ホンダe アドバンス《写真撮影 中野英幸》

“街なかベスト”がコンセプトだそう。“○○ベスト”の言い回しは、かつて活きのいいホンダ車が次々と登場していた頃のホンダのプレゼンでよく聞いたフレーズだ。ならば『ホンダe』も“(何かを割り切ってでも)何かに特化したホンダらしいクルマ”か!?と乗る前から期待が高まった。

◆不思議なボディサイズ感は近未来を先取りしたもの?


実車でまず印象的なのは、不思議なボディサイズ感だということ。たとえば現行『フィット』と較べると、ホイールベースが同数値の2530mmで、全長は100mm短い3895mm、全幅は55mm幅広く1750mm。全高の1510mmはほぼ同等(『フィット』のもっとも低いグレードは1515mm)。

ところがアウトサイドミラーがない(サイド/センターカメラミラーシステム。アドバンスに設定)せいか、ポツンと1台で停っていると、大きさの実感が掴みにくい。コンパクトな部類であることは確かだが……。

プロポーション自体はバランスのとれた2BOXカーのそれだ。その上でドアハンドルも埋め込み・展開式にした、従来の乗用車の常識的だったディテールが徹底的に廃されたルックスは、クリーン、モダンを通り越し、なるほど近未来のモビリティ像を先取りしたかのよう。

EVを象徴する充電/給電ポートのリッドはガラス製で、フード前端に備え、立ったままのラクな姿勢で充電ガンが差し込めるようになっている。試乗車のタイヤはミシュランPILOT SPORT 4(スペイン製)でサイズは225/45 ZR17 94Yだった。

◆まるでテーブルの上にPCのモニターが並べられたよう


インテリアも実にあっさりとシンプルな雰囲気。とはいえ前席に座れば、正面のメータースクリーン(8.8インチ)とその左に水平配置で並ぶワイドスクリーン(12.3インチ×2面)、さらに左右にはサイドカメラの画像を映し出すディスプレー(6インチ)がある。“木調”のインパネ上面がフラットなこともあり、まるでテーブルの上にPCのモニターが並べられたようなムードで、今どきなら人によっては「ここでリモート会議ができるかも」と思ったりするのでは?

表示、機能についての説明のすべてはここでは書ききれないが、“2画面”については、表示の左右入れ替えや表示内容の選択など、自在な使い方ができそうだし、アプリをダウンロードして水槽の映像(画面をタッチすれば魚に餌があげられる!)に癒されたりと、新しい使い勝手が楽しめそうなことは確か。


後席スペースは広大という訳ではなく、ほどほど実用的といった感じ。ドアトリム部にシート表皮と共布のアームレスト(前席ドアも同様)が備わっていたり、天井に家のダウンライト風の4灯のLED室内等が備わっていたりと、質感にはこだわりがある。前席カップホルダー引き出し用の取っ手は、型モノではなく、B&OのBluetoothスピーカーのような柔らかなベルト状だ。

「アドバンス」に標準の、アウトサイドカメラが後方の景色を捉えるいわば“ミラーレスのサイドミラー”は、6インチモニターに映し出される画像が精細で画角も自然だし、カメラの性能に因るのだろうが、昼間トンネルに入っても感度と色バランスの補正は即座に行われるなど見やすく、短時間の試乗でもスグに慣れそうな感触をもった。



◆走りの質、仕上がりにさまざまなこだわりが感じられる


さて、走りである。試乗車は車検証上で重量は1540kg(前:770/後ろ770kg)と、前後重量配分は50:50。車両レイアウトはRRで、リヤにはV6の3リッターエンジン相当というe:HEV駆動モーターおよびギヤユニット(とPCU)を搭載する。カタログのスペックは154ps/32.1kgf・mというものだが、アクセル操作、走行モード次第で必要“十二分”な加速が得られ、極端過ぎない減速Gのワンペダル操作も馴染みやすい。

加減速時のフラット感も上々。またボディのコンパクトさと適正な重量配分のおかげで、街中の交差点を曲がるような場面もスッとクルマが向きを変えてくれる。乗り味もなめらかなフラットライドで、音と振動も抑え込まれている。

4.3mの最小回転半径は、片側1車線の道路でもUターンが可能なほどだ。EVとしての実際の日々の使い勝手は長期間の確認が必要な部分だが、タウンユース主体の場合、扱いやすく、何よりこれまでの同セグメントのEVの中では、走りの質、仕上がりにもさまざまなこだわりが感じられる。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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