トヨタ東京オリンピック・パラリンピック専用モビリティAMP《撮影 池原照雄》

トヨタ自動車は7月18日、東京本社で2020年の東京オリンピック・パラリンピックに提供する専用モビリティ『APM』の試作車を公開した。競技会場敷地内やその付近での利用を念頭に置いており、高齢者や車イス利用者、さらに選手らの近距離移動をサポートする。

APMは「アクセシブル・ピープル・ムーバー」の略で、最寄り駅などから競技会場への移動といった「ラストワンマイル」の移動手段としてもらう。過去のオリンピックやパラリンピックでのニーズから、こうしたモビリティを提供することとし、大会組織委員会など関係先と協議しながら昨年から開発を本格化し、このほど試作車両が完成した。

サイズは全長3.9m、全幅1.6m、全高2.0mと、やや大きめのミニバンくらい。モーターで駆動する電気自動車(EV)で、最高速度は想定される利用環境から19km/hの低速型としている。一度のフル充電による航続距離は100km。公道を走行できるよう、ナンバープレートも取得可能という。

一般の移動に使う「基本モデル」と、熱中症などで救護が必要になった人を乗せたストレッチャーがそのまま搭載できる「救護仕様」を用意する。基本モデルは運転者と乗客5人、車イス使用時は1台(1人)と乗客2人を乗せることができる。トヨタは基本モデルを150台、救護仕様については50台、合計200台程度を生産する計画だ。

開発を担当するトヨタZEVファクトリーの谷中壯弘グループ長は、「トヨタは東京オリンピック・パラリンピックを通じ、『すべての人に移動の自由を(Mobility for All)』を提供することにチャレンジしている。移動が大変だから大会に出かけるのを躊躇するといったことがないよう、少しでもお手伝いしたい」と、開発の動機を語る。

また、コスト面でも「トヨタの小型EVのプラットフォーム(車台)を活用するなど、工夫している」と話す。細かなニーズに対応するため、今後も大会当局などとともに試用や改善を重ねていく方針だ。

トヨタAMPの開発を担当する谷中氏《撮影 池原照雄》 トヨタAMP《撮影 池原照雄》