トヨタ自動車とスズキの共同会見(2016年10月、業務提携合意)《写真 トヨタ自動車》

トヨタ自動車とスズキが8月28日に「自動運転分野を含めた新たなフィールドでの協力」を推進するため、双方が出資し合う資本提携を発表した。

すでに2016年10月の提携合意以来、業務提携の具体化を着々と進めている両社だが、今回の資本提携については記者会見も開かない異例の展開となった。トヨタの出資比率は4.94%で、960億円を投じる。スズキもトヨタ出資の半額の480億円相当でトヨタ株を取得する。

トヨタの国内乗用車メーカーへの出資は、子会社のダイハツ工業(出資比率100%)、SUBARU(スバル、同16.8%)、マツダ(同5.1%)に次いで4社目となり、「CASE」と表現される自動車産業の変革期における「仲間づくり」(豊田章男社長)が、また大きく前進する。

自動車メーカーの業務提携は、お互いの技術ノウハウや商品計画などを開示し合うことになるため、資本を持ち合って長期的に信頼関係を担保する。今回の資本提携も「多くの課題に長期に取り組む決意」(トヨタ渉外広報部)でもある。資本を持ち合って信頼が損なわれると、スズキと独フォルクスワーゲン(VW)の提携(09〜15年)のように解消は泥仕合となるため、まさに決意が必要なのだ。

このため、自動車メーカー同士の資本提携は、双方の首脳が記者会見して公表するのが普通だった。トヨタもスバル、ダイハツ(全額出資時)、マツダとの提携時にはそうしてきた。今回は、電動化やインドを舞台にしたトヨタとスズキの業務提携の準備が着々と進んでいることからも、首脳会見は見送られた。

トヨタにしてみれば、スズキとの資本提携も、仲間づくりの「ひとつ」に過ぎないということなのだろう。トヨタは昨年来、「MasS」への投資を一気に加速している。この間明らかになった世界の「ライドシェア3強」への出資は下記のように20億ドル(約2200億円)に及び、今回のスズキへの出資の2倍強に相当するのだ。

◎トヨタのライドシェア大手への出資
シンガポール・グラブ 10億ドル(約1100億円)2018年6月
米国・ウーバーテクノロジーズ 4億ドル(約440億円)19年4月
中国・滴滴出行 6億ドル(約660億円)19年7月
※子会社などへの出資分も含む。年月は発表時期で、円換算は発表時のレート。

トヨタは緩やかな資本提携を結んでいるスバル、マツダとの協業を良好に進めている。マツダの丸本明社長は「ブランドや経営の自主性を維持しながら、協調領域での協業が構造的にできつつある」と評価する。自動車各社にとって仲間づくりは、大変革時代を乗り切るうえで不可欠であり、しかも相手はIT(情報技術)大手やAI(人工知能)、ライドシェアなどの新興勢力に広がる。そこでは自動車メーカー同士の資本提携も、かつてのような「重み」が相対的に薄れるのだろう。

トヨタ自動車本社《写真 トヨタ自動車》 スズキ本社《写真 スズキ》