ボッシュのドレスデン工場稼働を記念したオープニングセレモニー。参加者が300mmウエハーを持って記念写真《写真提供 ボッシュ》

ボッシュは6月7日、ドイツ・ザクセン州の州都ドレスデンに新たな半導体製造工場をオープンさせ、そのオープニング記念イベントを開催した。式典はオンライン形式で行われ、ボッシュのフォルクマー・デナー会長やメルケル首相など複数の要人も参加する盛大なものとなった。

◆「工場の「AIoT」化によりチップ製造における新基準を打ち立てる」ガナー会長

この半導体工場はシリコンウエハーの製造拠点として立ち上げるもので、まずは電動工具向けのチップ生産を7月よりスタートさせ、自動車メーカー向けチップについても当初予定していた2021年12月を3か月ほど早めた9月から開始する計画だ。ボッシュでは最新の生産技術を導入したことで生産能力の大幅な増加を見込んでおり、これを世界中に広がっている半導体不足の緩和につなげていきたいとしている。

この工場で生産されるのは、3万1000ものチップを切り出せる大口径300mmウエハーで、具体的な生産能力は明らかにはされなかったが、クリーンルームが従来比約2倍となっていることを踏まえれば単純計算で約4倍にまで生産性は向上するものとみられる。これによって、先進運転支援システム(ADAS)や“つながるクルマ”、電動車などの普及によって急拡大する半導体需要に対応していく計画だ。

この工場には同社130年の歴史で最大となる10億ユーロ(約1330億円)が投入されており、その主体となるのが人工知能(AI)を活用した工場の「AIoT」化である。これによって半導体の生産速度や歩留まり向上を目指す。ボッシュのフォルクマー・デナー会長は、「これによってドレスデン工場はインダストリー4.0 の最先端を行くスマートファクトリーとなる」とし、「ボッシュ初となるAIoT 工場によって、チップ製造における新基準を打ち立てる」と宣言した。

◆「新工場はマイクロエレクトロニクス分野における能力を拡大する」メルケル首相

ボッシュが最初に半導体の製造に乗り出したのは1958年のこと。それ以降、半導体の内製化に力を入れており、70年からはロイトリンゲン工場において市販されていない特殊半導体を製造。2010年には 25 億ユーロ超える投資をして200mmウエハの製造にも着手していた。ボッシュは半導体の開発・製造における成長戦略を追求し続けており、デナー会長は、「こうした専門知識こそが、ボッシュによる高品質な各種システムソリューションのカギとなっている」と語った。

中でもドレスデンは、自動車の部品供給会社、サービス関連会社やその他産業の企業、さらに技術的な専門知識を有した大学や研究機関にもアクセスしやすい環境が整っており、そうしたことも新工場建設のきっかけとなったようだ。今回の新工場にはすでに250人が勤務し、今後は700人まで増えていく予定になっている。

オンラインで出席したメルケル首相は、「ボッシュの新しいウエハ製造工場により、マイクロエレクトロニクス分野における我々の能力を拡大するだろう。この分野はほぼすべての将来有望なテクノロジーに通じるものであり、AI アプリケーション、量子コンピューティング、車両の自動化とネットワーク化のための基盤でもある。言うなれば、人の知能と人工知能が IoTとが協力し合い、生産的なパートナーシップを形成しているのだ」と述べ、その中心にボッシュがいると賛辞した。

また、欧州委員会のヴェステアー氏は、「半導体は、最先端イノベーションの起源として、欧州の競争力強化に貢献するだろう」と述べ、ザクセン州のミヒャエル・クレッチマー首相も「新しいウエハ製造工場は欧州、ドイツ、そしてザクセン州にとって喜ばしい存在」とボッシュのドレスデン工場へ期待を寄せた。

この他、このイベントはオンライン形式で行われたが、ゼネラルモーターズのメアリー・バーラCEOや、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOらトップが祝福のビデオメッセージを送るなど、華やかで盛大なものとなっていた。

ドイツ・ドレスデンに建設した半導体新工場《写真提供 ボッシュ》 ドレスデンに建設した半導体新工場の内部《写真提供 ボッシュ》 ドレスデンの半導体工場で製造される直径300mmウエハー《写真提供 ボッシュ》 ボッシュのフォルクマー・デナー会長《写真提供 ボッシュ》 ドイツのメルケル首相 欧州委員会のマルグレーテ・ベステアー氏 ザクセン州のミヒャエル・クレッチマー首相 祝福のビデオメッセージを送ったゼネラルモーターズのメアリー・バーラCEO 祝福のビデオメッセージを送ったNVIDIAのジェンスン・フアンCEO