シボレー コルベット コンバーチブル《写真撮影 吉田瑶子》

半導体不足など様々な問題から納車までの間が長く、ユーザーをやきもきさせている自動車業界。なかなか手に入らないとなるとなおさら欲しくなるのが人の性だ。

そんな中、思いのほか人気なのがスーパーカー系モデル。特に注目を集めているのが『コルベット』だ。ヨーロッパのスーパーカーばかり見ていたセレブたちが大西洋の向こうにも“スーパー”なクルマがあることに気づいた。しかも高レベルなパフォーマンスを持ちながらアフォーダブルというオマケ付きとなる。

伝統のFRからミッドシップへ
C8コルベットが高く評価されているのは新しく生まれ変わったパッケージングにある。長年継承してきたFRを捨てミッドシップとなった。理由はモータースポーツでの活躍。もちろん、これまでも輝かしい成績を残しているが、さらなるバージョンアップが要求されるようになった。そこで、2000年のルマン24時間レース参戦から20年の月日を経て、抜本的な改革に乗り出したのだ。

進化した大排気量NAエンジン
今回ステアリングを握ったのはそのコンバーチブルモデル。ルーフはリトラクタブルハードトップ式で、スイッチ1つであっという間に開閉される。エンジンは全グレード共有の6.2リットルV8 OHV。パワーは502ps、最大トルクは637Nmを発揮する。

実際に走らせるとこのエンジンのフィーリングにうっとりする。大排気量NAエンジン独特の自然な吹け上がりとじわっと湧き出るトルクがドライバーの心を熱くする。過給器やモーターによるサポートの無いエンジンそのものの味が伝わってくるのだ。しかもリンケージを使ってカムシャフトを動かすOHVでありながら高回転までキレイに回る。もし貴兄が「あのドロドロ音のするアメ車のV8だろ!」と思っていたら大間違い。絶対的なスピードを含め進化の度合いはハンパない。

状況に合わせた多彩なドライブモード
そんなエンジンをはじめとする各部はドライブモードで味変できる。“レーストラック”、“スポーツ”、“ツーリング”、“ウェザー”などがそれだ。パワステ、サスペンション、ブレーキフィーリング、エンジン音云々が調整可能だ。“マイ”モードで好みをまとめるのもいいだろう。自分流のC8が出来上がる。

デフォルトとなる“ツーリング”はとても乗り心地がよく街中でも扱いやすい仕上がりになっている。「マグネティックセレクティブライドコントロール」と呼ばれるサスペンションが働くからだ。ダンパー内部の磁性流体がリアルタイムで粘性を調整する。これが路面からの入力に対し柔らかく反応してくれるから嬉しい。また、クイックすぎないパワステもグッド。スクエアなステアリングを回すのに気持ちよくアシストした。

“スポーツ”はそれらを言葉通りスポーティにしたもの。ダンパーは若干硬くなりエンジン音も大きくなる。そして“レーストラック”にするとそれらがさらに豹変する。エンジン音は爆音と呼ばれる種類となり、ダンパーはかなり硬め。路面の凸凹をそのまま拾う状態になる。同乗者がいればクレームは避けられない乗り心地だ。まさにレーストラックのように路面が整ったところでないと使えない。

なんて思っていたら、それを上回るモードがステアリング上のスイッチに隠されていた。その名は“Z”モード。まんまサーキットを走るためのモードだ。これに関してはサーキットで走る時にレポートしよう。

そんなことを試しながら何日間乗り回していたら、どんどん乗りやすく感じてきた。このスタイリングからは想像できないほど扱いやすく快適な面を持ち合わせている。レジャーの足にも使えそうだ。そんなユーザーフレンドリーなところがアメリカ車らしく、かつ魅力なのかもしれない。その意味で長く付き合えそうなスーパーな1台と言えそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

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