三菱 eKワゴン 新型撮影 中村孝仁

NMKVによって企画され、日産によって開発が進められた、三菱製『eKワゴン』。こう書くと話がかなりややこしい。

つまり三菱eKワゴンは、NMKVによって企画され、日産が開発し、三菱が生産する日産と三菱の兄弟車というわけ。特にeKワゴンの場合、日産『デイズ』と比較して、異なっているのは実にグリルだけなのである。だから試乗会を開催しても、同じクルマを2度乗ることになるわけで、さすがにそれじゃまずいということか、日産、三菱両社は、試乗会に持ち込むクルマをきちんと棲み分けした。

三菱が持ち込んだのは、特徴ある顔つきの『eKクロス』と、このeKワゴン。ただし、クロスの方は4WDのターボ車だった。一方日産はeKワゴンと被ってしまうデイズは持ち込まず、eKクロスに当たる『デイズハイウェイスター』のみ。それもターボとスマートシンプルハイブリッドと呼ばれるマイルドハイブリッド仕様。しかもターボは2WDという設定。というわけでノンハイブリッドのエンジンを搭載するノンターボモデルで試乗できたのは、このeKワゴンだけということになる。

◆スムーズで快適になった新型


先代におけるユーザーからの不満点として挙げられていたのが加速の鈍さ。そこで新エンジンでは特にノンターボ車の場合、最大で15%のトルクアップを果たしている。しかもそのトルク曲線を見るとほぼ全域で一山上を行くといった感じで向上させているから、本来このエンジンの良さを味わうならノンターボ車を試さなくてはいけない…ということになる。

ただそうはいっても、新しいエンジンですらそのパワー及びトルクは52ps、60Nmであり、ようやくスズキやダイハツと横並びになっただけで、パワフルなホンダからはまだ後塵を拝している。しかしそれでもいざ試乗してみると、出だしから中間加速の部分では実にスムーズで快適になった。

そもそも乗り心地が一昔前の軽自動車独特のひょこひょことしたものではなく、快適でスムーズ、どっしりとしたものになっている。先代eKワゴンが誕生したのは6年前の2013年だから、6年の間に長足の進歩を遂げたといえよう。

静粛性の高さに貢献しているのが新しいプラットフォームかと思いきや、実はエンジンそのものであるという点にも少々驚いた。勿論プラットフォームだって貢献しているだろうが、エンジン自体のすべての部位の剛性アップを実現して、エンジン音自体を低減しているのだという。加えていわゆるファイアウォール回りに吸音材や遮音材を用いることで、透過音を引き下げているのだそうだ。

◆100km/hの連続走行も苦にならない


街中の発進加速で全開に踏み込むということはまずない。精々回っても4000rpmを超えるあたりだと思うが、この領域のエンジン音は十分な静粛性とスムーズネスを持ち、俗に言う唸るような状態ではない。やはり、苦手であろうと思われるのは高速道路での走行。

例えば本線への合流や料金所からの加速などだと思い、高速へ乗り出してみた。

レブリミットは6500rpmからだが、CVTで全開を試みても、そこまで回ることはなく、それ以前に新たに加えた、いわゆるDステップ変速により、通常のATのように一旦回転が落ち、再びエンジン回転が上昇するというのを繰り返す。このステップは5000rpmを超えないと行われることはなく、通常の街中走行ではまずそれにお目にかかるというか、体感することはない。

遮二無二アクセルを踏み続けるというシーンはほとんど無いと思うので、このDステップ変速を体験する機会は稀だ。しかし、それを売り物にするなら、もっと低い回転域で実現させても良いのではないかと思う。今の技術なら、アクセル開度や踏み込みの加速度などを検知して、どの領域でもDステップを実現できるはずだ。これを実現して欲しいと思った。

で、肝心の高速走行である。基本的に100km/hの連続走行など全く苦にならないし、エンジンが唸るという印象でもない。むしろ「MIパイロット」を設定して安楽運転が可能である。さすがに追い越し車線を我が物顔で…というわけにもいかないが、無理して流れに乗っている印象は皆無であった。ステアリングもリニアでスムーズである。

◆ストレスのないクルマに仕上がった


三菱は軽自動車初だというデジタルルームミラーを売り物(オプションだが)にしているが、僕のように遠近両用メガネを使うドライバーには全く不向きで、残念ながら使い物にならない。ただ、三菱のこのデジタルルームミラーの良い点は、通常の鏡によるリアビューミラ―との写し出す像の大きさがほぼ同じだったこと。他メーカーのものだと、カメラによる画像は鏡のそれより遥かに近づいて見えて怖いが、それがなかったのは良いと思う。

日頃あまり飛ばさず、高速道路走行もあまりしないという御近所回りのドライバーには十分なパフォーマンスを持っているし、仮に高速も乗るというドライバーでも、パフォーマンス的にはそれほどストレスを感じないから正直、高速は苦にしない。長時間乗ってもエンジンが唸りっぱなしではないので疲労感も少ないはずだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める

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