ハーレーダビッドソン フォーティーエイトスペシャル《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》

日本の正規ディーラーへのデリバリーも間もなく始まろうとしている『フォーティーエイトスペシャル』。そのジャーナリスト向け試乗会がクロアチア第2の都市スピリットにて開催された。

『フォーティーエイト』といえば、2010年夏にデビューして以来、好調なセールスを続けるスポーツスターファミリーの主軸モデル。フロントにファットタイヤを履く前後16インチの足まわり、車名にもなっている1948年式『モデルS』を再現した小振りな燃料タンクが特徴で、全身をブラックアウトするダークカスタムモデルとして人気を集めている。

2018年モデルの最後発として今回登場した『フォーティーエイトスペシャル』は、その上級バリエーションモデル。排気量1200ccの空冷Vツインエンジンや、他のスポーツスターよりインナーチューブ径が10mm太い49mmフォークなど車体の基本構成はそのままに、ハンドルを大胆に迫り上がったトールボーイバーに換装し、燃料タンクのグラフィックスを70年代のレインボーカラー風に一新。エンジンもクランクケースやプライマリーチェーンケースをクロームとし、豪華さをアピールしている。

『フォーティーエイト』が低いハンドルにミラーをアンダーマウントするなどして地を這うスタイルを演出したのに対し、『フォーティーエイトスペシャル』ではトラディショナルなチョッパースタイルとして差別化を図ったのだ。

◆落ち着きあるハンドリングで意のままに操れる

ハンドルは見た目ではかなり高く感じたが、実際には両腕を伸ばした自然な位置にグリップがあり、違和感はない。上半身が反り返るようなこともなく、どちらかといえばわずかに前傾するアグレシッブな乗車姿勢。フォワードコントロールのステップもヒザが曲がる近い位置にあり、ライディングポジションは思いのほかコンパクトだ。

同時リリースの『アイアン1200』と乗り比べしながら走ったが、フロント19インチに細身のタイヤを履くアイアンはヒラヒラと軽快感のあるハンドリングで、フロントフォークはよく動くものの負荷をかけたときの踏ん張りは頼りない。

その点、『フォーティーエイトスペシャル』はフロントまわりに剛性感が絶えずあり、落ち着いている。コーナーで車体を寝かすときもアイアンはパタンとクイックだが、こちらはグリップ感を伴いつつジワーとバンクしていき、リーンアングルが決まればと容易くクルクル曲がる。スロットルコントロールと穏やかな体重移動だけでコーナリングの軌跡は充分にライダーの意のままとなる。

そしてステップが前にあるから、どっしりシートに腰を落ち着け、トルク感のある力強い駆動力と後輪荷重をより意識して走ることになる。重心の低さも手伝って安定感が際立ち、乗り心地はクルーザー然としたものと言える。もし、旧車然とした昔ながらのスポーツスターを好むのなら、フロント19インチのアイアンを選ぶといいだろう。安定性重視なら『フォーティーエイトスペシャル』だ。

◆ノンビリ長旅するのも得意

4カムのエボリューションエンジンはピックアップが穏やかで扱いやすいが、クラッチミートする極低回転域からトルクフルで、そのまま最大トルクを発揮する3500rpmまで力強く回っていく。早めにシフトアップし、ギヤが高いと感じてもトコトコ走ってくれ、トップギヤ5速での100km/h巡航は2300rpmほどでこなしてしまう。

常用する2000〜3000rpmではシフトダウンせずともどこからでも右手を捻るだけでしっかり加速し、3500rpmを超えてからも粘り強く力を振り絞ってくれる。どこかでドカーンとトルクが出るのではなく、全域にフラットで親しみやすい。気を遣わないから長い時間走っても疲れが少なく、ハイペースでのロングランは苦手だが、ノンビリと長旅をするのは得意だ。

ただし、その小振りな燃料タンクはスタイリッシュとしか言いようないが、容量がなんせ7.9リットルしかなく、ツーリングに出るとガソリンスタンドを見つけては頻繁に給油しなければならなくなる。走り方にもよるが、満タンでの航続距離は150kmくらいだろうから、100km走行前から警告灯が点きソワソワしなければならない。もし、大きな燃料タンクを備えるバイクと一緒に走ったら、給油に付き合わせることになるだろう。

ただし街乗り派やソロで気ままに走るなら、そんなことは問題にならない。この美しいタンクシルエットのほうが、よっぽど魅力的だ。『フォーティーエイトスペシャル』を選ぶというのは、そういう割り切りも必要であり、少しばかりの不便さも楽しみに変えてしまうことができる人がオーナーとなるべきだろう。


■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★★★
オススメ度:★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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