ワクイミュージアム、オートモビルカウンシルで「La Sarthe」ラ・サルト、アンベール。《撮影 中込健太郎》

形にならなかった「たられば」の世界のクルマ。それを現実にしようという、夢のようなアイデアから生まれたクルマが、2018年のオートモビルカウンシルの会場でジャパン・プレミアを果たした。

「あのまま作っていたらこんなクルマができていたに違いない」「このクルマをベースにこんなクルマを作ったら」という空想を描くことは、クルマ好きなら誰しもが抱く愉しみだ。

しかもそのクルマが、誰しもがあこがれる高級車にして、数多のレースを勝ってきた歴史を持つベントレーにまつわるファンタジーだとしたら。これほど贅沢なクルマはないだろう。

英国のBENSPORTS社の『ラ・サルト』(La Sarthe)は、まさに「1950年代のベントレーが真のスポーツカーを創っていたら……」というアイデアをカタチに、戦後初めてベントレーが世に送り出した4ドアサルーン『Rタイプ』をベースにして完成させたクルマである。

ラ・サルトは、大変古風な風貌ながら、古いベントレーのクーペをレストアしたものではない。かつてこのクルマをベントレーが作ったことはないのだ。これが何かのレプリカかと言えば、その答えはノーだ。そして、過去に生産していたクルマのリプロダクト(再生産)かといえばそれもノー。そして雰囲気を似せてそれらしいものを作ったわけでもないのだ。

完全にオリジナルだが、ストーリーはしっかりとあり、ベントレーの歴史的名作で、H. J. マリナーが手掛けたファストバックモデルである「Rタイプ・コンチネンタル」に最上級のオマージュを捧げつつ、もしもあのままベントレーがリアルスポーツを創っていたら、きっとこんなクルマになるのではないか、というクルマ好きが描くファンタジーを実車に仕上げたクルマが、ラ・サルトなのだ。

「今回このクルマの日本販売権を獲得しました。コンセプトにも共感できましたし、レストアラーからコーチビルダーとしての道を歩みだそうとしているワクイミュージアムと同じ意思を、このクルマの誕生には感じるのです。ルマン24時間耐久レースにちなんで、24台のみが限定生産されます。一台一台オーダーメイドする特別なクルマですので、詳細内容等について、日本のお客様には、私どもワクイミュージアムと直接お話しさせていただきたいと思います」とワクイミュージアムでは話す。

価格は55万ポンド(約7950万円)+税とのことだ。

レプリカでも再生産でもない。エンスーのあこがれというか夢を形にしたクルマ。《撮影 中込健太郎》 世界24台限定生産。日本での販売権をワクイミュージアムが獲得。《撮影 中込健太郎》 オートモビルカウンシルの会場でアンベール。《撮影 中込健太郎》 今も昔も変わらないものが一堂に会す、ベントレー/ワクイミュージアムブース。《撮影 中込健太郎》 ベースとしては戦後間もないクルマではあるものの、ニューモデルながら時代考証に抜かりはない。《撮影 中込健太郎》 「時代の息吹き」を感じる一台。《撮影 中込健太郎》 ウッディなコックピット回り。《撮影 中込健太郎》 クラシックベントレーではないのだが、現代者でもない。まさにファンタジーの中にいるかのよう。《撮影 中込健太郎》