タイ戦での#39 LC500と#6 LC500。《撮影 益田和久》

1日に今季第4戦タイ大会を終えたSUPER GTシリーズ。GT500クラスはドライバーズランキング上位に6ポイント差で5陣営がひしめく接戦となり、後半戦のさらなる激戦を予想させるのと同時に、次の富士500マイルが重要な一戦となる可能性も浮上してきた。

第4戦タイのGT500クラスは、雨上がりの予選ではホンダ『NSX』勢が上位に進出するも、決勝では今季未勝利だったレクサス『LC500』勢が1-2-3-4フィニッシュを飾るという極端な展開になった。正確な意味合いとは違うだろうが、“手のひら返し”のような一戦といえようか。

ただ、タイヤ戦争という要素があるSUPER GT、しかも今季はホンダ、レクサス、日産の総合的な戦力差も少ないとみられているGT500クラスでは、ちょっとしたコンディション変化で戦況がガラリ一変しても不思議ではないところ。それを象徴するタイ戦だった。

全8戦のカレンダーにおける前半4戦を終了し、勝ち星はホンダ2、日産とレクサスが各1。ドライバーズポイントランキング上位は以下のような状況に変化している。

■2018 GT500クラス ドライバーズポイント上位
35点/#39 レクサスLC500 H. コバライネン(BS)
32点/#100 ホンダNSX 山本尚貴&J. バトン(BS)
31点/#23 日産GT-R 松田次生&R. クインタレッリ(MI)
29点/#6 レクサスLC500 大嶋和也&F. ローゼンクヴィスト(BS)
29点/#1 レクサスLC500 平川亮&N. キャシディ(BS)

(*末尾のカッコ内はタイヤ。BS=ブリヂストン、MI=ミシュラン。#39 コバライネンの僚友である小林可夢偉はWECとの日程重複による欠場があったため、ポイントが異なる)

26〜24点にも3陣営がおり、11点差に8陣営という見方にもなるわけだが、接戦状況で迎える次の富士スピードウェイ戦(8月4〜5日)が天王山となる可能性も出てきた。

なぜなら、今年の“夏の富士”は決勝500マイル(約800km)の長距離戦として行なわれるからだ。SUPER GTでは通常は優勝20点だが、当初予定700km以上のレースの場合は“割り増し”が適用され、優勝なら25点を稼げる。

もちろん、戦局にはウエイトハンデ制も絡む。第6戦までは獲得ドライバーズポイント×2kgの原則で、GT500クラスに関しては50kg超の場合に段階的に一部を燃料流量リストリクター調整に振りかえる、という規則も存在する。つまり、いずれにしてもランク上位陣が富士で真正面から勝ちを狙うことは難しいだろうと予想できる。

そうなればランク中団以降から浮上する陣営が出てきてさらなる混戦に拍車、というシリーズ展開も考えられよう。ただ、今季最長の500マイル戦が熱暑での開催となれば、トラブル等で乱戦化するおそれもある。そこで現在のランク上位陣のどこかが艱難辛苦を乗り越えて表彰台圏内に入ってくれば、かなり優位なポイント状況を築ける、という筋書きもまた、あり得るのだ(700km以上戦では2位18点、3位13点)。

タイトル圏内とみられる8陣営の内訳は、レクサス4、ホンダ3、日産1。第4戦でようやく今季初勝利となったレクサスではあるが、やはり安定的に各チームがポイントを重ねているのはここで、昨年築いた圧倒的優位の貯金はまだ残っているようにも思える。逆に言うと、陣営内でポイントが分散してしまうことが終盤に向けてアキレス腱になる可能性もあるが、マシンの富士適性は高そうなので、次の富士500マイルでレクサス上位陣のどこかが大きいポイントを得ても不思議はない。

今季、かなりの底上げをしてきたと見えるのはホンダだが、富士での第2戦に関しては大苦戦だった。はたして夏の富士はどうか? その第2戦富士で勝ったのが日産。ただ、ニスモ(#23)以外はタイトル争いにおいて厳しい状況にある。しかしながら富士に好相性と思えるところもある『GT-R』なので、ニスモ以外のどこかが軽ハンデを活かして勝ちをさらっていく、こういうストーリーも充分に予想される。

さて、どんなレースになるのだろうか。GT500だけでも焦点豊富な富士500マイルである。

そしてGT300クラスも見どころは多い。こちらはタイ戦を制した#11 GT-Rの平中克幸&安田裕信がドライバーズポイント首位に立ち、2位に5点差とした。追うのは#31 プリウスの嵯峨宏紀&平手晃平、さらに首位から8点差の3位に#65 メルセデスAMG「GT3」の黒澤治樹&蒲生尚弥が続く。

いずれ劣らぬ実力者揃いの上位だが、タイトル争い的な視点から考えると、タイ戦の終盤で表彰台圏内を走っていた高木真一&S. ウォーキンショーの#55 BMW「M6 GT3」がタイヤの問題で緊急ピットイン、ドライバーズポイント圏外の11位に終わったことは大きい出来事だったかもしれない(スローパンクチャーしていた模様)。エアコンが壊れている厳しい状況で頑張っていた高木とウォーキンショー。彼らが表彰台圏内でゴールしていれば、#11 GT-Rとの得点状況も同点もしくは4点上にいけるところだっただけに無念の結果となった(通常は2位15点、3位11点。タイ戦を終えて#55 BMWはトップから11点差のランク4位)。

ただ、次の富士は#55 BMWが大得意とするコースなので、ウエイトハンデが増えなかったことを考えると、一挙大量得点の可能性が増した、とも考えられるのがこのカテゴリーの複雑で面白いところ。富士での#55 BMWのパフォーマンスが今後のGT300タイトル争いのカギを握るかもしれない。また、タイヤ戦争の面ではランク首位の#11がダンロップ、追う2〜4位がBSという形勢で、今後もヨコハマ勢を含めた戦いの構図は一層激化しそうだ。

注目のSUPER GT第5戦・富士500マイルは、8月4〜5日に開催される。

GT500クラスのランク首位、#39 レクサスLC500《撮影 益田和久》 GT500クラスのランク2位、#100 ホンダNSX《撮影 益田和久》 GT500クラスのランク3位、#23 日産GT-R(写真は第2戦富士)。《写真提供 GTA》 タイ戦を制した4人、左からGT500の可夢偉、コバライネン、GT300の平中、安田。《写真提供 GTA》 GT300クラスのランク首位、#11 日産GT-R。《撮影 益田和久》 タイ戦のGT300スタートシーン(先頭の左、ポール発進が#65 メルセデス)。《撮影 益田和久》 GT300クラスのランク4位、#55 BMW M6(写真は第2戦富士)。《写真提供 GTA》