ルノーのボロレ氏(向かって右)とスナール氏《photo by Renault》

日産自動車は6月19日、提携先で大株主である仏ルノーと「指名委員会等設置会社」への移行に伴う委員会などの人事について協議を進めていると明らかにした。来週25日の定時株主総会で移行のための定款変更の承認をめざす。

日産はカルロス・ゴーン前会長の事件を踏まえ、ガバナンス(企業統治)の強化を図るため、外部の識者らによる「ガバナンス改善特別委員会」からの提言を受け、25日の株主総会に指名委員会等設置会社への移行を諮る。総会での承認後、直ちに発足させる段取りだが、今月上旬にルノーが突如、移行のための定款変更議案に棄権する意向を書簡で伝えてきた。

指名委員会等設置会社の関係法令では指名、監査、報酬の3委員会を置き、各委員会とも3人以上の委員を任命することとなっている。日産が株主総会に諮る新たな定款では、「各委員は取締役会の決議で選定する」としており、日産のコーポレートコミュニケーション部によると関係者らには事前に案を打診してきたという。

ルノーについては、ジャンドミニク・スナール会長が委員の候補となっているものの、ティエリー・ボロレCEOは含まれず、これに対してルノーの影響力低下を懸念したスナール会長が「棄権」の意向を表明した。日産に43%を出資するルノーが棄権すれば、定款変更は成立せず、ガバナンスの強化策も実現しない。

このため、日産は西川廣人社長兼CEOがルノーからの書簡を受け、6月10日に「ガバナンス強化の動きに完全に逆行するものであり、誠に遺憾」との談話を発表していた。西川社長はルノーの理解を得るため「最善の努力をしていく」とも表明しており、新たな人事案の提示による調整が行われている。ボロレCEOの委員会委員就任などで調整が進んでいる模様だ。

25日の株主総会では11人の取締役選任も議案になっている。うち7人は社外取締役で、残る4人が日産の西川社長と山内康裕COO、ルノーのスナール会長とボロレCEOとなっている。指名等の各委員の人事は株主総会マターではなく、人事案が当初から変更になっても総会の議案には影響しない。

記者会見する西川博人社長《撮影 池原照雄》 日産グローバル本社《photo by Getty Images》