フィアット ドブロ《写真撮影 中村孝仁》

シトロエン『ベルランゴ』、プジョー『リフター』ときて、今度はフィアット『ドブロ』の登場である。ご存じだとは思うが、この3台、いずれも骨格、メカニズムを共有する。ボディだってスタイルの違いはフロントフェイスぐらいなもので、ほとんど見わけのつかないレベル。

ならば何故、3台も同じものを市場に投入するのか?

◆ベルランゴ オーナーがドブロで400km試乗
プジョーとシトロエンの場合はプジョーにアドバンスドグリップコントロールが付いていたり、iコックピットにしてベルランゴとはそれなりの差別化をしていたが、じゃあドブロはどうなの?ということになるがこれはズバリ(勝手に)、ディーラー対策である。

つまりシトロエンとプジョーの場合同じディーラーで販売しているケースがあるが、フィアットのディーラーは全く別。しかも今、ミニバンやSUVが一番売れ筋だというのに、日本市場におけるフィアットのラインナップにはそうした売れ筋モデルがない。そこで、ドブロを導入してフィアットのディーラーに潤ってもらおうというのが、導入の背景にあるのは間違いない(勝手に)。

ではステランティス的にこの3銘柄が共食いをしないのか? という疑問もあるのだが、ディーラーが違うと恐らくそうしたことはないのだろう。フィアットの既納客はやはりフィアットに行くのだと思う。それなら乗り味に違いにはあるのだろうか。

今回は東京から伊豆の先端、下田までを往復して海岸線のワインディングや東名高速など400kmほどを走ってみた。余談ながら筆者自身はシトロエン・ベルランゴのオーナーである。

◆ベルランゴ、リフターとの走りの違いは
と言っても筆者の所有するベルランゴは最初期のローンチエディションで、デビューからすでに3年以上が経って、この間にベルランゴもそれなりのブラッシュアップが施されているから、完全なる比較は出来ない。しかし、実際に乗り比べてみてまあおおむねどちらに乗っても大きな違いはない。プジョーだけは17インチタイヤを装着するが、シトロエンとフィアットはともに16インチ(シトロエンの上級グレードは17インチだが)。しかもミシュランのプライマシー4という銘柄まで一緒である。

試乗して一番違うな…と感じた点はフィアットが頻繁にコースティングをするセッティングにされていること。最近のシトロエンもそうなっていて、「ベルランゴ ロング」を試乗した時も割とコースティングの機会が多かったのだが、フィアットはさらにそれが多いように感じられた。

そしてもう一点大きな違いとしてはダウンシフトも頻繁に行う点だ。信号に近くなってアクセルをオフにすると着実にギアを下げてダウンシフトする。この辺りは燃費対策もあってだと思うが、果たして最新のプジョーやシトロエンはそうなっているかは確認していないので何とも言えないが、少なくともドブロの味付けはそうなっていた。因みに400km走った燃費は15.8km/リットルであった。

◆フィアットらしいクルマか、というと
まあ正直なことを言えば、ドブロがフィアットらしいクルマかというと、全くそうではない。あくまでもフィアットのバッジを付けたプジョーもしくはシトロエンである。エンジンはフォードとPSAが共同開発した1.5リットルのターボディーゼルで、アイシンが開発したEAT8の名を持つ8速ATも共通である。そんなわけだから心臓から衣装まですべてPSAからの借り物というわけだから、フィアットらしさが無くて当然である。

乗っていてもやはりシトロエンとの近似性を強く感じるが、有難いことにフィアットだと思って乗り込むと、実に快適で乗り心地が良いことに気づくと思う。この点はフィアットオーナーなら恐らく顕著に感じられる部分ではないかと思う。

◆ステランティス・ミックスでカングーの対抗馬に
さて、日本市場における仮想敵は?。ズバリ、ルノー『カングー』だろう。無塗装のバンパーを装着するのはステランティスのモデルではドブロだけ。見た目的にカングーの対抗馬的存在に見える。

まあ、これだけで判断してはいけないが、例えばモジュトップが用意されず、シングルグレードで2種のホイールベースを用意するだけで、価格的にも400万円を切り、そのためかナビゲーションの設定もなかった。それ以外の部分ではすべて共通と言って過言ではない。だから、3兄弟の中では一番商用とMPVの中間的存在である。

そうそう、外観はフロントフェイス以外にもルーフレールがこちらはシトロエンとは異なり、リフターと同じデザインのものが装備されているからまさにステランティス・ミックスである。

いずれにせよ、どれをとっても快適な乗り心地と楽ちんなドライブは保証される。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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