リンクス・バスラ―共同記者発表≪撮影:中尾真二≫

自動車メーカーやサプライヤーにとって小型カメラや画像処理技術は、これからの車両開発において欠かせない。しかし、CMOSカメラモジュールや画像認識、ディープラーニングなどの要素技術は見方によっては、業界勢力図もかたまってきており、ベンチャーの参入はその上のアプリケーションにシフトしつつある。

その中、産業用機器、IoTをメインに事業展開していたリンクスが、IoTの次なる市場として「エンベデッドビジョン」を掲げ、新事業について記者発表を行った(6日)。リンクスは、産業用カメラ、画像処理ソフト、3Dスキャナーなどの代理店販売に強い技術商社。6月に半導体基板設計・製造のITSエンジニアリングを買収し、リンクスアーツと社名変更し、ミドルエンドの画像処理市場に本格展開するという(リンクスの村上慶代表取締役)。

エンベデッドビジョン市場への本格展開の主力パートナーとなるのはドイツのバスラー社。バスラーは産業カメラ、3Dカメラ(ToF)のトップベンダー。同社の製品は、製造ラインの品質検査や工程制御、物流では荷物の体積読み取りと荷積み、無人倉庫や自動工場のロボットやフォークリフトなどに使われている。

同社はもともと産業用カメラの分野に、イーサネットやUSBなどコンシューマ製品用の規格を持ち込んだメーカー。近年は広がるIoTニーズに応えるため、産業用カメラの小型化、モジュール化を進めている。組み込み用プロセッサ(ARM、Snapdragonなど)を組み込んだFPGAソリューションによって、信号処理エンジン、画像処理エンジンを一体化したカメラモジュールを作っている。

リンクスとバスラーがいうエンベデッドビジョン市場は、工業用画像認識システムとスマートフォンや自動車などコンシューマ製品の間のミドルエンド市場となる。この領域はIoTによって今後広がるとと両者はみている。

例えば、大病院の眼底検査ができる機器は、クリニックから薬局まで広がろうとしている。業界では家庭用の検査機器も視野に入っている。投薬の分包(薬の識別)を自動化する機械も大学病院から薬局レベルで使えるものが出始めている。コメや作物の等級検査も農協や公的機関から農家ごとに設置できる機械が考えられている。スーパーやコンビニの棚検品、在庫補充(および在庫管理まで)をカメラ付きの巡回ロボットに任せる店舗も出現している。

このようなニーズはIoTによってさらに広がる市場と見られているが、製品ロット数としては数万、数十万といった単位だ。かつ、自動車の車載カメラやスマートフォンのカメラほどコスト要件が厳しくない領域だ。

バスラー社モジュールビジネス事業部長 アレクサンダー・テーメ氏は、自動車関連で狙っている市場について「例えば、ドライバーのモニタリングシステム、パトカーなどに搭載する監視カメラなど。自動運転等や周辺監視のカメラなど、ハードコアなコンシューマ製品は、カスタマイズ、コスト要件、安全要件から直接は考えていない」という。

とはいえ、無人倉庫などへの展開があるように、自動走行そのものをやらないわけではないようだ。自動走行する農耕機、重機、ドローン、物流、スマートシティ、MaaSなどの領域となる。

最後にテーメ氏にエンベデッドビジョンのグローバル戦略について聞いた。

「エンベデッドビジョンは国ごとに戦略展開が変わるものではないが、この分野で先行しているのはやはり北米だ。ここからのユースケースがアジアなど各国にひろがっていくと思っている。日本はアーリーアダプターではないが、技術力も高く重要市場のひとつだ」

リンクス・バスラ―共同記者発表≪撮影:中尾真二≫ リンクス・バスラ―共同記者発表≪撮影:中尾真二≫ リンクス・バスラ―共同記者発表≪撮影:中尾真二≫ リンクス・バスラ―共同記者発表≪撮影:中尾真二≫ リンクス・バスラ―共同記者発表≪撮影:中尾真二≫ リンクス・バスラ―共同記者発表≪撮影:中尾真二≫