタ クラウンセダン FCEV 新型試乗】クラウンらしい説得力に満ちたクルマだ…島崎七生人
2024年03月07日(木) 21時00分
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