決勝2位となり、GT500ドライバーズチャンピオンに輝いた大嶋和也(右)と山下健太(左)。《撮影 益田和久》

2019年SUPER GT最終戦は3日、ツインリンクもてぎで決勝日を迎え、53周、250kmの決勝レースを実施。GT500クラスではレクサス勢のWAKO'S 4CR LC500を駆る大嶋和也と山下健太のコンビが決勝2位に入り、今季ドライバーズチャンピオンの座に輝いた。

決勝日も、もてぎはドライコンディション。1台がマシントラブル発生で出走できなくなり、GT500クラスは14台での今季最終戦決勝ということになった。13時30分過ぎ、ローリングスタートで最終決戦の幕が上がる。

GT500クラスのドライバーズチャンピオン争いは、レクサス勢による一騎打ち。ランキング首位の#6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也&山下健太/ブリヂストン=BS)は決勝2位以上で自力戴冠となる(#6は予選2位)。追いかける#37 KeePer TOM'S LC500(平川亮&N. キャシディ/BS)は最低限4位が必要で、勝った場合でもライバル#6の3位以下が戴冠条件だ(#37は予選4位)。

オープニングラップ、ポイントリーダー #6 LC600の大嶋は順位を5番手まで下げてしまう。スタートに向けてのタイヤのウォームアップが完璧とはいかなかったためのようだが、なんとか3ポジションダウンで食い止め、その後は次第に追い上げへと転じていく。そして#6 大嶋が3番手に上がった19周目、2番手を走っていたタイトル争い対抗馬の#37 LC500がルーティンのピットストップへ。#37はキャシディから平川に代わってコース復帰する。

翌20周目にはポール発進からトップを守っていた#36 au TOM'S LC500(中嶋一貴&関口雄飛/BS)がピットインして中嶋から関口へ。#6 LC500も20周目にピットに入り、大嶋から山下へとバトンタッチした。

ピットアウト後も3台のレクサスLC500の位置関係は#36〜#37〜#6の順で変わらず。その後、他のマシンもルーティンピットストップを終えた段階で3台は名実とも1-2-3ということになるのだが、これは#36と#37が同じTOM'Sチーム勢であることを考えると、#37と#6のドライバーズチャンピオン争いにおいて実に微妙な状況ではあった。

30周が近づく頃、トップ3は接近する。そしてGT300クラスも入り混じる攻防のなかで、#37 平川が#36 関口の前に出て先頭に立つ。この局面、チームメイトだからチャンピオン争いに配慮して譲った、というようには見えない熱い戦いだった。それはさておき、このままの順位(#37〜#36〜#6)で1-2-3決着すれば、ドライバーズチャンピオンは#37が逆転で手中にする形勢に。

しかし、このレースにはさらに熱いバトルシーンが待っていた。2位に上がらない限りチャンピオンになれない状況となった#6 山下だが、彼はあきらめずに#36 関口を追っていく。そして38周目には大格闘戦へと持ち込んだ。コース最終セクションでは2台揃ってコースアウトする顛末もあった並走バトルを制して、#6 山下は2位へと上がる。2位は#6にとって自力戴冠ラインだが、そういう話とは別次元で、まさしく“自力で冠を戴く”という意味での自力戴冠圏到達だった。

レースはそのまま#37 LC500が優勝。そして2位でチェッカーを受けた#6 LC500が2019年GT500ドライバーズチャンピオンの座に輝いたのであった。

2019年GT500チャンピオン 大嶋和也のコメント
「とにかく、ホッとしています。GT500に参戦して(自身)11年目、ついにチャンピオンを獲れました。結果が出ない時期もあったなか、僕をエースとして走らせてくれてきたチーム(チームルマン)に感謝しています。ケンタ(山下)も本当にいい仕事をしてくれました。37号車は手強かったですけど、みんなで力をあわせてチャンピオンを獲れて、本当に良かったです」

2019年GT500チャンピオン 山下健太のコメント
「厳しい展開でした。でも、36号車を抜かないとチャンピオンになれないことは分かっていましたし、関口選手のブロックがうまいことも分かっていましたけど、退けないし、退くつもりもなかったです。あそこで(仕掛けて)抜かないと、(そのあとでは)抜けなかったと思いますし、僕もホッとしています。大嶋選手と監督やエンジニア、チームのみんなに感謝です」

大嶋と山下はともに自身初のGT500王座獲得。ふたりとも全日本F3チャンピオン経験者で、大嶋は2007年、山下は2016年の覇者である。今季はベテラン大嶋が新進気鋭・山下のスピードを活かす戦い方をシーズン中盤にチームとして確立し、第4〜5戦の2連勝で主導権を握って、最終戦で戴冠を決めた。

