スバル クロストレック ツーリング FWD《写真撮影 中村孝仁》

ちょい乗り試乗を経て、今度は本格的に数日間お借りしてスバル『クロストレック』をじっくりと堪能した。走行距離はおおよそ1000kmに到達した。結論から言うと、期待は裏切られなかった…である。

◆あえて素のFWD仕様を選ぶ理由
今回も敢えて素の「ツーリング」というグレードをチョイスした。理由はこれまでシンメトリカルAWDが売り物だった旧『XV』にはなかったFWD仕様のグレードを投入したことによる。

確かにこの値段で高性能なAWDが手に入るの?という驚きを我々に与えてくれたスバルだが、そうは言っても都会に住む身としては滅多に降らない雪に備えてAWDをチョイスするのは気が進まないし、そもそもいくら高性能でもやはり4輪を駆動するのはそれなりのフリクションを伴うし、そもそも重い。だからあえてプロペラシャフトで後輪を駆動する必要性はあまり感じられないわけである。

ツーリングというグレードはいわゆる下級グレード(上級は「リミテッド」)なのだが、価格差はFWD同士で比較して266万2000円に対してリミテッドは306万9000円である。ちなみに試乗車は56万1000円のオプションを載せて322万3000円である。

価格的にこれだとリミテッドを上回ってしまい、よくよく調べてみるとどうしても必要と思えるインストルメントのディスプレイやアイサイトのセイフティプラスを含む欲しい装備はリミテッドならばほぼ装着されている。そんなわけだからリミテッドを購入して敢えてレスオプション(できるかどうかは不明だが)で、17インチタイヤ&ホイールに仕様変更してもらえば良いなと感じた。

◆静粛性の高さと乗り心地、アイサイトの性能が光る
何故17インチに拘るかというと、一言で乗り心地が素晴らしいからだ。横浜のジオランダーというオールシーズンタイヤを装着しているのだが、これがとにかく素晴らしい。路面の当たりも柔らかく、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)の抑え込みが見事だ。今回も高速で700kmほどを走りその多くをACCで走行してみたが、同行したVW『ポロ』オーナーが、その静粛性の高さと乗り心地の良さに舌を巻いていた。

それだけではない。やはりアイサイトを使ったACCの高性能は国産車ではベストと言っても過言ではないほど。とりわけ前方で渋滞が発生しているような時でも的確なブレーキ操作でスムーズな減速をしてくれる。このような状況下で多くのACCはかなり唐突なブレーキングをするものが多い。中には最後の最後になって警告音を発し自ら止まることを諦めるケースだってある。

その同行したポロオーナーも、我慢できなくなって自分で先にブレーキを踏んでしまうことが多く、だからACCはあまり使わないと言っていたが、それが現実なのだと思う。だから、スバルのACCの制御は見事でかなり安心してクルマに任せきりの走行ができるのである。

ADASという技術はそれ自体を身をもってテストするわけにはいかないものがほとんどだから、まあ保険的についていると思うしか方法はないが、安全性はとても高いクルマだと思うし乗っていて安心感も高い。

◆700km以上を一気に走行してもほとんど疲れ知らず
クルマ好きのユーザーはとかくCVTを嫌う人が多い。それは自分の感性に対するクルマの反応が異なるからで、言い方を変えればダイレクト感に乏しいからだと思う。「リニアトロニック」というスバルのそれはかなりよくできたCVTだと思うが、それでも飛ばして運転を楽しみたい時の印象としてはやはり少しダイレクト感に欠ける。

今回からこのCVTに組み合わされるICE(内燃機関)が2リットルに格上げされて、ハイブリッド化されたe-Boxerと呼ばれるエンジンが組み合わされる。性能的には中庸で正直言って凄く力強いというものではない。ただ、ここ一番のパンチ力では不満があるものの、一般的ユーザーにとってはこれで十分。恐らくまだ上の高性能版が登場するのではないかと期待しているから、今はこれでよいと思う。

それにしても2日で700km以上を一気に走行してもほとんど疲れ知らずで走れるのには恐れ入った。まあ飛ばさなかった(新東名は120km/hのクルージング)ことも功を奏してか、燃費は15.1km/リットルとまずまず。とはいえ、一般道を普通に流すとその数値は一気に下がるから、やはり燃費はあまり期待できない。それでも、レギュラーガソリンが使えるから少しは我慢できる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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