メルセデスベンツ Sクラス 新型(S500 4MATIC ロング)《写真撮影 宮崎壮人》

歴代モデルではW126が12年と長かったことを除けば、『Sクラス』各世代のライフは世に出て概ね7〜8年。今回の新型も順当に、先代のW222の登場から7年目の昨年9月、オンラインで発表されデビューした。

◆ギラついた印象をおさえたエクステリア


新型W223でまず目がいったのがスタイリングだ。基本のフォルムは先代を踏襲しているかのように見えるが、キツいエッジの立ったキャラクターラインがなくなり、ボディ面もよりなめらかになったことで、全体の表情がより温和になった。今や『Sクラス』のみのグリルは十分なサイズだがそれでも無用な威圧感はまったく感じない。

雰囲気は若々しくスポーティセダンにさえ見えるほどだが、一方でフード先端の“スリー・ポインテッド・スター”のマスコットは、昔ながらのメルセデス・ベンツオーナーには「運転席からこれが見えてこそ」と思えるに違いない。また今どきのクルマだから前後ランプはフルLEDだが、灯体自体はコンパクトにスッキリとまとめられ、いかにもギラついた印象ではないのも好感がもてる。


スッキリといえばドアハンドルも使用時のみポップアップする方式で走行時はボディとツライチながら、万一の際には自動でせり出す仕組みという。

試乗車の「S500 4MATIC ロング」は“ルビーライトレッド”と呼ぶ、陽射しの具合で深い赤が浮かび上がる、何とも上品で新しいスタイルによく似合う色だった。そのためかフォーマルな黒やシルバー、あるいは白とも一線を画すパーソナルな趣が心地よく、たとえロングボディでも「自分でも気持ちよく走らせてみたい」と思わせられるムードをたたえていた。

◆今どきのインターフェースに一新


他方インテリアでは、運転席まわりが今どきのインターフェースに一新された点がトピック。ついに『Sクラス』もセンターコンソール上部に12.8インチの有機ELメディアディスプレイを備えるに至り、ここは指先でタッチしながら操作できるほか、ジェスチャーや、当然ながらMBUXの音声操作も可能だ。

最新のiPhoneの画面に以前のiPodのクリックホイールを描写して実際に操作可能にしたアプリが一瞬あったが、いっそ昔のW116のダイヤル&スライドスイッチのパネルを再現して、手で捻るジェスチャーで操作できるようにしてはどうか、などと思ったりして。要はもはや自動化の時代ということなのだろうが……。

ちなみに指紋認証(標準)、顔認証(オプション)の生体認証システムが設定されている。

◆もう快適というほかない時間が過ごせる


ところで試乗車は“ロング”で、ホイールベースの3215mmは標準ボディより110mm長く、従来のロングに対しても50mm伸ばされた。そして後席の居住性が極上なのは言うまでもなく、たっぷりとしたサイズのシートを好みのポジションに合わせ、備え付けのやわらかな“枕”に頭を委ねるように座ると、足元のみならず頭上の空間もタップリとしており、もう快適というほかない時間が過ごせる。

特殊吸音材を使っているというタイヤ(20インチの前後異サイズ)が無粋なノイズを立てないうえ、ドアには合わせガラスが採用されるなどし、耳元がザワつく気配は皆無。また走行中のフラットな乗り心地は、コーナリング中の左右のふらつきのなさも含め、きわめて説得力のある出来だと思う。近年のこのクラスのお約束で、後席からさまざまな操作が可能がタブレットを備える。

◆ドライバーズカーとしても極上の仕上がり


書ききれないことだらけの新型『Sクラス』の走りについて、何か試乗記的な評価を書くのは無粋に思えた。

搭載エンジンはひところは8リットルのV12だったりしたが、排気量では今やちょうどその半分、3リットルのV6ターボ(435ps/53.0kgf・m)に9速ATの組み合わせだが、いかなる場面でも自然なパワーフィールと反応を示してくれるところがいい。いささかも神経が逆撫でされない、ドライバーズカーとしても極上の仕上がりぶりに思える。

仕様により2210〜2290kgの車重をまったく意識させないスムースで自然な走りを堪能させてくれる。なお搭載機能のひとつ、リヤ・アクスルステアリングは約60km/h以下で後輪を前輪に対して最大4.5度ステアするというものだが、この機能の威力は絶大。路上でUターンが必要になった場合などに、まるで『Cクラス』並の身軽さでクルリと転回してみせる。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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