1987年生まれ、現在32歳の大嶋和也は2009年からGT500を主戦場としており、チームルマンには2011年から所属。やがてエースとなり、脇阪寿一監督体制になった2016年以降は同年と翌年にタイトル争いを演じたが、戴冠は叶わなかった。悲願のGT500王座ゲットで、大嶋は2007年のGT300クラス王座とあわせ、両クラスのチャンピオンタイトル獲得を達成している。

山下健太は1995年生まれの現在24歳。GT500には昨季からのフル参戦で、2年目の今季、チームルマンに移籍してチャンピオンとなった。トヨタのWEC(世界耐久選手権)における“若手育成選手”ともなっており、2019/2020シーズンのWECにLMP2クラスで参戦中。どうやら2020年はそちらが活動の中心になるらしく、SUPER GTへのフル参戦は今季が当面最後となる模様だ。やはり並行参戦中のスーパーフォーミュラがどうなるかも気になるところだが、いずれにせよ、世界戦線での山下の飛躍に期待したい。

チームルマンの監督として4年目の脇阪寿一監督、現役として3度のGT500王座戴冠を果たした実績を誇る“ミスターSUPER GT”にとっても、監督として初のGT500王者輩出となった。ドライバーふたりはもちろん、「今日はチームのスタッフたちを褒めてあげたいと思います」と笑顔を見せた。チームルマンによるGT500ドライバーズチャンピオン輩出は、脇阪監督が自身初王座を獲得した2002年以来17年ぶり。

最終戦のレース結果はレクサスの1-2-3-4となり、3位は#36 LC500、4位は#38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路&石浦宏明/BS)だった。ノーハンデの最終戦、やはり今年はレクサスの年、というシーズン戦況を象徴する決勝リザルトとなっている。

ホンダ勢では#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀&伊沢拓也/BS)が好走、#36 LC500と#6 LC500が2番手を争っている頃にはその後ろの4番手につける場面もあったが、マシントラブルで長期ピットインを強いられ、最終結果13位。ホンダ勢最上位は5位の#17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大&B. バゲット/BS)だった。SUPER GTラストランのジェンソン・バトンが乗った#1 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴&J. バトン/BS)は6位。

ニッサン勢では8位の#23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生&R. クインタレッリ/ミシュラン=MI)が最終戦の最上位フィニッシュに。

なお、GT500クラスのチーム部門タイトル(1台単位)は#37 LC500の「LEXUS TEAM KeePer TOM'S」が獲得している。

来季はGT500の車両切りかえ年。トヨタ・スープラの名も復活する2020年のSUPER GTシリーズは4月11〜12日、岡山国際サーキットで開幕する。また、今年11月23〜24日(両日とも予選&決勝を実施)には富士スピードウェイで「SUPER GT × DTM 特別交流戦」が開催され、現行GT500マシンにとってはこのDTMとの混走バトルが“最終舞台”ということになる。

ドライバーズチャンピオンを獲得する#6 LC500(決勝2位)。《撮影 益田和久》 ドライバーズチャンピオンを獲得する#6 LC500(決勝2位)。《撮影 益田和久》 ドライバーズチャンピオンを獲得する#6 LC500(決勝2位)。《撮影 遠藤俊幸》 最終戦はTOM'S勢が1-3フィニッシュ。左から優勝の#37 キャシディ、平川亮、3位の#36 関口雄飛、中嶋一貴。《撮影 益田和久》 最終戦優勝の#37 LC500。《撮影 益田和久》 最終戦優勝の#37 LC500。《撮影 遠藤俊幸》 最終戦3位の#36 LC500。《撮影 益田和久》 最終戦3位の#36 LC500。《撮影 遠藤俊幸》 最終戦5位の#17 NSX。《撮影 益田和久》 最終戦6位の#1 NSX。《撮影 益田和久》 最終戦8位の#23 GT-R。《撮影 益田和久》 GT500クラスの決勝スタートシーン。《撮影 益田和久》 今季の王者たち。左からGT500チーム部門タイトル獲得の山田淳監督(#37)、GT500ドライバーズチャンピオンの大嶋と山下(#6)、GT300クラスのドライバーズチャンピオンとなった福住仁嶺と高木真一(#55 ARTA NSX GT3)、GT300チーム部門タイトル獲得の鈴木亜久里監督(#55 ARTA NSX GT3)。《撮影 遠藤俊幸》 脇阪寿一監督体制となって4年目のチームルマン(#6)、大嶋と山下が2019年の頂点に輝いた。《撮影 遠藤俊幸》