BMW  X1 xDrive20i xライン《写真撮影 中村孝仁》

『X1』という名前からも想像がつくように、“SAV”と呼ぶBMWのSUVの末弟にあたるモデル。尤もそのサイズ感、これが日本の道路にはちょうど良いと思える。

敢えてサイズを記すと全長4500×全幅1835×全高1645mmだそうである。結構車高が高く、着座位置も高いしFWDではあるけれど取り回しも良いから、正直なところこれだと日常的に使いまわすにはベストサイズかな?と思える。ただこのクルマ、実際に乗ってみて「さすがBMW」と思わせるところがあまりなく、少し没個性のBMWに思えてしまった。

◆BMW X1の個性とは
BMWと言えば、やはりそのハンドリングであったりエンジンの軽快さやスムーズさなどに惚れて購入するユーザーが多いと勝手に想像しているのだが、そうした面での個性は今回のX1に関する限りあまり感じられない。強い主張をするのはやはり大きなキドニーグリルで、ここだけは紛れもないBMWである。

今回は某国産のミニバンからの乗り換えで試乗したため、乗り出した瞬間からその強烈にガッチリしたボディの剛性感と、それに伴うサスペンションの硬さだけがイニシャルの印象として残ってしまったのだが、ボディの剛性感は素晴らしく高く、BMWの名に恥じないと思えた。

一方のサスペンションの突き上げ感は、前に乗ったミニバンの影響でそう感じられたもので、実際には硬質感のある乗り心地はBMWらしさをきちっと残した十分に快適なもの。何よりもワインディングで少し気合を入れた走りをする時など、そのロール剛性の高さを発揮して、この辺りはやはりBMWだなあと思わせてくれた。

◆「BMWらしくない」と思えた2つのポイント
今回のX1にはガソリン、ディーゼル、そしてBEVの3種が用意されているが、今回お借りしたのはそのうちのガソリン仕様で2リットルの直4ユニットを搭載するモデル。Cセグメントの『1シリーズ』では3気筒エンジンが搭載されるのだが、こちらは4気筒の2リットル。当然それなりのパフォーマンスを期待してしまうが残念ながらそれはなく、街中を走る限りエンジンはほとんど黒子状態で静々と回っている感じである。この辺りにBMWらしさは感じられなかった。

そしてもっともBMWらしくないと思えたのは、組み合わされる7速DCTとのマッチングである。FWDベースのモデルにはこのところドイツ各メーカーがDCTを採用する傾向が強い。BMWも先行した1シリーズでは8ATが搭載されているが、新たにデビューしたX1は7速DCTが組み合わされる。しかしこれ、いったん走り出してしまえば不満点はないのだが、走り出しと渋滞時のごく低速におけるアクセルに対するレスポンスがよろしくない。

具体的には今どき当たり前のアイドリングストップからエンジンをかけて、さらにクラッチを繋いで走り始めるまでにかなりのタイムラグを感じさせること。また、1速と2速を往復するようなケースでのトランスミッションとクラッチのやり取りがあまりうまくなく、時々完全なノーカン(アクセルを踏んでもクルマが動き始めない)状態を作り出すことがあった。

気になったのはこの2点だけだ。

◆高級コンパクトSUVの代表格
かつてはギミックと呼んだドライブモードは、以前のノーマル(コンフォートだったか)・エコプロ・スポーツモードから一転して、パーソナル・エフィシェント・スポーツそれにエクスプレッシブ、リラックスと5種のマイモードと呼ばれるスイッチによってチョイスできる。

はじめの3つについては性能的にも変化しているようだが、エクスプレッシブとリラックスはどちらかと言えば、快適さ方向での切り替えとなっているようで、この二つのモードを選ぶと、いきなりシートのマッサージ機能が働くようになっていた。この種のマッサージ機構はその昔の国産高級車にも存在し、当時は「そんなことするくらいならもっと走りを追求してくれ」などと思ったものだが、今やドイツ車の専売特許になりつつあるようで、時代は変わったものである。

まあ、正直SAVと言われてもピンとこないが、高級コンパクトSUVの代表格としては大いにお勧めできるモデルである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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