「目が合った(相手から挑発された)」という思い込みで、執拗にバイクを追跡して死亡事故を誘発した男。裁判員裁判で行われた公判で裁判所は懲役14年の実刑を命じた。求刑通り、減刑判断なしの判決となった。

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2016年7月、神奈川県平塚市内で前走するバイクを執拗に追跡し、追突事故を起こして運転者を死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた21歳の男に対する裁判員裁判の判決公判が14日、横浜地裁小田原支部で開かれた。裁判所は懲役14年の実刑を命じている。

傷害致死の罪で起訴されていた21歳の男は、2016年7月4日の午前2時50分ごろ、一方的な思い込みから立腹して18歳の男性が運転するバイクを約1.6kmに渡って執拗に追跡。平塚市高根付近の行き止まりとなっている市道に追い込むとともに、故意に追突する事故を起こして男性を死亡させたという。

朝になって近隣住民が転倒しているバイクと、その近くで死亡している男性を発見して警察に通報。後に男が警察に「事故を起こした」として出頭していたが、現場に残されていたブレーキ痕などから「追跡していたクルマが前走するバイクへ故意に追突し、死に至る事故を誘発させた」として男を殺人容疑で逮捕。男が殺意を否認していたことから、検察は傷害致死罪で起訴していた。

これまでの後半で男は「後を追いかけたことは間違いないが、ぶつけてはいない」などと主張してきたが、14日に開かれた裁判員裁判の判決公判で横浜地裁小田原支部の安藤祥一郎裁判長は「危険性のある暴走行為にあたり、傷害の故意があったと推認される」と指摘。公判中に不合理な弁解に終始したこともあわせ、「執拗に追跡したことは危険極まりなく、卑劣な犯行」として、被告に対して懲役14年の実刑判決を言い渡している。

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交通トラブルのうち、相手を死傷させるような状態まで発展した案件では、この「相手と目が合った(相手から挑発された)」という思い込みが発端となっているものが多くなっている。つい先日、東京都昭島市で発生した交通トラブル事件においても、追いかけた側からこのような供述がなされている。追いかけられることになった相手側にとって、相手を挑発するような行動が無いことは多々で、ほとんどが追いかける側の一方的な思い込みで発生している。

昨年6月に神奈川県内の東名高速で発生した事件以降、交通トラブルに対する社会的な目が厳しくなっている中、本件では追いかけられた相手が死亡していることに加え、追いかけた側の被告が公判中に不合理な弁解で無罪を主張していたこともあり、「懲役14年」という検察側の求刑から減じることなく、求めた期間での実刑が命じられることとなった。