アウトモビリ・ランボルギーニは昨年9月1日よりアウトモビリ・ランボルギーニ・ジャパンのゼネラルマネージャー(Head of Japan)としてダビデ・スフレコラ氏が就任したことを発表。コロナ禍の影響で日本着任が遅れたが、先般無事に来日し、インタビューすることが出来た。
◆憧れのランボルギーニ
----:スフレコラさんは、2016年にランボルギーニに入社し、シンガポールのアジア太平洋地区オフィスで、東南アジアのエリアマネージャーを担当していたとのことですが、そもそもなぜランボルギーニを選んだのですか。
アウトモビリ・ランボルギーニ・ジャパンゼネラルマネージャー(Head of Japan)のダビデ・スフレコラ氏(以下敬称略):ランボルギーニは小さい頃からの憧れだったのです。
スーパースポーツカーが大好きで、憧れのカウンタックのポスターを壁に飾っていたくらいでした。なぜカウンタックかと思われるかもしれませんが、僕ら世代のアイコン的な存在ですし、ドリームカーと呼ばれるようなクルマです。このクルマが初めて世に出た時、なんて未来的なクルマなんだと驚いたと思いますし、50年経ったいま見てもやはり未来的な格好良いクルマですよね。そういうカウンタックがすごく好きだったのです。そういうスーパースポーツカーに対する情熱が常にありました。
因みに2021年はカウンタック誕生50周年ということで、ランボルギーニにとってもとても大切な年ですが、私個人にとってもすごく特別な1年です。盛大にお祝いしようといまいろいろとプランを立てているところです。
話を戻しましょう。クルマに関する方面に少し能力があったのかもしれませんが、自動車業界に入ることが出来たこともラッキーでした。そして少しずつ少しずつランボルギーニに近づいていって、最終的にランボルギーニたどり着いたわけです。
日本に着任する前はシンガポールで仕事をしていましたが、そこでも本当に良い体験をさせてもらいました。担当だったマーケットはシンガポールに加えて、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国で、非常に元気があって多様性のあるマーケットです。
当時は発展している最中だったのでとても楽しく仕事をすることが出来たのですが、やはり日本にずっと来たいという思いがあったので、今回こうやって日本に来ることが出来て本当にラッキーだったと思っています。
◆ランボルギーニと日本は親和性が高い
----:日本のゼネラルマネージャーに決まった時、最初にどのような気持ちになりましたか。
スフレコラ:とてもエキサイティングでとても嬉しかったですね。日本にはそれまでも憧れていたのですが、ますます行きたくなって本当に嬉しく思いました。
日本でランボルギーニの仕事をするというのはめったにないチャンスです。ランボルギーニと日本は親和性が高いと思っています。その理由ですが、我々の仕事は、ランボルギーニの完璧な商品を、日本のお客様、つまりは完璧を求めるお客様にお届けするという仕事ですから、そういう面での親和性が高いと考えているのです。
なぜ日本のお客様がランボルギーニにとって完璧か。それは、日本人のお客様は洗練されていて、そしてスーパースポーツカーに対する造詣が深い。もちろん歴史(輸入されている期間)も長いですし、ヘリテージカーが日本にたくさんあります。そういったことを踏まえると、他のアジア諸国とは全くレベルが違っているのです。
ですから、日本人のヘリテージを重んじるところ、それからものづくりに対してのこだわり、特に細部にまできめ細かくこだわりがあり、そしてクラフトマンシップやデザインといったものを重んじるところがランボルギーニと共通しており、親和性が高いと感じるのです。
◆洗練された日本ユーザーに向けてさらなるCS向上を
----:これまで担当していた東南アジアはランボルギーニにとってまだまだ成長する市場です。一方で日本は成熟した市場でといえるでしょう。そこに大きな差があると思いますが、そこを踏まえて日本市場を今後どのように導いていきたいと考えていますか。
スフレコラ:そのとおりで日本はアジアの他の市場とは全く違っています。成熟しているというのもそうですし、とにかくお客様の洗練度がすごく高いのです。そういった日本の市場でこれからどうしていくかというと、私たちの一番大事なミッションにフォーカスすることだと思っています。それは、他にはない高いクオリティとサービスを提供することです。
何よりも優先しなければいけないのはお客様満足度、CSです。お客様に満足してもらって、次にお客様にしっかりブランドにエンゲージしてもらうことが大事なのです。そのためにはお客様との対話を絶やしてはいけません。お客様がランボルギーニと触れる方法としては、我々アウトモビリ・ランボルギーニとお客様という関係とともに、全国にある我々の正規ディーラーがお客様に優れた商品や優れたサービスを提供することもあります。そのためのお手伝いをすることも我々の仕事なのです。
先ほどいったCSを上げるために、お客様とのエンゲージを高めるためにやらなければいけないこととして、ひとつは優れた商品を提供すること。次に購入した後もお客様にアフターセールスできめ細かいケアをすること。そして、エクスペリエンス、あるいはライフスタイルといってもいいのですが、そういったものだと思います。つまりお客様が日々の生活の中でランボルギーニのクルマを楽しんでもらえるようなプラットフォームを提供することなのです。これがCS向上のための3本の柱です。
