クラシックMini《photo by BMW》

センターメーターは、かつてイギリスのメーカーが、左側通行の自国向けと右側通行の市場向けのクルマを作り分ける際に多くを共有化できて合理的なことから採用したのが起源といわれる。

クラシック『Mini』がその象徴的存在であり、初代、2代目のBMW MINIにもセンターメーターが受け継がれた。

日本車でも、1950年代の日産のダットサンや70年代のホンダの『ライフステップバン』、89年の日産『エスカルゴ』などに採用例があるが、一気にメジャーになったのは、97年の初代『プリウス』への採用だ。これを皮切りにトヨタでは2000年代にかけて、一連の『ヴィッツ』ファミリーや『エスティマ』、『bB』、『イプサム』、『オーパ』、『ラウム』など多くの車種に展開し、見た目の斬新さもあって注目された。他社では三菱の初代『eK』シリーズ、スズキの『ワゴンR』や『ソリオ』、一時期のダイハツの『ムーヴ』や『タント』などでも見受けられた。

ところが、そんなセンターメーターが近年ではめっきり減少傾向にある。理由として考えられることがいくつかある。

ひとつはシンプルに見にくいこと。視線移動が小さくなるとされていたが、実際にはそうではないと感じた人が少なくなく、あまり好まれなかったというのが大きい。また、身長の低い人からはセンターのメーターフードに遮られるため前方視界が悪いという声も少なからずあったようだ。

さらに、近年では大画面のデジタルディスプレイが装備されるようになってきた。これとセンターメーターとは両立は難しい。すべてをひとつにまとめてセンターに配したテスラのような例もなくはないが、一般的ではない。

ご参考まで、ダイハツはムーヴの現行型ではセンターメーターを廃しており、タントも現行型ではセンターから運転席の前まで横に長く伸びたタイプに変更されたため、同じくやめたように報じられたのだが、開発者によると、「見せるべき情報の量が従来よりも増えてきてセンターだけでは収まりきらなくなったためこのようにしたのだが、センターメーターの発展形と考えている」との旨を述べていた。思えばかつてのマツダ『ビアンテ』も同じようなタイプだった。

むろん一長一短あるわけだが、センターメーターを採用していたのは比較的、低価格な車種ばかりだったため、安グルマのためのものというイメージがすっかり定着してしまったという印象の悪さも、短所のひとつに違いない。おそらくそれが理由としてはもっとも大きいのではないだろうか。

そんな感じで長所よりも短所のほうが目立ってきたので、やめたほうが賢明とメーカーも判断したのだろう。

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