BMW 330i M Sport、Mercedes-Benz C 200 AVANTGARDE、Audi A4 45 TFSI quattro sport(右から)《撮影 和田清志》

◆クルマ選びの原点に立ち返る

メルセデスベンツ『Cクラス』、BMW『3シリーズ』、アウディ『A4』といえば、数多ある輸入車のなかでも王道中の王道。しかも、価格やサイズは手頃なのに、上級モデルと共通の装備や技術がぎっしり詰まっているのも、このクラスの特徴だ。

さて、あなただったら、どうやって自分好みの1台を見つけ出すだろうか。「昔から憧れだったあのブランド」「カタログのスペックがいちばん優れている1台」「価格がもっとも安くてコストパフォーマンスに優れたモデル」…。どの方法も間違いではないが、「3台に試乗して、そのなかから自分の好みにぴったりあった1台を選ぶ」のもいいと思う。というか、それこそクルマ選びの本来あるべき姿ではないだろう。そこで今回は、私が3台に試乗しその結果をリポートすることで、皆さんにクルマ選びの疑似体験をしてもらうことにした。

◆スポーツセダンのスタンダード…3シリーズ



最初に乗り込んだのは3台のなかでもっともデビュー時期が新しいBMW『3シリーズ』。そのなかでも比較的上級グレードの330i Mスポーツを選んだ。

BMWといえばスポーツセダン。なかでも3シリーズは彼らの主力モデルだ。実際にハンドルを握ってみると、たしかにきびきびとよく走る。足回りはどちらかといえば硬めで、コーナリング時のクルマの傾き(ロール)が小さく抑えられているので、ハンドルを切るとすっとノーズが内側に切れ込んでいく。まるでクルマが自分の身体の一部になったようだ。

BMWの反応が俊敏なのはハンドリングだけではない。アクセルやブレーキも操作に対する遅れが少ないのはもちろんのこと、たとえば1cmハンドルを切れば1cm分だけ、そして2cm切れば2cm分だけクルマが向きを変えてくれる。「そんなの当たり前じゃないか」という声が聞こえてきそうだが、実はこれが簡単そうでなかなかできない。それもBMWほど操作量とクルマの動きが正確な比例関係になっている自動車メーカーは滅多にない。このような正確さこそ、BMWがスポーツセダン作りの名手と長く評価されている理由のひとつだろう。

BMWはもう10年以上も前からMと呼ばれるスポーツモデル以外の全車にランフラットタイヤを装着している。こんな自動車メーカーも、大手のなかではBMWしかない。ランフラットタイヤとは、仮にパンクして空気が抜けても条件次第である程度の距離は走れてしまうタイヤのこと。だから、高速道路を走行中に急に空気が抜けてもクルマが直ちにコントロールを失うような事態にはなりにくく、また高速道路上や治安の悪い場所のように危険な場所でタイヤ交換しなくてもいいという安全上のメリットがある。

一方でランフラットタイヤは空気が抜けてもタイヤ自体の踏ん張りで車重を支えられるため、タイヤが重く、しなやかさに欠ける傾向がある。このため、乗り心地はどうしても硬めになる。BMWは長年の開発でかなりの部分までこの短所を消し去っているが、最新の3シリーズに乗ってもやはり細かな振動はどうしても吸収しきれていないようだ。もちろん、これが気にならないという人もいれば、気になって仕方がないという人もいるだろう。この辺りについてはあくまでも人の好みなので、やはり試乗した確かめてもらうのが安心だ。

◆快適なドライブが楽しめるオトナなクルマ…Cクラス



続いてテストしたのはメルセデスベンツ「C200 アヴァンギャルド」。C200といえば、昔は排気量2.0リットルのエンジンを積むモデルのことを指したが、最近はターボ技術が発達したおかげで1.5Lでも2.0L並みのパワーが発揮できるようになった。そこでメルセデスは1.5Lエンジンを積んだCクラスのことをC200と呼んでいる。これはBMWも同様で、330iといえば昔は6気筒3.0Lエンジンを積んでいたが、いまは4気筒2.0Lエンジンで3.0L並みの性能を得ているため、330iには4気筒2.0Lエンジンを積む。

C200の乗り心地は330iとは正反対。BMWがキビキビ走ることを目的としてやや硬めの足回りを用意したのとまったく正反対の考え方で、メルセデスは快適さを追求して柔らかめの足回りとしている。

昔は柔らかい足回りというと、いつまでもクルマがフワフワと上下していたものだが、メルセデスは最新の技術でそうした悪癖を解消。たとえばクルマがドーンと下から突き上げられても、ボディは1度上に上がったあとでゆっくりと下がっていき、揺り返しを起こさずに元の安定した姿勢に戻る。

ただし、柔らかめの足回りを用いているために、BMWに比べるとハンドルへの応答はゆっくりめ。これはアクセルやブレーキの反応に関しても同様のことがいえる。おかげで、多少乱暴に操作してもクルマが過敏に揺れることないので、同乗者にとっては快適。その一方で、たとえば山道をキビキビ走るというのは少し苦手かもしれない。

エンジンは1.5Lだが、前述したとおり最近はターボの技術が発展しているため力不足には感じない。しかも、最新のC200にはモーターがエンジンをアシストするマイルドハイブリッドという機構が搭載されており、エンジンが力を出し始めるよりも早くモーターの力で加速し始めるので、1.5Lという排気量以上に力強く感る。もっとも、それはエンジン回転数が2000〜4000rpmという低中速回転域での話。5000rpmを越えるような高回転域では、排気量に余裕がある330iのほうが力強く感じられる

◆エンジンの柔軟性と力強さが魅力…A4



残るアウディ「A4 45 クワトロ スポーツ」の乗り心地やハンドリングは、330iとC200の中間というよりもやや330iより。それだけにキビキビと一体感の強い走りが楽しめるが、330iと違ってランフラットタイヤを履いていないため、乗り心地は一段としなやかに、そして快適に感じる。なので快適性だけでいえばA4は330iを凌いでいるが、330iのように「いつパンクしても大丈夫」という安心感は、ほかの多くのクルマと同じように持ち合わせていない。この辺はトレードオフの関係で、それぞれの持っているタイヤの特徴のどちらがより重要かを考えてみる必要がありそうだ。

ただし、A4の本当の魅力はエンジンの柔軟性と力強さにあると思った。A4の2.0Lエンジンは高回転域で330iに負けず劣らずパワフルな一方で、3000rpm以下の領域からアクセルを踏み込んでも俊敏に加速を始める。この辺は、ワンテンポおいてから速度が伸び始める330iよりも軽快に感じた。

今回は3台の走りを中心にリポートしたが、たとえばレーダーやカメラなど “電子の目”で事故を防ぐ先進安全運転支援装置の仕上がりに関しては、長い伝統を持つメルセデスが一歩リードしているほか、A4はクワトロという名の4WDを装備。高速道路の安定性や滑りやすい道での安心感に定評がある。対するBMWはやはりスポーツドライビングに適していると感じた、ランフラットタイヤの安心感も魅力のひとつといえる。

ブランドの力やカタログ上の性能や価格ももちろん大切な判断基準だろう。でも、どのクルマの走りがいちばん自分に合っているのか、先入観を捨てて試乗する機会をいま一度持つことも、新しいクルマ生活をスタートするうえでは大事なように思う。

BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 BMW 3シリーズ《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 メルセデスベンツ Cクラス《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》 アウディ A4《撮影 和田清志》