トヨタ自動車元町工場《写真 トヨタ自動車》

気になるニュース・気になる内幕。今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析する新聞ウォッチ。…………

おカネをめぐるニュースでも、日本を代表する自動車メーカーのトヨタ自動車と日産自動車では、こんなにも記事の内容が違うのかと思うと、なんとも不思議でならない。

まず、日産についてのニュースである。西川廣人社長を含む複数の役員経験者が、株価に連動して受け取れる報酬をめぐり、かさ上げされた金額を不正に受け取っていた疑いがあることが判明したという。きょうの朝日が1面で詳しく報じている。それによると、不正については、社内調査の結果で明らかになったようで、近く開催される取締役会に、西川氏らの不正に関する調査結果が報告される見通しだという。

西川氏をめぐる不正の疑いは、6月発売の月刊文芸春秋が報じていたが、9月4日に開かれた監査委員会でも、西川氏を含む役員経験者らの不正の疑いを確認したという。西川氏はかさ上げされた報酬を受け取ったことを認めたうえで、「ケリー氏に行使日をずらすよう指示するなど意図的なことはしていない」とし、かさ上げされた額を返還する意向を示しているという。

ただ、日産では、法令違反ではないとして、今月の取締役会に報告した上で、社内処分の必要性を検討するようだが、朝日は「日産トップとしての立場に疑念を持つ声が強まりかねない」とも伝えている。

一方、トヨタのニュースは、最近トヨタ関連の”特報”が際立つ読売が、きょうの総合面でも「トヨタ賞与優秀社員手厚く、最高評価なら成果分1.5倍に」と報じている。記事によると、トヨタが、今年冬の支給分から、成果を出した社員への賞与(ボーナス)を大幅に増やす方針を固めたという。

最高評価を受けた社員は、ボーナスの最大4割近くを占める「考課反映金額」が、2018年冬に比べて1.5倍程度になるそうだ。トヨタでは、ボーナス支給額を左右する人事評価を「0点」「1点」「2点」「3点」の4段階とし、点数が高いほど増額する仕組みを導入。記事では具体的な支給額は示されていないが、仮に18年実績で200万円を支給された社員が19年冬以降「3点」を取れば、300万円にもアップする仕組みのようだ。

トヨタでは「社員の労働意欲を高め、厳しい競争を勝ち抜く狙いがある」(読売)としているが、問題は個々の社員の考課の査定方法である。AIなどであれば不公平感は少ないだろうが、これを直属の上司らが評価をすれば、ゴマスリ社員が横行しかねない。

かつて、トヨタの社員からは「会議で声が大きい人が出世する傾向が強い」との声を聞いたことがあった。馬にニンジンのような豊田章男社長が目指す「頑張る人が報われる制度」で、どこまで社員のやる気を引き出すことができるのか、成り行きを注目したい。

2019年9月5日付

●トヨタ賞与優秀社員手厚く、最高評価なら成果分1.5倍に(読売・2面)

●日産追浜工場が国際規格再取得(読売・8面)

●混迷の英離脱揺れる企業、日産生産継続「効率的」、トヨタ11月1日操業停止(読売・8面)

●乗車券9月購入で8%(読売・13面)

●日産社長ら報酬不正疑い、社内調査、取締役会に報告へ(朝日・1面)

●日産、欧州に新ジューク、英工場生産、国内販売言及せず(朝日・7面)

●日本車韓国で57%減、8月新車販売、不買運動が影響(毎日・2面)

●ガソリン、6か月半ぶり安値(産経・10面)

●社説、トヨタとスズキ、大変革期勝ち抜く決断(東京・5面)

●自動車保険で初、あおり被害特約、ドラレコ通じ通報も(東京・7面)

●ソフトバンクG磁力と死角、自動車競合も巻き込む(日経・1面)

●ホンダ、存続へ脱・自前主義、八郷社長体制下で提携20件、次世代車対応巻き返し(日経・12面)

日産ジューク新型《photo by NISSAN》