リチウム空気電池の模式図《画像提供 ソフトバンク》

物質・材料研究機構(NIMS)、科学技術振興機構(JST)、ソフトバンクは12月2日、リチウム空気電池の早期実用化につながる研究成果を発表した。

3者はエネルギー密度の高いリチウム空気電池のサイクル寿命が、電解液量と面積容量の比に支配されていることを解明した。反応に使われる酸素に加え、副反応に伴って生成される物質の定量的な測定法を開発し、電池反応全体での反応物、生成物の収支を精密に評価できるようになり、サイクル寿命の主要因の決定に成功した。

リチウム空気電池は、理論エネルギー密度が現状のリチウムイオン電池の数倍に達する「究極の二次電池」とされており、軽くて容量が大きいことから、ドローンや電気自動車、家庭用蓄電システムまで幅広い分野への応用が期待されている。サイクル寿命を延ばすことが重要な課題だった。

研究チームは、反応に使用する酸素や、充放電に伴って発生する気体、揮発性物質を定量的に評価する手法を開発したことで、電解液量を一定のまま面積容量を減らすと、サイクル寿命が延びることが明らかになった。一方で、面積容量が減ると電池のエネルギー密度は下がるため、実用的なリチウム空気電池の開発では「電解液量と面積容量の比」のパラメータを意識した電池設計、材料評価が重要となる。

今後、今回の研究で得られた知見をふまえ、リチウム空気電池内部の副反応抑制手法を確立して早期実用化につなげる。

リチウム空気電池内部の反応を評価する分析システム《画像提供 ソフトバンク》