見るからに軽快で、アグレシッブな走りを期待せずにはいられない。ホンダが発売したばかりの新型『CB1000R』だ。泥よけを兼ねるナンバープレートホルダーがスイングアームマウントになっていて、特にテールセクションがスッキリしている。
スタイリングデザイン担当の鴫原 崇さん(本田技術研究所 二輪R&Dセンター)は「大人のライダーへの高揚感を誘いました」と教えてくれた。たしかに見ているだけでも奮い立つスタイリングだ。鴫原さんはさらにこう言う。
「凝縮感に満ちたボディは、マスの集中化を図った台形シルエットから成ります。ミニマムな要素で力強いシルエットを成立させ、細部にもこだわりました」(鴫原さん)
◆ラウンドシェイプは新世代CBのアイコン
「LEDヘッドライトは新世代CBのアイコンとして、ラウンドシェイプを基本としています。対向車にも速度感が伝わる被視認性の高いレイアウトで、安全性も向上しました」(鴫原さん)
アルミ薄板をプレスしたシュラウドとサイドカバーも車体の中でアクセントになっていて、目を惹く。
「あえて塗装せず、金属の質感をそのままにメカニカルな機能美を表現しました。見るとわかるとおり、シュラウドには車名が彫られています」(鴫原さん)
鴫原さんは新世代CBシリーズのスタイリングデザインを担当しており、新型『CB250R』や『CB125R』も共通イメージのフォルムにしていると教えてくれた。
「若い人たちにも250や125からCBシリーズに乗っていただいて、いつか1000にステップアップしてもらえたら嬉しいです」(鴫原さん)
◆直4エンジンならではの吹け上がり
実際に走らせると、直4エンジンならではの吹け上がりが、なんとも気持ちいい。エンジン設計担当の山代隼人さん(本田技術研究所 二輪R&Dセンター)にそれを伝えると、狙い通りであることがわかった。
「公道でのファンライドを考えて、6000〜8000回転で特にトルクが盛り上がる特性になっていまして、そのまま最高出力145馬力を発揮する1万500回転までパワフルに回って力強い加速感につなげています」(山代さん)
圧縮比は11.2→11.6に向上。鋳造だったピストンは高強度の鍛造になり、吸気量をより多く確保するためにインレットポート径は最大23%、スロットルボディ径も36→44mmに拡大した。
◆ライディングモードの設定がすぐわかるメーター表示
ライディングモードは「スポーツ」「スタンダード」「レイン」そして「ユーザー」の4つを選べるが、それぞれがどういう特性になっているかがメーターディスプレイで一目瞭然なのもいい。
トルクコントロールは「T」、エンジンブレーキは「EB」、パワーは「P」と常時表示され、それぞれ3段階の介入レベルがアルファベットの文字を円で囲むように目視できるのだ。
電装テスト担当の佐藤篤樹さん(本田技術研究所 二輪R&Dセンター)は言う。
「レベル表示はバーの太さを変えるなどし、それぞれの介入度がすぐわかるようにしました。ユーザーモードはライダー自身で自由に設定できるので、どんどん使って欲しいです」(佐藤さん)
◆猫のようなしなやかな足まわり
操縦安定性担当の高柴宏明さん(本田技術研究所 二輪R&Dセンター)は「猫の足のように、しなやかに動く」と足まわりを表現した。
フロントサスペンションはショーワ製SFF-BP倒立フォークで、左側に減衰機構とスプリング、右側にスプリングのみを装備するセパレート・ファンクション・フロントフォーク。減衰機構をスライドパイプ内径にピストンを直接摺動させることで、ピストン径を拡大したビッグピストン構造としている。
「公道で想定される全速度域で、安定感の高い減衰力が得られる仕様です。リアサスペンションは過度な縮みを抑え、後輪を効果的に路面に押し付けて駆動力をより効率よく伝えることで車体レスポンスが向上しました」(高柴さん)
◆大人のライダーに高揚感を
「ボクが最初に乗ったバイクはDIOでした。50ccスクーターですが、すごく速いと気持ちが昂ぶったことを今も新鮮に覚えています。エンジンの付いた乗り物に初めて乗ったときの気持ちをまた思い出していただきたいと考え、新型CB1000Rを開発しました」(内田さん)
そう言うのは、開発責任者の内田聡也さん(本田技術研究所 二輪R&Dセンター)だ。
「大人のライダーに高揚感を味わっていただき、スポーツバイクの根源的な楽しさを公道で最大限に満喫して欲しいです」(内田さん)
反響は上々で、販売領域責任者の満 尚也さん(ホンダモーターサイクルジャパン)によると、「国内で年間1000台の販売を目指していますが、すでに500台の受注が入っております」とのことだ。
【ホンダ CB1000R】大人のライダーに、初めてバイクに乗ったときの高揚感を…開発者インタビュー
2018年05月07日(月) 14時00分