障害物の状況を離れた場所にいるオペレーターがカメラを通して視認し、それを回避する操作を実施。車両は無事に障害物を回避した

福岡市で10日まで開催されている「第16回アジア太平洋地域ITSフォーラム2018福岡」では、多くの自動運転デモが行われた。その中でKDDIが実施したのは、将来の5G利用までも想定した遠隔操作による自動運転の実証実験デモだ。

このデモで使われたのは、アイサンテクノロジーなどと共同で開発した自動運転車両と、遠隔操作に利用するKDDIの4G・LTE通信網。通常時はあらかじめ生成した高精度地図に基づいて自動運転走行を行うが、そこに障害物によって車両が立ち往生した際には4G・LTEによる遠隔操作でそれを回避させるのがデモのポイントとなる。

走行会場となったのは西鉄バスの教習施設で、遠隔操作を行うのは約10kmほど離れた福岡国際会議場。KDDIによれば、これまでも遠隔操作の実証実験は実施して来たが、それらはすべて見通せる範囲内での話。ここまで離れた場所からの遠隔操作は初の試みだという。

デモでは、約15km/hで3分間ほど走行した。緊急時のために助手席に人は乗ってはいるものの、ドライバー席は無人。車内ではハンドルが自動で回転し、S字カーブや坂道に遭遇してもなめらかに走行した。そして、コースの後半で障害物のある場所に差し掛かると、車両は一旦停止。助手席から福岡国際会議場にいるオペレーターへ遠隔操作を依頼すると、その状況をカメラで視認しながらオペレーターが遠隔操作し、障害物を回避した。


遠隔操作は4G・LTEで行われているため、往復でそれぞれ0.5秒ずつ計1秒ほどの遅延が発生しており、遠隔操作するオペレーターはドラレコと同様なカメラ映像しか見ることが出来ていない。そのため、距離感が把握しにくい状態となっており、速度を15km/hに抑えたのもそれを勘案してのことだという。

このデモは、東京オリンピック/パラリンピックが開催される2020年頃までに実用化を目指している5Gの利用を想定。その際は遅延が大幅に解消されることとなり、走行速度はさらにアップさせることが可能になる。KDDIではそれまでに検証を繰り返すことで課題をクリアし、実用化へと結びつけていく考えだ。

遠隔操作するオペレーターは、約10キロ離れた福岡国際会議場から行われた デモに使われた自動運転用車両は、アイサンテクノロジーと共同開発した 実験車両の前後には5つのLiDARを搭載 ルーフ上には周囲360度の状況を把握するためのLiDAR 遠隔操作するために設置されたカメラ。スピードメーターの情報もカメラで送られていた 西鉄バスの教習施設での説明。この会では海外を含めた研究者たち21人が参加。多くの質問が飛び交っていた 障害物がない場所ではスムーズな自動運転走行が行われていた 国際会議場に設置されたKDDIのブース。ここで遠隔操作が行われた