では、エクスペリエンス、ライフスタイルのプラットフォームを提供するというのはどういうことか。
例えばイベントを開催する他、東京六本木に開設したザ・ラウンジ・東京もそのひとつです。実際にクルマを購入してもらった時に、ランボルギーニとの体験、エクスペリエンスはまさにここから始まります。ここのスタジオでお客様の好きな仕様を選んでもらうというところからランボルギーニのエクスペリエンスは始まるのです。
他にもイベントや、サーキットの走行会もそうですし、ランボルギーニデイ、ランボルギーニナイトというイベントもあります。また、ジーロと呼んでいるクルマで全国をツーリングするというような取り組みもありますので、そういったランボルギーニの商品やサービスを楽しんでもらえるようなプラットフォームをお客様にこちらから提供するということなのです。
◆まずは安定させること
----:ランボルギーニは昨年7430台を生産し、日本では631台を販売しました。この台数自体を多いと考えるか、あるいは少ないと考えますか。また、日本市場ではまだまだ伸びしろはあるのでしょうか。
スフレコラ:いまは世界的な状況からすると、成長にこだわるというのは正しいことではないと思っていますし、今年は何台伸ばすなどのコミットメントをするつもりはありません。いま最優先でやるべきことは、安定させることです。それと幸いにもお客様の満足度は高いレベルで推移していますので、それをキープすること。それがいまやるべきことです。
このコロナ禍の中で世界の状況は目まぐるしく変わっていますので、当然我々の仕事のやり方も変えざるを得ません。従って、こういった時代だからこそ成長にフォーカスを置くことは正しくないのです。お客様との接し方も、これから変えていかなければいけませんし、お客様とのエンゲージの仕方もこれから変えていかなければいけません。いまはとにかく安定させることにフォーカスを置きたいと思っています。ここで一旦安定させて、きちんとした新しい土台を築き、それがもし上手く行けば、過去数年間ずっと成長を続けて来ましたので、機が熟した時にもう一度成長軌道に乗せることが出来ると思っています。
----:いまお話のあった仕事のやり方を変えるとはどういうことですか。
スフレコラ:お客様との接し方も去年はかなり変わりました。以前は大規模なイベントをやっていたのですが、いまはザ・ラウンジ・東京などにお招きして少人数、もしくはお客様と一対一で接するというやり方をしており、またデジタルツールもいろいろ活用しています。去年はインスタグラムを使った活動もやりましたが、メディアやお客様、ファンからも非常に高い評価をいただきました。
最近では『ウラカンRWDスパイダー』をローンチした時には、VRで行いました。自分のスマホを使ってVRで自分のリビングルームにクルマを映し出して、チェック出来るという取り組みもしました。また『ウラカンSTO』をローンチした時は日本では大きなイベントが出来なかったので、ザ・ラウンジ・東京で少人数のお客様をお招きして開催しましたが、グローバルでのローンチはVRを使っています。
こういった時期ではありますが、あくまでもお客様とのエンゲージを優先させたいと考えているのです。その結果として、こういった困難な時期にお客様の満足度を上手く高くキープすることが出来れば、機が熟した時に自然にまた成長軌道に乗ることが出来るでしょうし、ランボルギーニファミリーに入りたいと思ってもらえるお客様もこれからももっと増えることでしょう。
◆ヘリテージカーへの取り組みは拡大させる
----:現在日本においてランボルギーニのヘリテージカーが多く存在しているのはスフレコラさんもご存じのとおりです。今後、こういったクルマたちに対して何らかのメンテナンスやフォローは考えていますか。
スフレコラ:ヘリテージカーへの取り込みはこれからもどんどん拡充していくつもりです。これはグローバルでも同様で、我々のポロストリコのプログラムはまさにヘリテージカーにフォーカスをあてたものです。新しいプログラムとしてヘリテージカーの認証制度や、メンテナンスを施す、またレストアすることも導入しました。こういった分野はこれからも拡大していきたいと思っています。
商品に関わる点以外のもうひとつ、どういうお客様がいまヘリテージカーに乗っているのかをこれからはもっと追跡していこうと考えています。そのお客様にコンタクトして、そのお客様に合わせた商品をこちらから提案したり、その後は、願わくばランボルギーニファミリーに戻ってきてもらい、そこでまた対話を通じてエンゲージしていくことも十分に出来ますので、ヘリテージカーを使ったそういった活動もこれからはやっていきたいと考えています。
実際に一昨年はランボルギーニデイというイベントを行っており、これはヘリテージカーをお客様に乗って来てもらい、盛大にお祝いするというものでした。ヘリテージカーに関わる活動はこれからももっともっと力を入れてやっていきたいですね。
----:今後としては各ディーラーでメンテナンスも出来るようになると良いと思います。
スフレコラ:まさにそこに力を入れていきたいと思っているところです。実際に我々の正規ディーラーはそういったクルマの対応が出来るコンピテンスもテクニカルスキルも持ち合わせていますので、後はどうやってそういったお客様を呼び込んでショールームに来てもらい、エンゲージメントするかというところです。
日本でのCS向上はお客様とのエンゲージがキー…ランボルギーニジャパン ゼネラルマネージャー[インタビュー]
2021年03月01日(月) 11時45分