プジョー 408 GTハイブリッド(PHEV)《写真撮影 諸星陽一》

今回のワンポイント確認は、「408の色気は、女性のハートに刺さるか」である。LGBTQが言われている昨今、男女をどうとらえたらいいのか微妙だが、今回の「女性」は、昭和で使われていたイメージでとらえていただきたい。

◆いきなりみぞおちに一発、なんだこの猛々しさは
フランスといえば、洗練された美意識である。だからクルマもフランス車を選ぶと、そういう意識の高い人と思ってもらえそうな気がする(気だけ)。ゆえに、私も過去にフランス車を選んだことが2度ほどある(他力本願)。

プジョー『408』も、そんな思い出を引きずったまま試乗に出向いてしまったところ、いきなりみぞおちに一発、食らった気がした。なんだこの猛々しさは。ファストバックと呼ばれる、いわゆる5ドア(トランクを開けるとリアウィンドゥごと開くタイプ)、しゅっとしていかにも風をきって走りそうなのだが、表面は何本もの直線的なラインが入れられていて、かくかくっとしているのだ。フランスの上品な愛らしさが、すまぬ、感じられないのである。

しかも、エンブレム。「ぷじょらいおんくん」と、舌足らず気味に愛でていたライオン像は、雄々しい砂漠の覇者マークみたいになっちゃって、かわいくない。ぜんぜん、かわいくない。

◆カーナビはドライバーの愛と歩み寄りが必要だ
みぞおちに食らった一発に、息ができない状態で運転席に座ると、やっと落ち着きをとりもどしてきた。シート座面は掘りが深くて落ち着きがいい。硬いながらも座り心地のよいシートは、やはりプジョーである。そして、インパネ。i-Cockpitと呼ばれる3Dっぽいデザインが洒落ている。

ただし、カーナビは使いこなすのに時間がかかる。日本語で問いかけてもフランス語で返してくるフランス人のプライドなのか、取説なしでさくさく使えるとはいいがたい。ドライバーの愛と歩み寄りが必要である。

ハンドルを握ると、直径が小さいコンパクトタイプで、スポーティに乗りこなせというメッセージが伝わってくる。実際、ボディは大柄なのに、ハンドルを切るとくいくいと軽々と曲がっていく。ボディサイズを感じさせない扱いやすさだ。

◆乗り心地、最高。使いやすい。
さらに、加速するときの軽快感。もともとプジョーは、アクセルに対して反応がよく、すっと飛ぶように加速するけれど、ハイブリッドになるとその感覚に磨きがかかり、するりと走り出す。これは気持ちいい。

乗り心地、最高。使いやすい。ただ、燃費のカタログ値はリッターあたり17.1kmと今一つ。今回、往復686km、高速8割、信号のない田舎道2割弱というバランスで走ってみたところ、燃費は18km/リットルを軽々と超えた。

ただ、408のハイブリッドの場合、燃料タンクが40リットルということもあり、残量表示がみるみる減っていく。700kmの距離をワンタンクで走るには精神的にも厳しく、長距離がメインになるユーザーには残念なところと言える。

◆結論。
「408の色気は、女性のハートに刺さるか」は、デザインは刺さらない。しかし、車内の居心地や加速のしなやかさは、刺さりまくりである。あとは、フランスでは、EVモードを使うためにハイブリッド設定という部分もあるが、ハイブリッドに燃費を強く期待する日本ユーザーのために、もう少しよくなるといいなと感じている。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

プジョー 408 GTハイブリッド(PHEV)《写真撮影 諸星陽一》 プジョー 408 GTハイブリッド(PHEV)《写真撮影 諸星陽一》 プジョー 408 GTハイブリッド(PHEV)《写真撮影 諸星陽一》 プジョー 408 GTハイブリッド(PHEV)《写真撮影 諸星陽一》 プジョー 408 GTハイブリッド(PHEV)《写真撮影 諸星陽一》 プジョー 408 GTハイブリッド(PHEV)《写真撮影 諸星陽一》 プジョー 408 GTハイブリッド(PHEV)《写真撮影 諸星陽一》