アストンマーティン・ヴァルハラ の開発プロトタイプ《photo by Aston Martin》

アストンマーティンは3月24日、2022年に発売予定の新型ミッドシップハイブリッドハイパーカーの『ヴァルハラ』(Aston Martin VALHALLA)に搭載する新開発V6エンジンを発表した。

ヴァルハラとは、北欧の神話において、9の王国のひとつ、「アスガルド」の壮大な館に由来している。アストンマーティンは、車名に「V」を冠するのが伝統となっており、ヴァルハラにもこの伝統が受け継がれた。

ヴァルハラは、アストンマーティンのハイパーカー、『ヴァルキリー』と同じく、レッドブル・アドバンスドテクノロジーズ社と共同開発される。ヴァルハラは、軽量構造ボディを備え、ガソリンターボエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドパワートレインを搭載する。

また、公道走行可能な車としては最高レベルのダウンフォースを発生するエアロダイナミクス性能、アクティブサスペンションシステム、ドライバーコントロールシステムを採用する。アストンマーティンによると、公道とサーキットの両方で、ハイパーカートップレベルのダイナミクスを追求するという。

◆新開発の3.0リットルV6ターボをハイブリッド化

アストンマーティンは2022年から、このヴァルハラをはじめ、新型ミッドエンジンスポーツカー向けに、自社設計のV6エンジンを搭載する。エンジンのコードネームは「TM01」で、1950〜1960年代のアストンマーティンの著名エンジニア、Tadek Marek氏を称える意味が込められた。

新開発のV型6気筒ガソリンエンジンは、排気量が3.0リットルで、ターボで加給される。このパワートレインは電動化される。アストンマーティンによると、2022年の発売時に、クラスで最も強力なスペックを備えた新開発のハイブリッドシステムを組み合わせるという。ハイブリッドパワートレインの最終的なパワーとトルクの数値は、搭載されるモデルの特性によって決定される。

アストンマーティンブランド初のミッドエンジンハイパーカーのヴァルキリーに続いて、多くの重要な技術がこのプロジェクトに導入される。V6エンジンには、「ホットV」と呼ばれる構造が採用された。このコンパクトV6エンジンの重量は、200kg以下に抑えられる。

V6エンジンは、可能な限り低重心とし、ドライサンプシステムが装備される。これにより、高速コーナリング中でも優れた潤滑性能を発揮する。また、このエンジンは、将来のユーロ7の排出ガス基準をすべて満たすように設計されている。

この新しいパワーユニットには、「ネクセル」(Nexce)と呼ばれるシーリングオイルシステムが採用される。このオイルカートリッジは、90秒以内に交換することが可能で、交換されたオイルは、その後精製されて再利用される。このシステムは、サーキット専用車のアストンマーティン『バルカン』に初めて搭載され、その性能と耐久性をニュルブルクリンク24時間レースなどで証明してきた。ヴァルハラは、ネクセルシステムを搭載した公道走行可能な世界初の市販車になるという。

◆エアロダイナミクスに最先端の航空宇宙技術を採用

ヴァルハラは、基本的なスタイリングとエアロダイナミクスを、アストンマーティンヴァルキリーと共有する。特長的なフロントバンパーと大型のディフューザーを備え、フロア下を流れるエアから強力なダウンフォースを生み出す。さらに、ヴァルハラは、次世代航空機の翼全体を滑らかに変形させながら飛行する技術、「モーフィングテクノロジー」を応用している。

「FlexFoil」と呼ばれるこの技術は、広範囲に及ぶ性能や音響飛行試験を通じて、NASA(米航空宇宙局)によって検証されている。アストンマーティンは、この最先端の航空宇宙技術を自動車業界で初めて採用するメーカーになるという。

◆スマホを利用したインフォテインメントシステム

ヴァルハラは、前ヒンジで斜め上へ開くレーシングカーの「LMP1」スタイルのドアを備える。運転席と助手席の間隔を広げるために、センターコンソールの幅が拡げられ、ラゲッジスペースはシート後方のフロアからアクセスできる。コックピットは、運転に集中できるよう、大胆で新しいデザインと素材を採用する。「アペックス・エルゴノミクス」と呼ばれるこのコックピットは、ドライバーの背中、ステアリングホイールとペダル類の中心が、完全に整列している。ステアリングコラムに取り付けられたディスプレイは、ステアリングホイールのリムによって遮られることのない非常に優れた視認性を実現した。インフォテインメントシステムは、スマートフォンを利用する。

ヴァルハラでは、アストンマーティンが「スペースクラフト」と呼ぶ宇宙時代のテクノロジーと伝統工芸の融合を目指す。これによって、ウッドやレザーなどを使用しなくても、軽量な構造や先進的なデザイン、3Dプリント技術を適用することで、高い価値を備えたインテリアを可能にした。たとえば、3Dプリンターによって製造されたセンターコンソールは、機能スイッチを内蔵しながらも、重量を50%も削減することに成功している。

また、日常走行にも適した室内空間や荷物スペースも持つように設計される。世界のすべての市場で型式認証を取得可能で、左ハンドルと右ハンドルの両タイプが用意される。なおヴァルハラは、クーペボディを世界限定500台で生産し、2022年に発売する計画だ。

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