トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》

「これがカローラ?」

富士スピードウェイで開催された試乗会の会場に並ぶ新型『カローラ』のプロトタイプを見た瞬間、僕は思わず立ち止まってそうつぶやいてしまった。

カローラといえば、言わずと知れた日本の国民車である。初代がデビューしたのは1966年だから、時代は戦後の動乱期を乗り越えた高度成長期の真っ只中。2018年の今年、年号は昭和から平成になり、来年にはあたらしい年号を迎えようとしている。それほど長い間、日本を代表する大衆車として君臨してきたのだ。

カローラは、日本の国民車に留まらない。世界の16拠点で生産され、世界152以上の国と地域で販売されている。世界販売台数は4600万台。「10秒に1台がお客様のもとへ」届けられているという計算。

そんな世界の大衆車カローラが、52年目を迎え、12代目モデルとなる新型で、がらりと宗旨替えとなった。「大衆車=凡庸=チープ=地味」というイメージの完全払拭を狙ったのだ。



開発責任者の小西良樹CEはこういう。

「カローラを若い人達に…」。

これまでのユーザー構成は、60歳〜70歳。それを半分以上若い、20歳〜30歳の男女にしたいという。ターゲット層を孫子の世代に落とし込むのだから、大胆な施策が必要だった。旧態依然としたイメージが全くなく、趣がガラリと変わったのも納得がいく。

かくして完成したカローラ プロトタイプはまず、3ドアハッチバックのみの車形でデビューしたことがエポックだ。今後、セダンやワゴンに拡大していくのだろうと想像するけれど、まずハッチバックから投入するというのは、『オーリス』の販売が近く停止するという事情だけでなく、若返りの狼煙だと思う。

顔つきはキーンルック。フォルムは塊感が強調されている。何も予備知識がなければ、これがカローラだとはほとんどの方が気づかないのだろう。

インテリアにも大衆車的なチープな印象はない。インパネは水平基調にワイドで、コンソール系は太い。横方向に広い印象なのだ。後述するが、スポーツ仕様もオプションで選べるようになっている。カローラからスポーツという言葉を聞いたのは、いつのことだっただろうか。



そしてさらに、走りも若返りを果たしている。エンジンバリエーションは2タイプだ。1.8リットルハイブリットと1.2リットルターボ。ハイブリッドはトヨタ伝家の宝刀 THS2 であり、プリウス等に搭載されている最量産ハイブリッドである。それに、スマートサイジングターボが加わるのだ。1.2リットルターボには、FFだけでなく4WDも選択可能だ。

そして驚くのは、1.2リットルターボにはマニュアルミッションが設定されていることである。

「若い方にもマニュアルミッションを操る楽しみを味わって欲しい」

小西CEはそういう。

AT限定免許証の取得比率が7割に届こうというご時世に、マニュアルミッションを設定するのはつまり、カローラの若返りである。マニュアルミッションがそれほど若者のハートに響くか否かの議論はともかく、鼻息の荒さはその辺りに現れている。



実際に、1.2リットルターボは、それほどパワフルではなく、高回転まで回るわけでもない。エンジン特性から爽快感や躍動感を受けることはないが、シフトレバーをコキコキするこの感覚は懐かしい。かつて一斉を風靡したホットハッチを思い起こさせるのだ。

特徴的なのは、発進時にエンストしないよう、クラッチミートのその加減に連動して、エンジン回転を引き上げてくれる。しかも、シフトダウン時にも回転を高めてくれるから、ギクシャクすることがない。もはや死語なのかもしれない「ヒール&トー」というドライビングテクニックを、クルマが自動で制御してくれるのである。意地悪なクラッチ操作ではエンストもするけれど、マニアルミッションアレルギーの人には歓迎されるだろう。

操縦安定性も整っている。特にハイブリッドに採用され新開発のダンバーがいい仕事をしている。ステアリング応答の初期レスポンスが鋭く、スッキリしているのだ。これには驚いた。

そう、新型カローラは小手先のイメージだけ若返らせたのではなく、中身にも真摯に手を加えているのである。世界の若者がどう反応するのか、楽しみに見守りたい。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

木下隆之| モータージャーナリスト
プロレーシングドライバーにして、大のクルマ好き。全日本GT選手権を始め、海外のレースでも大活躍。一方でカー・オブ・ザ・イヤー選考委員歴は長い。『ジェイズな奴ら』を上梓するなど、作家の肩書きも。

トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 トヨタ カローラハッチバック プロトタイプ(富士スピードウェイ)《撮影 平川 亮》 新開発アブソーバー《撮影 平川 亮》 新開発アブソーバー《撮影 平川 亮》 カローラハッチバックプロトタイプと木下隆之氏《撮影 平川 亮》