スキーバス転落事故を受けて規制が強化された貸切バスへの街頭監査《撮影 中島みなみ》

2016年1月に発生した軽井沢スキーバス事故の再発防止策のひとつとして、昨年8〜10月に実施された「覆面添乗調査」で、全国初の違反事例の処分が決定した。

5月29日に処分を受けたのは、千葉県香取市に本社がある北総観光有限会社(木内恵美子社長)。営業区域外運送のほか、運送引受書の記載不備、運転者の乗務時間告示違反、点呼の記録事項義務違反など、あわせて8件の法令違反が見つかった。

道路運送法は貸切バスが旅客輸送を行う場合に、出発地か到着地のいずれかを営業区域内に設定しなければならないと定めている。営業区域外運送は、出発地と到着地の両方を営業区域外に設定すると、運転者や車両の管理が充分にできないことから、安全運行に影響を与える違反とみなされる。

ただ、実際には貸切バスが運行するツアーに乗車しないと、違法行為がわからないことが多かった。そのためスキーバス事故後に効果的な安全対策として覆面添乗調査が導入された。委託を受けた民間の調査員がその目的を事業者に伝えずに乗車し、その情報をもとに後日、監査官らが一般監査を実施する。営業区域外運送のほかの処分理由は、その後の監査で明らかになったものだ。

同社はこれらの違反で、150日車の車両停止処分。以前は1台の車両が150日運行を止めて、他の車両を運行することはできたが、法改正後は処分日数を届け出台数で割り振らなければならない。そのため同社は6台で各25日の運行停止になった。

覆面添乗調査は昨年度初めて、夏から秋の大型連休にかけての8〜10月、スキーシーズンに実施された。今年度も同様の期間で実施を予定する。