国土交通省・自動車局環境政策課の久保田秀暢 課長《撮影 古庄速人》

APEV(電気自動車普及協会)は5日、社員総会にあわせて講演会を開催。国土交通省と日本カートラベル推進協会の担当者が登壇し、超小型モビリティや電気自動車における取り組みや、将来の可能性について紹介した。

最初に登壇したのは、国土交通省・自動車局環境政策課の久保田秀暢課長。EVやFCEV、ハイブリッド車など「次世代自動車」を取り巻く状況や現在進められている施策の具体例を、具体的なデータとともに紹介した。

たとえば2016年の日本のCO2排出量のうち、運輸部門からの排出量は17.9%。しかし、すべてのトランスポーテーションが含まれる運輸部門のなかで自動車が86.2%(うち自家用車は49.8%)を占めているという。いかに自動車からの排出量が多いかを示すデータだ。

また主要各国における2017年の「パワートレイン別新車販売台数」という統計では、内燃機関のみを動力源とする車両の販売比率が日本は世界でもっとも低く、78.9%だという。これはハイブリッド車の普及が進んでいることを示すものだ。

この比率はアメリカの96.82%、中国の97.63%とくらべて格段に低い。意外なことにヨーロッパの主要国も内燃機関車比率が高く、フランスは95.97%、ドイツは97.42%。これは、これまでクリーンディーゼルの販売比率を上げることでCO2排出量を削減してきた影響だろう。

久保田課長はこのほか、現在進めている施策の具体例として、燃料電池バスと超小型モビリティの取り組みを紹介した。燃料電池バスはすでに、この3月に東京都交通局が3台の運行を開始。今後は2020年度までに100台、2030年度までに1200台程度の導入を目指すとのこと。

いっぽう超小型モビリティについては、電動化とともにマイクロカーの復権と伸張が進むヨーロッパや中国に比べると、日本は大きく遅れていることが浮き彫りとなった。国内でもこれまでいくつも実証実験がおこなわれてきているにもかかわらず、これから普及啓発や環境整備に向けての「検討を進める」段階だという。本格普及を目指すのは2020年以降だとか。

次に登壇したのは、日本カートラベル推進協会(JCTA)の野瀬勇一郎 理事。同協会は「クルマと旅する新たな”コト市場”の創造」を目的として、6月1日に発足。キャンピングカーによる旅行だけでなく、近年注目が高まっている車中泊も含めて「旅の自由度」を高めつつ、そのためのインフラ整備などで来訪者を増やし、地方創生を促すことも目的に掲げる。

たとえば週末や連休の旅行でも車中泊が前提のスケジュールを組めば、渋滞を避けることができる。そして車中泊できる施設を充実させればそこに人が集まり、新しいビジネスが生まれるというわけだ。

こうなると、クルマは今後いっそう部屋のような居住性が重視されるようになり、駐車時にはエネルギー供給源としても使えるEVとの親和性が高くなると野瀬理事。

また車中泊ステーションを電力供給ステーションとしても活用すれば、車中泊をしない地元のEVにもメリットをもたらすことになるだろう。EVの普及は「クルマでの旅行」の選択肢を増やし、それがより豊かな自動車文化を育むことになるのかもしれない。

日本カートラベル推進協会(JCTA)の野瀬勇一郎 理事《撮影 古庄速人》