予選1-2のフェラーリ499P(#50と#51)。《Photo by Ferrari》

初回開催から100周年となる2023年の「第91回ルマン24時間レース」の予選が6月7〜8日に実施され、最高峰クラス「ハイパーカー」の#50 フェラーリ499Pがポールポジションを獲得、僚機#51が2位に続いた。6連覇を狙うトヨタ勢は予選3位と5位。

◆1923年の第1回大会から100周年の「第91回大会」
毎年6月、明るい時間がなるべく長い夏至に近い時節の開催を基本とするフランス伝統の耐久レース、ルマン24時間。その初回開催は1923年といわれ、今年2023年は100周年大会にあたる(第1回大会は5月開催。他にも6月以外の開催だったことはあり、近年ではコロナ禍の影響で2020年が9月、2021年は8月の開催だった)。

100周年ということは、毎年開催があったなら今回が101回目の開催になるわけだが、戦争による中止等があったため、実際には今回が第91回大会である。

また、現在のルマン24時間はFIA世界耐久選手権(WEC)の一戦でもあり、今年のルマンはWECの2023年シリーズ全7戦中の第4戦に位置付けられている(第6戦は9月に富士スピードウェイで開催される予定)。

◆総合優勝戦線、久しぶりの活況。欧州列強が“ルマン帰還”
今年のルマンは100周年大会に相応しくというべきか、レースの総合優勝を争う最高峰クラス(現在はWECハイパーカー・クラス)が久々に活況を呈している(ハイパーカー・クラスは、LMH=ルマン・ハイパーカーという規定でつくられたマシンでの参戦が原則)。16台というクラス参戦台数は近年比“大幅増”だ。

これにはアメリカのIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(IMSA)の現・最高峰クラス「GTP」とのマシン規定共用化実現も影響している。「LMDh」という規定でつくられたマシンなら、IMSAのGTPクラスだけでなく、WECのハイパーカー・クラスにも参戦が可能に。そして実際にポルシェとキャデラックがLMDhのマシンでWECハイパーカー・クラス参戦を開始したのである。

今年のルマンにはLMH、LMDhをあわせて7車種16台のマシンがハイパーカー・クラスに集った。7車種をメーカー/ブランド名で順不同に記すと、トヨタ(2台)、ポルシェ(4台)、フェラーリ(2台)、プジョー(2台)、キャデラック(3台)、グリッケンハウス(2台)、ヴァンウォール(1台)となる。

(*ハイパーカー・クラスのタイヤは全車ミシュラン。グリッケンハウスとヴァンウォール以外はハイブリッド。ポルシェとキャデラック以外はLMH。トヨタとグリッケンハウス以外は昨年のルマンにハイパーカー・クラスから参戦していない。プジョーは昨季からWECハイパーカー・クラスに参戦しているが、途中参戦であり、参戦開始はルマンの後だった)

数が増しただけでなく、中身も濃い面々だ。ルマン総合優勝最多19回を誇るポルシェや、同9回のフェラーリ、同3回のプジョーといった名門ビッグブランド、いわゆる欧州列強の“ルマン帰還”が顕著な傾向となっており、2018年の初勝利から5連覇中のトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing=TGR)との激突が大きな話題になってもいる。

トヨタの5連覇は、レギュレーションとの戦いや高度な技術目標を掲げたなかでの覇権継続であり、自陣内にギリギリまで争うことを許容してエンターテインメント性の維持も考えるなどしていたのだから、「大敵不在」の状況下での5連覇と低く見るべきではない。ただ、大敵が多く帰ってきたなかで連覇を続けられるかどうかは別次元の話ともいえ、真価を問われる2023年大会であることも確かだろう。

◆予選はフェラーリ1-2。トヨタはポルシェを挟む3-5
現地6月7〜8日には予選が実施された。全車参加の予選セッション(7日)と、クラス上位8台が参加してポールポジションを争う「ハイパーポール」というセッション(8日)を経て決定した総合(ハイパーカー・クラス)のポールポジションは#50 フェラーリ499P(A.フオコ / M. モリーナ/ N.ニールセン)。もう1台の499P、#51(A.ピエール・グイディ / J.カラド / A.ジョビナッツィ)が2位に続き、フェラーリは“予選1-2勝利”を果たした。

トヨタGR010 HYBRIDの2台は昨年の優勝トリオが走らせる#8(平川亮 / S.ブエミ / B.ハートレー)が予選3位で、一昨年の優勝トリオ #7(小林可夢偉 / M.コンウェイ / J-M.ロペス)が5位。あいだの4位には#75 ポルシェ963(F.ナッセ / M.ジャミネ / N.タンディ)が入っている。プジョー9X8勢は10位と11位だった。

予選を終えて、#7 トヨタGR010のドライバーでありTGRのチーム代表も兼任する小林可夢偉は、「全力を尽くしましたが、現実的には我々にポールポジションのチャンスはありませんでした。ポールを獲得したフェラーリを祝福します」とコメントしている。

◆可夢偉「決勝も容易な戦いにはならない」
ルマンの直前に“お上”が急遽実施したというBoP(パランス・オブ・パフォーマンス、いわゆる“性能調整”)の変更、それによるネガティブな影響が自陣にあったことを窺わせるような可夢偉の談話冒頭でもあるが、1周のスピードでフェラーリが“魅せる”ことは今季のWEC前半戦(トヨタ3戦全勝)でもあった(開幕戦はフェラーリがポール)。「決勝レースはまったく別物になることもあり得ます」という可夢偉の言葉は説得力をもつ。

ただ可夢偉は、「1周のアタックという点では我々は最速ではなく、決勝も容易な戦いにはならないでしょう」と、決して楽観などしていない。そしてトヨタの6連覇がかかる決勝に照準をあわせ、あらためて決意を示す。「24時間レースで勝つためには、チームスピリット、正しい戦略、そしてミスなく戦うこと、そのすべてが必要です。日曜午後のチェッカーへ向け、ベストを尽くすだけです」。

今年トヨタが勝って6連覇達成となれば、1960〜65年のフェラーリに並ぶ歴代2位タイの記録になり、来年はポルシェのもつ最長記録、7連覇(1981〜87年)への挑戦権を得ることになる。そのタイミングを見計らったかのような“帰還”にもなったフェラーリとポルシェがトヨタとともに予選トップ5を形成、そして迎える決勝である。注目度は一層高まってきた。

欧州列強を相手にトヨタはルマンの覇権を維持できるのか!? 決勝レースは6月10〜11日に開催される。スタートは日本時間10日23時の予定だ。

ポールポジションを獲得した#50 フェラーリ499P。《Photo by Ferrari》 ポール獲得の立役者、#50 フェラーリのアントニオ・フオコ(左)。《Photo by Ferrari》 予選2位の#51 フェラーリ499P。《Photo by Ferrari》 予選3位の#8 トヨタGR010 HYBRID。《Photo by TOYOTA》 #8 トヨタの平川亮。《Photo by TOYOTA》 予選4位の#75 ポルシェ963。《Photo by Porsche》 予選5位の#7 トヨタGR010 HYBRID。《Photo by TOYOTA》 #7 トヨタのコンウェイと可夢偉。《Photo by TOYOTA》 プジョー9X8勢は予選10位と11位(#93は10位)。《Photo by FIA-WEC》