レッドブル・ボックスカートレース東京2019《撮影 後藤竜甫》

レッドブルが主催する「ボックスカートレース」は、動力を持たない手作り4輪車によるダウンヒル競技だ。といっても、タイムを競うだけでなく、カートのデザインや参加者のコスプレなどエンターテインメント要素も高いイベントだ。

日本での開催は2009年、2017年に続いて3回目となるが、海外でも多数開催されている。海外の場合、カートのスペックを追求するより、カートのモチーフやコンセプト、ドライバーのコスプレやパフォーマンスを楽しむ傾向が強く、クラッシュで大破するカートも珍しくない。

そこは「モノづくり」日本なのか、国内の参加カートは総じて凝った造りのものが多い。自転車やバイクのパーツを流用し、ダブルウィッシュボーンサス、倒立ダンパー、別タンク式ダンパーなどかなりおごったパーツが投入されたカートさえ見かける。

ブレーキは、ロードバイク用のディスクブレーキを流用したり、オートバイの油圧式ブレーキを搭載するカートもあった。しかし、中には、大型台車のホイールをつかったり、ブレーキもバーを直接タイヤに押し当てる方式もあったりと、チームの個性や設計ポリシーがよく表れている。

コンセプトやパフォーマンスもボックスカートレースの醍醐味なので、外装のデザインの凝り方も興味深い。発砲スチロールを切り出して任意の形状にしたり、さらにコーティングや塗装でテクスチャや素材の質感を変えたりもしている。ただ、そういうチームは、デザインどおりのカートにするため、フレームからオリジナルで作るところも多かった。

変わった素材では、高知でしかとれないという虎斑竹を使ったボディ、ビールのアルミ缶を切り抜いて、リベットでつなぎ合わせたボディなどもあった。渋谷109チームは、テナントのショップ店員のデザインスケッチからタピオカドリンクカートを製作。生産技術スタッフの腕も試されるのがボックスカートだ。

参加チームも家族、友人、会社の同僚とさまざまだ。看板や商品ポップを手掛ける仕事をしている人、造形関係の会社、工具メーカー、自動車関係の専門学校の生徒など、それぞれの知見やリソースを最大限に活用する。

消防車型のカートでやたらFRPの仕上がりがきれいな車両があった。ワンオフで成形したのかと聞いたら、遊園地などにある子どもの乗り物を払い下げて改造したとのこと。軽量化と造形を両立できるアイデアだ。

参加者の車両について、審査員として参加していたホンダF1チームのマネージングディレクター 山本雅史氏にコメントをもらった。

「見ているとやっぱり自分で作って出てみたい、と思った。みなさん個性豊かで見ていても楽しいし、いいイベントだね。手作り感満載なのも面白い。印象に残ったのは、おにぎり型のカート(#8:おむすびころりん)。ガルウィングみたいに両側が開いてカッコよかったし、タイムも速かったので」。

タイムを追求するカートを作る場合、

「まずまっすぐ走るクルマを作ることかな。タイヤの種類はいろいろあるけど、ベアリングをどうするか。回転をいかにスムースにするか。トー調整などアライメントをしっかりだして、直進性を上げると、自然にスピードが出ると思う。次はブレーキ。スピードが上がってくるとブレーキもしっかり止まれるものが必要」。

とのアドバイスもあった。

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