野尻(中央)がSUGO戦のポールを獲得、2位は可夢偉(左)、3位に平川。《撮影 遠藤俊幸》

宮城県のスポーツランドSUGOが舞台のスーパーフォーミュラ(SF)第3戦は26日、3段階ノックアウト方式の予選を行ない、野尻智紀がポールポジションを獲得した。これで野尻は変則の“3週連続ポール”。予選2〜3位には小林可夢偉、平川亮がつけている。

晴天のドライコンディションとなった予選日のSUGO。しかし、狭くて短く、しかもチャレンジングなSUGOのコースは常にドラマを呼びがちであり、実際この日も波乱含みな流れとなっていく。

まず、午前中のフリー走行でクラッシュがあった#65 伊沢拓也(TCS NAKAJIMA RACING/エンジンはホンダ)はマシンの修復が間に合わず、午後の予選は不出走に。これによって、ミディアムに使用タイヤが限定されるQ1は18台での争いとなった。

そしてそのQ1は赤旗中断〜再開を経てセッション終了、上位14台のQ2進出が決まった、と思われたところで大波乱が起きる。5番手のはずの#19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)がタイミングモニター上で突然、16位に落とされてしまったのだ。

これは、赤旗中断となる事象の発生時に#19 関口がイエローフラッグ提示区間を通過していたため当該周のタイムを無効とする、という規則的措置がとられたからだったが、まず黄旗がキチンと見える位置とタイミングで振られていたかどうか、そしてそれよりもなぜ、すぐにタイム抹消の旨が通達されなかったのかが大問題。赤旗中断のうちに5番手タイムの抹消が伝えられていれば、当然 #19 関口は再開後にアタックをやり直した。だが、伝えられていなかったため、Q2進出は安泰と見て再開後はセットアップ確認のための走行しかしていない。

関口陣営からは当然、抗議が出された。最終的には『大会競技長への注意喚起』が通達されるなどしたが、Q2が関口抜きで開始されてしまった時点で事態はもう動きようがない。懸命に戦っている選手とチームにとってはあまりに酷な顛末となってしまった。SUGO戦3年連続優勝を目指す、今大会の本命サイドのひとりといえる#19 関口は不本意極まる格好のQ1ノックアウトで予選16位に。

そんな混乱も経たのち、ソフトを履くことが可能になるQ2〜Q3を戦い抜いてポールポジションを獲得したのは#5 野尻智紀(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)だった。Q3では後続に0.247秒という、1周が短いSUGOでは決定的ともいえる差をつけての今季初ポールである。タイムはニューレコードとなる1分04秒694。

#5 野尻は2週前の前戦オートポリスで予選2位。この時は決勝が荒天で中止になってしまったが、予選1位の選手がその前のレースでオートポリス戦3グリッドダウンのペナルティを受けていたため、レースがあれば野尻がポールポジションからスタートするはずだった。そして先週のSUPER GT鈴鹿戦、野尻は伊沢と組んでGT500クラスをポール・トゥ・ウインで制している。つまり変則的ではあるが、これで3週連続トップカテゴリーで“ポール獲得”の快挙達成となったのである。

「昨日(金曜フリー走行)はあまり調子が良くなかったんですけど、こうして今日この位置にいられることはチームに感謝ですし、予選に関しては自分もいい走りができたと思います」と喜びを語った野尻。このSUGOは4年前のルーキーイヤーにSF初優勝を飾ったコースでもある。それ以降も度々、いろんなコースで快速ぶりを見せつけてきた野尻だが、SFでの2勝目はまだ獲得できていない。初優勝地で自身初のポール・トゥ・ウインを目指す。

一方で予選2〜3位にはSF初優勝を目指す実力者がつけて、虎視眈々だ。2位はF1表彰台経験者、SF参戦4年目となる#18 小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG/トヨタ)、3位は昨季GT500王者で今季SFに復帰した#20 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL/トヨタ)。ともにSFでの優勝がまだないのが不思議なくらいの存在だ。

可夢偉は「チーム移籍2年目で、去年からやってきたことが結果につながってきている」と充実感を語る。#20 平川もSF復帰の今季、前戦でも予選1位獲得と継続的にスピードを発揮しており、ともにこのSUGOでの大願成就を狙っていく。

予選4〜8位は以下の通り。チャンピオン経験者4人に混じり、今季新人の#6 松下信治が5位に食い込んでおり、このあたりの順位域の決勝での攻防がどうなるかにも興味が湧くところだ。

4位 #2 国本雄資(JMS P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)
5位 #6 松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING/ホンダ)
6位 #16 山本尚貴(TEAM MUGEN/ホンダ)
7位 #36 中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM'S/トヨタ)
8位 #1 石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING/トヨタ)

今回がSF初参戦の2017年マカオF3ウイナー、#15 D.ティクトゥム(TEAM MUGEN/ホンダ)は予選9位。自身が目標としていたQ3進出(上位8台)には一歩届かなかったが、早い順応ぶりを見せており、決勝での躍進にも注目が集まる。

決勝250kmレース(68周)は明日(27日)の午後2時15分にフォーメーションラップスタート予定。野尻の独走も考えられれば、上位混戦の流れも予感されるし、ことによっては大波乱の可能性も存在する“ドラマチックSUGO”での戦いは、予選で関口陣営を襲ったようなコース外のドラマは勘弁願いたいが、同日開催のF1モナコGPやインディ500にも負けないくらい魅力的な展開となりそうだ。

ポールを獲得した#5 野尻。《撮影 遠藤俊幸》 予選2位の#18 可夢偉。《撮影 遠藤俊幸》 予選3位の#20 平川。《撮影 遠藤俊幸》 予選4位の#2 国本。《撮影 遠藤俊幸》 予選5位の#6 松下。《撮影 遠藤俊幸》 SUGO戦3連覇を目指す#19 関口はまさかの事態に遭遇、予選16位に。《撮影 遠藤俊幸》 選手トークショーなど、ファンイベントも充実の内容で実施されている。《撮影 遠藤俊幸》