ヒョンデモビリティジャパンが30日、「ヒョンデカスタマーエクスペリエンスセンター横浜」をオープンした。商談、整備、納車その他を行う実店舗として国内最初のメンテナンス拠点となる施設だ。
5月に『アイオニック5』と『ネッソ』の国内販売を発表したヒョンデモビリティジャパンは、そのとき販売はオンラインで、整備は協力整備工場とモバイルサービスをメインに新しい顧客層を取り込む戦略を発表していた。だが、リアル店舗を持たないわけではなく、5月の時点で「カスタマーセンター」設置についても言及していた。
これまでヒョンデのリアル店舗は2月から5月に設置された東京・原宿の「Hyundai House Hrajuku」や同じく東京の丸の内の納車センター「Hyundai Mobility Lounge」(8月末まで営業)が知られていたが、カスタマーセンターは、国内のサービス拠点として常設される店舗施設だ。場所は新幹線の新横浜駅の近く。最寄り駅では市営地下鉄の北新横浜駅となる。車なら第三京浜港北ICから10分ほどの距離。
サービス内容は、車両展示、商談、車検を含む整備、メンテナンス、充電などほぼディーラーとしての機能を有する。2Fにはアイオニック5とネッソをイメージした飲み物が提供されるカフェラウンジとアクセサリーショップが設置される。ショップでステアリングテーブルやキャリー式のトランク、ペット用グッズなどが展示されているが、購入はQRコードを読み込んでオンライン購入となる。ショールーム、ラウンジ、店舗全体は巨大ガラスのパーティションを多用している。これは、整備工場を含めてユーザーにすべてを見てもらうため、透明性の確保のためだという。
国内ディーラーではめずらしい納車スペースもある。納車式の詳細はサプライズにならなくなるとして非公開だったが、ターンテーブルや特殊な照明設備、壁2面の大型LEDビジョンが設置され、成約者がくつろげるカウチもある。
ヒョンデでは、カスタマーエクスペリエンスセンターのことをCXCと呼んでいる。CXCはZEV専用の整備工場として仕立てられている。車検用のライン(シャシーダイナモや光軸測定他)、レーザー式アライメントテスター、EV、FCV用のテスターや整備端末、20インチホイールなど大型タイヤにも対応するチェンジャーなどが確認できた。リフトは全部5基。そのうちひとつはかなり大がかりなものだ。
CXCにはエンジン(内燃機関)を整備する設備や器具は用意されていないが、ZEV車については燃料電池やEV用のバッテリー交換にも対応する。EVなどZEV車の整備はエンジンよりもシンプルになるが、高電圧ラインの取り扱い、高エネルギーのバッテリーの扱いなど別の技能やスキルが必要だ。CXCはそのような技術を協力工場やスタッフにトレーニングする機能も有する。
ヒョンデモビリティジャパンは、「今年はモバイルサービスや協力工場のネットワークづくり、オンライン、オフライン環境の整備、その一環としてCXC横浜の立ち上げを優先させるが、CXCは1拠点で足りるとは思っていない。23年以降もふやしていきたい」としている。
EVの場合、ディーラーの機能で欠かせないのは充電設備だ。CXC横浜にはAC200V 6kWの普通充電機が整備ピット、ショールームなどいくつも設置されていたが、来客用には5基のAC充電ポスト(Hyundai Home Charger)が屋外駐車スペースごとに並ぶ。これらの充電器はオーナー以外にも開放する予定があるとのことだが、運用方法をどうするかを現在検討中。
9月には2基のDC急速充電器の稼働も始まる。現時点では出力など詳細非公開だが、外観は同社が韓国で展開する「E-pit」の筐体によく似ている。800Vタイプの高出力に期待がかかる。プラグはCHAdeMOしかでていない(CCSとのダブルガン方式ではない)が、太目のケーブルと大きなプラグがCHAdeMO 3.0のものにも見える。CHAdeMO 3.0は500kW以上、600Aに対応する(800V出力が可能)。
現在国内の高出力DCチャージャーは、契約価格や規制のハードルが諸外国に比べて厳しい(複雑な)ものになっている。だが、ヒョンデがこれをクリアすれば、欧州プレミアムEVに対するアドバンテージにもなる。今後フィールドに増えてくる50kWh、80kWh級の大容量EVにとって朗報だ。法改正の引き金にもなってほしい。
なお、敷地内にこれらとは別に新電元のCHAdeMO 急速充電器が1台設置されているが、これはヒョンデの研究開発部門が実験やテストのために設置したもので、CXCスタッフや顧客は利用することができない。
ヒョンデの国内常設拠点が横浜にオープン…気になる充電設備は?
2022年07月30日(土) 10時00分