ハノーバーモーターショー2018

●「働くクルマ」の見本市としては世界最大規模、東京ドーム6個分
ドイツで開催中の「IAAコマーシャル・ビークルズ(商用車)」、通称ハノーバーモーターショー。輸送や物流、建設機器などあらゆる業務用車両が展示され、いわゆる「働くクルマ」の見本市としては世界最大規模。展示会場の総面積は282平方kmと、東京ドームおよそ6個分の広さを誇る。

67回目となる今回は、「ドライビング・トゥモロー」をメインテーマに掲げ、商用車の将来的な方向性についての提案が各社から行われている。

●「自動車業界のメガトレンド」は商用車にとっても将来の姿
大型バスやトラック、フォークリフトやクレーンなどが広大なブースや屋外展示場にディスプレイされている様子は一般的な乗用車のモーターショーとはかなり異なる印象を受けた。一方で、完成車、部品の各メーカーブースをよく見ていくと、デジタル化、「コネクテッド」、自動運転、電動化など見慣れた文字が多く並んでいるのに気づく。「自動車業界のメガトレンド」と言われている安全、高効率、自動運転の波は、商用車にとっても将来の姿であるのは間違いない様だ。

プレスデイの初日には、ドイツ自動車工業会(German Association of Automotive Industry: VDA)による記者会見が行われた。壇上に立ったベルンハルト・マテス会長は、技術の発展による安全で高効率な商用車の将来の姿をこのモーターショーでは実感できるだろうと語った。

「デジタル化とコネクティビティ、そして運転の自動化によって、クルマの安全性は飛躍的な向上を遂げます。また、トラックなどの隊列走行(プラトーニング)も可能になり、交通渋滞の解消や燃費削減にもつながります」

●自動運転は大型商用車に、より速いスピードで装着が進む
VDAの調査によれば、異なる車種間での通信(コネクテッド)が可能な隊列走行が実現した場合、燃料消費量およびCO2排出量は最大で10%削減できるとの事である。また自動運転については、走行距離を考えても、年間平均1万4000km前後の乗用車よりも、10万〜15万kmのハイウェイ走行(欧州調べ)を行う大型商用車に、より速いスピードで装着が進む可能性もあるようだ。

CO2排出量の削減と言えば電動化だが、商用車にも明らかに電動化の波は押し寄せている。モーターショーの会場であれば、展示されている小型のデリバリーバンが100%EV(電気自動車)なのはもはや当然と言えるが、およそ26トンまでの大型トラックやバスでもEV、もしくはハイブリッドのモデルが多く出展されている。もちろん、コンセプトカーではあるが、DAFやIVECO、ダイムラーなど主要な大型商用車メーカーのほとんどが電動化モデルを出展し技術力をアピールしているのは印象的である。

重量や走行距離の問題から、このクラスはハイブリッドや天然ガスなどの代替燃料使用でのCO2削減が当面の解決策なのをマテス会長は認めた。しかし、100%EVのモデルも、「何年か(several yearsとの表現だったので、5〜6年と言うニュアンスと判断できる)のうちに量産開始が期待されている」と語っていた。

自動車業界は環境・安全に関する課題に直面し、その技術や使い方が大きく変わる可能性のある過渡期の真っただ中にある。各車の技術開発に対する努力が、よりクリーンで事故の無い安全な社会の実現に一日でも早くつながるよう期待したい。

DAF DAF HCV ルノー VDAのベルンハルト・マテス会長