2023年、3年ぶり3度目のインディ500優勝に向けて意欲を燃やす佐藤琢磨。《写真提供 スポーツビズ》

1月17日、レーシングドライバーの佐藤琢磨が今季2023年のレース参戦に関してオンライン会見を実施し、インディカー・シリーズの超強豪チーム「チップ・ガナッシ・レーシング」に移籍、インディ500を含むオーバルコース戦(5レース)にのみ出場することを発表した。

◆チップ・ガナッシ・レーシングからオーバル限定参戦
佐藤琢磨(今月28日で46歳)はF1参戦を経たのち、2010年に北米最高峰インディカー・シリーズへのレギュラー参戦を開始。2017年と2020年に最大イベントである「インディ500」を制覇するなどの活躍を演じてきた。シリーズ通算6勝を挙げている(インディ500の2勝を含む数字)。

インディカー参戦14年目となる今季2023年の琢磨の参戦体制に関しては、昨年12月、ホンダの2023年モータースポーツ活動発表会においてインディカーのホンダエンジン勢にその名は変わらずにあったが、チーム名は未定の状態になっていた。

昨シーズン(2022年)はDale Coyne Racing with RWRに移籍して戦った琢磨。しかし、残念ながら思ったような結果を得ることはできなかった。そこで今季2023年に向けては新たな参戦体制を模索することになり、「様々なチームからオファーを頂きました。そして、そのなかでひとつ、非常に大きなチャンスが訪れまして、自分としてはそこで走りたい、と思いました」と、このオフの“ストーブリーグ”の経緯を語る。

この日、ついに琢磨の今季参戦体制が発表された。「自分は(さらなる)移籍をして、インディカーに新たなかたちで挑戦します」という前置きに続いて本人から語られた内容は、チップ・ガナッシ・レーシング(以下、ガナッシ)に初めて加入し、インディ500を含むオーバルコース戦にのみ出場する、というものであった。

ガナッシはインディカーの世界で現状、シボレー勢のペンスキー、ホンダ勢のガナッシといったかたちで双璧の座にある超強豪チーム。今季の琢磨はレギュラー参戦ではないためシリーズチャンピオン争いは不可能な前提になるが、このチームからの参戦は確かに魅力的だ。しかも琢磨が最も得意なレースといっていいインディ500を中心としたオーバル戦に絞った出場、もちろん主眼を置くのは自身3度目の制覇がかかるインディ500になる。

琢磨はガナッシでカーナンバー11のマシンをドライブ。ロード/市街地コース戦ではマーカス・アームストロング(近年はFIA-F2を戦っていた選手)が11号車のステアリングを握る。ガナッシは4台体制で、過去6度のシリーズタイトル獲得を誇るスコット・ディクソン(インディ500は1勝)、2021年シリーズチャンピオンのアレックス・パロウ、2022年インディ500優勝者マーカス・エリクソンの3人が昨季から残留となっている。

◆今季オーバル戦はインディ500を含む5レースの予定
琢磨はガナッシ加入の喜びを「本当に信じられない気持ちです。これまでずっと、打倒ガナッシ、打倒ペンスキーでしたから」と語った。「このチームの強さ、リソースの大きさが楽しみですし、ワクワクしています」。

ただ、レギュラー参戦でなくなること、ロード/市街地での実戦から離れることについての“決断”には、やはり「時間がかかりました」と振り返る。でも、「今できること、そして一番大事なことは何か、それを考えました」というなかで、「最大の挑戦ができる選択肢であり、オーバルに集中してガナッシと一緒にやれることは自分にとって大きなステップになる」との思いから、決断に至った。

今季のNTTインディカー・シリーズは全17レースのスケジュールが組まれている(開幕戦決勝は3月5日開催予定)。このうちオーバルコースでのレースは5つで、最初は4月2日決勝予定のシリーズ第2戦、テキサス・モーター・スピードウェイでのレースだ。ここが琢磨の今季初戦ということになる。

その後にはシリーズ第6戦の第107回インディ500(5月28日決勝予定)が控え、さらには7月のアイオワ・スピードウェイ2連戦、そして8月のワールドワイドテクノロジー・レースウェイ戦が琢磨の出番になっていく。

◆「素晴らしい体制。3度目のインディ500優勝を目指します」
ロード/市街地戦の際にチーム帯同するか等の詳細はまだ決まっていないとのこと。いずれにせよ多忙なことは変わらないだろうが、それでも従来より時間ができるのは確かなようで、琢磨は校長職を務めるHRS鈴鹿(ホンダ・レーシング・スクール 鈴鹿)に関して、「生徒にとってより良い環境になるよう、これまで以上に精一杯やっていきます」との旨を語っている。また、自身の後継となっていくような日本人選手のインディカー挑戦を待ち焦がれてもいる。

そして琢磨は今回の参戦体制構築に関わってくれたすべての人々に感謝しつつ、「チャンスを最大限に活かすべく、チーム一丸となって、この素晴らしい体制でインディ500の自身3勝目を目指していきたいと思います」との抱負を語った。

レギュラー参戦でなくなることは観る側にとって寂しくもあるが、琢磨の新たなかたちでの挑戦が実を結び、今年5月のインディ500で3年ぶりの通算3勝目が達成されることを期待したい。

佐藤琢磨(2022年シーズン)《Photo by INDYCAR》 佐藤琢磨(2022年シーズン)《Photo by INDYCAR》 佐藤琢磨(2022年シーズン)《Photo by INDYCAR》 2020年、佐藤琢磨は2度目のインディ500制覇を成し遂げた。《Photo by Honda》 2017年、日本人選手初のインディ500優勝を実現したときの佐藤琢磨。《Photo by Honda》