車載モータのシステム領域別世界市場予測《画像:矢野経済研究所》

矢野経済研究所は、車載モーター世界市場の調査を実施、2030年には2018年比74.9%増の約56億6300万個に拡大すると予測した。

電気自動車(EV)をはじめとするxEV(電動車)はもちろん、内燃機関車(ICE)でもパワートレイン、シャシ、ボディ領域それぞれで電動化が進んでいる。部品の電動化に伴い、急速に搭載数を増加させているのがモーターだ。2018年の車載モータ世界市場は、新車販売台数ベースで前年比2.7%増の約32億3700万個と推計する。

一方、世界の自動車販売台数は、米中貿易戦争や英国のEU離脱など貿易環境の悪化を背景に、消費マインドが押し下げられており、2018年、2019年ともにマイナス成長となった。2020年も、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的流行から下落が進むとみられ、自動車販売台数の減少が車載モータの需要にも大きな影響を与える見込みだ。クルマの電動化は世界的なトレンドとなっていることから、今後もモータの搭載数は増加するものの、アフターコロナの世界では従来よりも鈍化した成長となる見通しとなっている。

エンジンに代わり駆動する主機モーターとインバータ、減速機を一体化した電動駆動システムは「Eアクスル」と呼ばれ、一体化による体積削減や組立工数削減による低コスト化と効率向上が期待されている。

Eアクスルはモーター、インバータ等の配置を平行に配置する「平行軸型」と、同一直線上に配置した「同軸型」に分けられる。平行軸型は同軸型よりもコストが安く、幅を短くできる利点を持つ。一方、同軸型は中空モーターによるダブルシャフトとなるため、構造が複雑となりコストがかかるが、ユニット幅の短縮化と背丈が低くでき、FRにも適応しやすくなる。黎明期にあるEアクスルは、競争力の高さや、多くのxEVがFFであることから、低コストの平行軸型が主流となっている。但し、OEMからは前後長を短くする要望も強いことから、同軸型もいずれ市場投入が増加する見込みだ。

また出力帯に目を向けると、現行のEアクスル第一世代品でニーズが高いのは、馬力換算で約200馬力の150kW級製品。ガソリンエンジンでいえば3.0/2.0リットルターボと同等で、先進国市場にて最もボリュームが狙えるC/Dセグメント向けだ。今後は、C/Dセグメント向けの150kW級以外に、軽自動車やAセグメント向けに50kW級、高級車のEセグメント向けで200kW級と3つの出力帯に、Eアクスルのニーズが特に集中していくとみられる。

今後の展望については、xEVが本格的に普及をはじめる時期を2025〜2030年と考え、xEVの世界販売台数を2030年で1787万台と想定した場合、クルマ1台あたりの車載モータ搭載数の増加も踏まえ、2030年の車載モーター世界市場は約56億個規模(新車販売台数ベース)まで拡大すると予測する。