斉藤鉄夫大臣(右から4人目)に要望書を提出する福田弥夫座長《写真提供 日本自動車会議所》

交通事故被害者や自動車業界団体などによる「自動車損害賠償保障制度を考える会」(以下、考える会)は11月22日、自賠責保険料からの積立資金が国の一般会計に繰り入れられたままとなっている問題で、国土交通省の斉藤鉄夫大臣に善処を要望した。

考える会は、事故被害者団体や日本自動車会議所、自動車総連など幅広い関係機関で構成され、2010年に設立されている。自賠責資金が一般会計にプールされている問題は、本来、交通事故被害者支援などのために積み立てられた資金が1994年度から95年度にかけ、1兆1200億円繰り入れられたものだ。

これに対する考える会の活動などによって18年度には一般会計からの繰り戻しが15年ぶりに実現した。その後今年度まで継続され、繰り戻し額は18年度23億円、19年度49億円、20年度40億円、21年度47億円と推移している。しかし、今年度末でもなお6013億円が一般会計にプールされた状態となる。自動車ユーザーの負担による資金でありながら、事故被害者の救済といった本来の目的に十分に使えないという事態が続いているのだ。

考える会は今回の要望で、「22年度予算での繰戻し額の増額と、今後の返済計画(ロードマップ)の提示を強く求める」とするとともに、「繰り入れられている6013億円の全額を可能な限り早期に返済いただきたい」と訴えた。また、年末には国交相と財務相が、この問題で新たな大臣間合意を行う予定であり、「少なくとも合意期間中の繰り戻しの継続と毎年度の目安額を示していただきたい」とも要望した。

国交省での斉藤大臣との会談には、考える会の福田弥夫座長(日本大学危機管理学部学部長)や、会の事務局を務める日本自動車会議所の山岡正博専務理事、事故被害者団体である「全国遷延性意識障害者・家族の会」の桑山雄次代表らが出席した。

要望後、福田座長は報道関係者に「繰り戻しが5年連続となり、繰り戻し額も増額となることを願っている。大臣間の合意では繰り戻しの継続と繰り戻し額の目安を是非示していただきたい」と語った。また、事故被害者支援の充実に向け、政府には「自動車損害賠償保障制度の持続可能性を高めることを考えていただきたい」とも指摘した。

日本自動車会議所が運営・入居する日本自動車会館(東京都港区)《写真撮影 池原照雄》