約22億円を投じてバリアフリー化や座席改善、コンセント増設といったリニューアルが図られる8000系特急型電車。《写真撮影 草町義和》

JR四国は8月26日、国土交通省に対して運賃の上限変更認可申請を行なったことを明らかにした。2023年春に運賃と一部の特急料金の改定を予定している。

JR四国は消費税転嫁を除いて、1996年1月以来、運賃改定を行なっていなかったが、近年のコロナ禍や人口減少などを受けて、2021年度は本業の赤字が202億円、経営安定基金の運用益を加味しても33億円の最終赤字に陥っている。

このような流れから、今後も鉄道運輸収入のさらなる減少が予測されるとともに「固定費が大半を占める鉄道事業の特質上、安全・安定輸送を確保するために必要となる安全投資、修繕を確保したうえでの経費削減には限界があり、現在の運賃・料金水準では中長期的な事業継続は極めて困難と判断しております」として、改定に踏み切ることになった。

申請によると、普通運賃では100kmまでの他の交通機関の運賃水準を考慮して、キロ数に賃率を乗じる従来の算出方法に拠らない対キロ区間制運賃を導入。101〜200kmの区間は従来の算出方法とするが、賃率を16.20円から3円引き上げた19.20円とする。201km以上の区間については賃率を据え置く。

定期運賃では割引率の引下げが行なわれ、通勤定期は1か月用が平均52.9%から48.0%、6か月用が平均58.8%から53.2%、通学定期は大学生用1か月が74.7%から73.2%とされる。

なお、通学定期の中・高生用については、今回の申請が認可された際に届出を行なうとしており、その場合、割引率は高校生用1か月が76.9%から76.2%、中学生用1か月が81.6%から80.8%に引き下げられる。

一方、1996年1月の改定時に地方交通線で運賃表に代わり、通常の営業キロ数を割増した擬制キロが導入された際、激変緩和措置により導入された特定運賃は、役目を終えたとして廃止される。

このほか、特定特急料金の改定も予定しており、自由席では25kmまでの区間を330円から450円に引き上げるとともに、50kmまでの区間を廃止してA特急料金と同額に。指定席については特定料金を廃止して、こちらもA特急料金と同額とする。これら以外の特急料金については競合する都市間バス路線を考慮して据置きとする。

また、「トクトクきっぷ」と呼ばれる特別企画乗車券については、申請が認可された場合、改定分相当を引き上げることを基本にするという。

この改定によりJR四国では年間20億円程度の増収を見込んでおり、多度津工場の近代化やキハ40系に代わる新型一般型気動車の開発・新製、8000系特急型電車の大規模リニューアル、列車運行の効率化、検査・修繕の効率化、スマートフォンアプリによる新チケットシステムの開発・導入などを図るとしている。

約120億円を投じて老朽化した建物や機械が更新される多度津工場。自動化やロボット化、レイアウトの変更も合わせて行なわれる。《写真提供 香川県観光協会》 運賃の平均改定率。《資料提供 四国旅客鉄道》 おもな近距離区間における普通運賃(幹線)の改定額。《資料提供 四国旅客鉄道》