京王電鉄バス(バスタ新宿)《写真撮影 高木啓》

ダイナミックプライシングとは、需要と供給に即応して製品やサービスの価格が変動する仕組み。ニーズに合わせた価格を設定することが狙いだ。京王電鉄バスではダイナミックプライシングを導入してから、一部路線において月次収益が数%向上したという。

プライシング戦略に関するコンサルティングサービスとSaaSを提供するハルモニア(旧社名:空)は、京王電鉄バスが運営する高速バス運行事業者向け高速バス座席予約システム「SRS」のダイナミックプライシングシステム「MagicPrice」導入事例を公開した(10月20日)。SRSとMagicPriceは2020年12月に連携し、一部路線でのダイナミックプライシングを始めた。

高速バスは時期によって需要が大きく異なる。繁忙期への需要集中による「満席でのお断り」をはじめとした問題があり、解決策のひとつである続行便(臨時増便)も、要員不足やターミナルの発着枠の制限によって設定が困難になっている。運賃変動は、繁忙期や土日祝日に運賃を高くする、というような「カレンダー型」で設定していた。

京王電鉄バスでは、協業の少し前から手作業で運賃を変動させていた。毎回人の目で各路線の状況を確認し、運賃を変動させる作業には時間と労力がかかる。毎日1か月先まで数百便分の販売状況を確認しなければならず、販売状況の変化を見逃してしまうことも多く、適切に機会を捉えた運賃変動があまりできていなかった。

さらに新型コロナウイルス感染症の流行により営業施策が打ちにくい状況下、変動運賃の価格適正化・自動化が急がれた。運賃設定担当者の負担増加や業務の属人性が課題だ。社員のレベニューマネジメントへの理解を深め、データ分析など専門性の高い業務を行なう人材の育成も必要だった。

こういった背景から、データの取り込み・分析・価格決定を高速化するダイナミックプライシングシステム「MagicPrice」とSRSとを連携することにした。限られた便数の中で旅客の満足度向上とバス事業者としての収益確保とを両立するために、需要に応じて運賃を柔軟に変化させる。繁忙期の「満席でのお断り」を減らし、閑散期のおトクな利用を促進することが、結果的により多くの旅客に高速バスを利用してもらえる。

2020年12月17日の導入以来の実績は、京王電鉄バスによると、コロナ禍で全般的に乗車人員が大幅に減少している中で、2021年1〜4月の初期フェーズで「数%」の収益向上効果が出ているという。社内のノウハウの体系化や、過去の予約データ分析に基づいてシステム設定の改善を進め、精度を向上させている。収益向上については、路線や便によっては改善の余地は大きいと考えており、引き続きダイナミックプライシングにトライしていくとする。

京王電鉄バスの高速バス座席予約システム「SRS」にハルモニアのダイナミックプライシングシステム「マジックプライス」を導入《写真提供 ハルモニア》 京王電鉄バスの高速バス座席予約システム「SRS」にハルモニアのダイナミックプライシングシステム「マジックプライス」を導入《写真提供 ハルモニア》 京王電鉄バスの高速バス座席予約システム「SRS」にハルモニアのダイナミックプライシングシステム「マジックプライス」を導入《写真提供 ハルモニア》