日産自動車、内田誠社長兼CEO(中央)《写真提供 日産自動車》

気になるニュース・気になる内幕。今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析する新聞ウォッチ。…………

インドネシアやスペインの工場閉鎖に伴う減損処理の「引当金」などを計上したとはいえ、瀕死状態だった20年前に逆戻りしたほどの巨額赤字にはびっくりする。日産自動車が発表した2020年3月期連結決算は、純損益が6712億円の赤字。最終赤字はリーマン・ショックのあった2009年3月期以来11年ぶり。経営再建のためカルロス・ゴーン前会長が仏ルノーから送り込まれて「リバイバルプラン」を掲げ、村山工場の閉鎖など大規模リストラに踏み切った2000年3月期の6843億円に迫る大きな赤字額だ。

きょうの読売が1面トップで「日産6712億円最終赤字、販売不振コロナ拍車」と大きく報じたほか、関連記事を総合面で「日産脱ゴーン急ぐ、拡大路線を転換、欧州工場閉鎖」。さらに、経済面でも「コロナ禍の車明暗」「日産『失敗認め成長軌道に』」などと取り上げており、まるで自動車専門紙のような紙面構成だ。

この日は、決算と同時に2023年度までの4カ年経営計画も公表したことから、各紙も1面や経済面で詳しく伝えている。読売以外の見出しを比べてみると、朝日は「『ゴーン路線』引きずり窮地、販売低迷止まらず20年ぶり巨額赤字」。小見出しには「リストラ立て直しのカギ」「V字回復見通せず」。

一方、毎日は「日産、拡大路線『失敗』、人員削減規模公表せず」、産経は「日産反攻にコロナの壁、12車種投入計画体力に課題」。さらに、日経は「日産、改革遅れコロナ直撃」。内田誠社長の一問一答では「失敗認め、選択と集中徹底」,「拡大戦略から転換」としている。

死に体だった20年前の改革との大きな違いは、「コストカッター」の異名をとったゴーン被告のような功罪相半ばする凄腕のカリスマ経営者ではなく、「経験豊かな人材こそが日産の強み」などと“人間尊重”を経営理念とする誠実なタイプの内田社長を中心に再建に取り組むことになる。業界を取り巻く環境も様変わりだが、覚悟を決めて一切の妥協なく構造改革を断行できるかどうか。

2020年5月29日付

●日産6712億円最終赤字、販売不振コロナ拍車、3月期11年ぶり(読売・1面)

●北九州新たに21人感染(読売・1面)

●コロナ禍の車明暗、原価改善効果トヨタ増益、武漢工場停止ホンダ減益(読売・11面)

●車世界生産8社61%減、4月(読売・11面)

●737MAXの生産を再開、ボーイング(朝日・6面)

●トヨタ世界生産半減、4月、北米など操業全面停止(産経・9面)

●旅行大手来月店舗再開、JTB来店予約制、近ツリリモート窓口(東京・6面)

●NTT、在宅勤務5割継続、グループ280社(日経・1面)

●テスラ、北米で主力車一斉値下げ(日経・11面)

日産自動車、内田誠社長兼CEO(中央)《写真提供 日産自動車》 日産自動車、決算会見《写真提供 日産自動車》